破損したボールジョイントが直り,再び走れるようになったのですが,年内のTC1000のファミ走は既に終了しており,年明け後も走行枠はなく,そのまま第2週は「コースメンテナンス」に入ってしまうので,暫く走れそうにありません.
仕方がないので他のサーキットに目を移し,日光を見てみたら何だか年明けからスポーツ走行の枠がやたらとあります.こんだけあるならライセンスを復活させるか?とも一瞬思いましたが,まぁ,無難にどっかの走行会にでも参加したいところです.
そんな事を考えていたら,前回の日光の路面が喰わず,リアをテールスライドさせた時に引き摺られてフロントも外側に引っ張られ,LSDが「ガガガ!」と大きな音が出て前に進まなくなった事を思い出しました.
こういうのを嫌ってFFでも2wayを選ぶ方もいると思うのですが,私はターンイン時にノーズがスムースに入るのが好みなので,その動きを阻害する2wayは向いてないだろうなぁ~と思いつつ,そういえば
今のLSDに変えてから以前とフィーリングが違って,これまた好みじゃなかった話も思い出しました.
ミッションをオーバーホールする際にファイナルを変更する必要が生じたため,合わせてLSDもEG6用→DC2用に変更せざるを得なかったのですが,同じCUSCOの「type-RS」を選んだにも関わらず,走らせてみると以前とフィーリングが違ってかなり困りました.それも大分"好みじゃない"方向に変化してしまったので,どうしてこうなったのか?と原因を色々考えていたのですが,当時の結論としては「ギヤ比のせいなので,どうしようもない」という事で強引に自分を納得させました.
しかし,以降も頭の片隅には残っていて,ずっとモヤモヤしていたのですが,先日某SNSでこんな情報を目にしてハッ!としました(↓).
「(CUSCOの)type-RS」でプレッシャーリングとカムのクリアランスで何が変わるのか?というと,イニシャルトルクからロックトルクが立ち上がるまでのラグ.「type-RS」はイニシャルトルク出すためにリングとカムが離れる方向に荷重掛けてるから,原理的にクリアランスが出来る.「type-MZ」は逆だから基本的にクリアランスはゼロ.
ひょっとしてこれか!? (*゚ロ゚) !?
そもそもLSD(Limited Slip Differential)というのは,
(CUSCO:
LSDの特徴より)
アクセルを踏んでLSD本体に力が加わると,中央のクロスシャフト(カム)が上に動いてカムリングに当たり,このカムリングが三角形の形をしているため,上に押されるとプレッシャーリングを左右に押し広げる形となって力が生じます.この押し広げる力がプレッシャーリングの先にあるクラッチプレートに伝わり,ケースに押しつけられてロックされる,という仕組みとなっています.
そして,この最終的に力が伝わるクラッチプレートには,カムが動いていない時(カムリングにカムが当たっていない時)にも,与圧(=イニシャルトルク)が加わっており,このイニシャルトルクの加え方がCUSCOのLSDの場合,「type-RS」と「type-MZ」で異なります.
(CUSCO:
LSDの特徴より)
「type-RS」の方は「内圧式」とも呼ばれる方式で,プレッシャープレートの内側にスプリングが組まれており,このスプリングが外側に向かって力を加えています.一方,「type-MZ」の方は「外圧式」とも呼ばれる方式で,プレッシャープレートの外側にあるコーンプレートが内側に向かって力を加えています.
つまり,「力の加わる方向」が「type-RS」と「type-MZ」では異なり,カムによって生じる力と同じ方向(内→外)である「type-RS」は,同じ方向であるが故にレスポンスが良く,逆方向というか反力(外→内→外)みたいな形となる「type-MZ」は,反力という形の分だけレスポンスが鈍いそうです.LSDは必ずしもレスポンスが良ければ良いという訳でもないので,使い方次第ではあるのですが,こういった違いが両者にはあります.
ちなみに,「type-MZ」のコーンプレートは所謂ところの皿バネで,可動域(≒スプリングのストローク)が短い事から,少しでもヘタると顕著にイニシャルトルクが落ちてしまうそうです.このため,ヘタる事を見越して予めイニシャルトルクを高めに設定しておくのだそうです.一方,「type-RS」は,
(CUSCO:
type-RSより)
ご覧の通り,普通のスプリングの形をしているためストロークが長く,それ故にヘタりにくく,結果としてイニシャルトルクが落ちにくいという特性もあるのだそうです.
さて,話を戻してここからが本題.
先述の「type-RSにおけるプレッシャーリングとカムのクリアランス」が何を指しているか?というと,恐らくこの部分です(↓).
カムは,カムリングに接して初めて力が生じるので,ここのクリアランスが大きければ大きいほど,カムが動いて~カムリングに当たって~プレッシャーリングが開く~までのタイムラグも大きくなります.つまり,
クリアランスが大きい = アクセルOFF→ON時のレスポンスが鈍い
という事になります.一方,アクセルのOFF→ONに切り替わった時に最初に加わる力がイニシャルトルクです.つまり,イニシャルトルクが大きければ大きいほど「LSDのレスポンスが鋭い」と感じる事があるので,
アクセルOFF→ON時のレスポンスを鋭くしたい = イニシャルトルクを上げたい
という構図となります.そして,「type-RS」においてイニシャルトルクを上げる方法としては,
イニシャルトルクを上げたい = スプリングの力(本数)を増やす
となる訳なのですが,「type-RS」のスプリングは内→外の方向に力を加える構造である以上,スプリングの力(本数)を増やすとプレッシャープレートが若干外側に開き気味になります.
スプリングの力(本数)を増やす = プレッシャープレートが開き気味になる
そして,プレッシャープレートが外側に開き気味になるという事は,カムとのクリアランスが増える事を意味しているので,
プレッシャープレートが開き気味になる = クリアランスが増える
という理屈になります.つまり,
クリアランスが大きい = アクセルOFF→ON時のレスポンスが鈍くなる
という事で,良かれと思ってスプリングを増やしたら,狙ってた事の逆効果になっちゃった・・・となる可能性もある訳です.では,なぜこんな事になってしまうのか?というと,これはLSDのレスポンスを「時間」と捉えるか? 「力」と捉えるか?の違いから来るものだと思われます.例えば,以下のようなイメージ図で示すと(↓).
イニシャルトルクが影響するのは図の縦方向=力(≒アクセル開度)で,クリアランスが影響するのは図の横方向=時間,といった感じになると思われます.この両者は本質的に異なるものなので,ちゃんと分けて考えないといけないという事なんでしょうね.
以上を纏めると,私の好みとしては以下という事になるのでしょうか?
・アクセルOFF時(ターンイン時)はLSDに邪魔されