ちょうど
1年前,筑波のサーキットアドバイザーでお馴染みの蘇武喜和さんにEF8に乗って頂き,その際,以下の3つ問題点を指摘頂きました.
①1~2コーナー間でVTECから外れる
②ターンイン初期で接地感が不足している
③リアが粘る(もっと尖らせた方が良い)
それから1年間EF8のセットアップを見直して対策を施し,先日の走行会で再び蘇武さんに乗って頂く機会が得られたので,今回はそこで頂いたコメントを纏めておこうと思います.
当日の走行条件としては,前回と同様に新品のA052を持込んだものの,当日の路面温度は朝一でも40℃オーバーと非常に高く,そのせいかコース上のタイヤカスも非常に多く,残念ながらクルマを評価する日としてはあまり向いてない条件でした・・・.
それではまず,蘇武さんの走りからご覧頂きましょう.
相変わらず見どころ満載の車載映像なのですが,まずはパッと見で私が気になった点をいくつか.
1コーナーの進入
蘇武さんは1コーナーをステアリング→ブレーキの順で操作して切り込んで行かれるのですが,前回はリアが滑り出した後,即座にリアタイヤのグリップが回復してしまい,即座に再び右へステアを切らないといけない状況だったのですが,今回はクリップの手前までカウンターを当てた状態(左にステアを切る状態)が続いていました(↓).
ようやく蘇武さんの要求にクルマが応えるようになったのかな?という感じです.
1~2コーナー間
音を聞く限りVTEC落ちは起きてないように思えますが,この辺り(↓)でいつもの加速感がないような・・・?
気温が高くてパワーダウンしてる? フロントタイヤのグリップがない?? なんでしょう???
ヘアピン
ターンインは特に違和感はなかったのですが,コーナーのミドルセクション(クリップ付近で大舵になる辺り↓)で,
心なしか蘇武さんは首を傾げている(何かしらの違和感を覚えている)ような印象を受けました.
ココは何かありそうですね・・・.
インフィールド
クルマの動き的には,可もなく不可もなくといった印象に見えますが,1個目の13Rの辺りで蘇武さんの視線は,もうインフィールドの出口(バックストレッチ)の方を見られてます(↓).
それだけ操作に余裕があるって事なので,もしかしてクルマが全体的に遅い!?
洗濯板
今回の蘇武さんの計測ラップは計3回で,上記の車載は最も速かった計測3の時なのですが,洗濯板を避けて走っていらっしゃいました(↓).
計測1・計測2では洗濯板に乗せて走られてたので変だなぁ~と思いましたが,そういえば計測2を外から見ていた時に,洗濯板で少し弾き飛ばされているような動きをしていたので(↓),
それを踏まえて修正されたのかもしれません.
次に,蘇武さんの走行終了後のコメントです.
蘇武さん :大分前より曲がるバランスになってきましたね.
蘇武さん :(前回は)終始アンダーっぽい挙動だったのが,大分消えたなぁ~と.
蘇武さん :(クルマの中で)「あっ,曲がる!」と独り言を言っちゃうくらいでした(笑).
後で車載を見返してみたら,確かにコースイン直後の1コーナー(↓)で仰ってました(笑).
感触を掴むために縁石に乗せてみた瞬間に仰られていたのですが,たったこれだけでクルマの挙動が分かるとは,さすがプロですね・・・.
蘇武さん :1~2コーナー間のVTEC落ちも何か対策されたのですか?
私 :はい.対策しました.
私 :ハイカムに切り替わる回転数を大分下げました.
私 :それ以外にも前回指摘頂いたトーを直して,リアの内圧も上げました.
私 :全体的にバランスを見直しました.
蘇武さん :今の状態で凄くバランスはイイ感じ.
蘇武さん :これに+αでちょっと足すとしたら,フロントのキャンバー.
蘇武さん :もうちょっと付けた方が良い感じ.
蘇武さん :高速コーナーでもそうなんですが,低速コーナーのボトム,最大舵角になる時,
蘇武さん :アクセルを入れる手前,ギュッ!と最大舵角を入れる時にフロントがズルッ!と逃げる.
蘇武さん :そこでもう少し踏ん張りが欲しい.
蘇武さん :これって今日のコンディションだから出ている事もあるのですが,多分冬でも出ると思う.
私 :そうですね.
蘇武さん :リアのグリップが下がってる分,そこのフロントのグリップも下がっちゃっているんじゃないかな?と.
蘇武さん :なので,もうちょっとフロントのキャンバーを付けてあげて.
蘇武さん :冬場でオーバー傾向が強くなったら,逆にアンダー傾向に振ってあげる.
蘇武さん :そういう方向にしてあげた方がバランスが取れてくるんじゃないかな?と思いました.
蘇武さん :ターンインのトコの動きは凄くイイ.
蘇武さん :リアも適度に動いてくれるし,イイ感じ!って思うんだけど,その後が続かない.
蘇武さん :折角進入でいいヨーが発生しても,戻っちゃう感じですね.
蘇武さん :そこがちょっと勿体ないなぁ~と.
車載で見た印象の通り,やはりヘアピンで違和感があったようですね.
こちらも後で車載を見返してみましたが,ヘアピンで大舵を入れた後(↓),
タイヤからスキール音が鳴って,「ああっ・・・惜しい!」と蘇武さんの口から言葉が漏れてました.
私 :僕だと,そこはボトムを落として帳尻を合わせているのですが・・・.
蘇武さん :はい,はい.
蘇武さん :やっぱりこの時期でもタイムを~って思うと,そこは高い速度を維持したい.
蘇武さん :パワーバンドも上の方だから,出来るだけそこを外さずに走りたい!って思うと,
蘇武さん :回転数を上げるためには,旋回速度を上げるしかない.
蘇武さん :そうすると,キャンバーかな?って気がします.
私 :トーはどうですか?
蘇武さん :全然悪くないと思います.
蘇武さん :強いて言えば,リアが浮いて(その後)着地した時にフロントがアンダー傾向になる.
蘇武さん :それがちょっと気になりました.
蘇武さん :3輪状態になってリアが弱い時はリアがシューっと曲がるんだけど,
蘇武さん :着地した後はリアが勝っちゃう感じなんで.キャンバーが付けば対策出来るかな?と.
蘇武さん :キャンバーが付けば,(リアが)浮いてる時間も長くなるし・・・.
蘇武さん :今の状態では,凄くバランスが取れてる.
私 :バランスが取れているんで,伸び代がないんですよねぇ・・・.
蘇武さん :(私以外も含めて)ファミ走の人達のクルマは凄い仕上がってる.
蘇武さん :仕上がっているので,次の次元に行くためにはどうすれば良いか?かと.
蘇武さん :走行直前に言っていたタイムと大体同じくらいじゃないですか?
私 :そうですね.
蘇武さん :タイムが想定出来る範囲内,逆に言うと想定出来る範囲内までしか行かないという事は,
蘇武さん :そっから先はクルマの限界が引かれちゃっていて,頭を打っているという事かと.
私 :そうですねぇ・・・.
蘇武さん :ドライバーのスキルを上げる事も大事だけど,クルマの限界を上げる事で,
蘇武さん :ドライバーのスキルもより活かせてくるので.
私 :多分,今の仕様ならどこのコース持って行っても怖くないかなぁ~と.
蘇武さん :そうそう,怖くないと思う.
蘇武さん :これで耐久レースやって!と言われたら全然いける.
蘇武さん :尖らせる方向は,リアの限界を下げて尖らせるのではなくて,
蘇武さん :フロントの限界を上げて尖らせる方向にしたい.
私 :分かりました.有難う御座います!
以上,プロの感想でした.
一応,去年指摘頂いた箇所は全部直せたようで一安心しました.その上で更にフロントの限界を上げるにはどうしたら良いか? リアの限界を下げる策はいくつか用意していたのですが,そっちの方向性は考えていなかったので,またここから色々アイデアを捻り出していこうと思います.
ちなみに,今回蘇武さんから頂いたコメントで一番ハッ!と気づかされたのが「パワーバンドを外さないために,旋回速度を上げるべき」という部分.これまでは「コーナーで曲がらないならボトム落とすしかないじゃん~」と思っていて,それがヘアピン立ち上がりのVTEC落ちに繋がり,安直な対策として「VTECの切替えポイントの引き下げ」をやっていたのですが,「回転数を上げてコーナリング出来る方法を編み出す」という考え方には至りませんでした・・・.また新たな気づきが得られたので,これを上手く取り込んでいこうと思います.
蘇武さん,今回も貴重なアドバイス有難う御座いました!
これ以上は望むのは難しい領域に入ってきましたが,何とかアイデアを捻り出して改善策を見出し,タイムに繋げていきたいと思います.また機会がありましたら宜しくお願いします.<(_ _)>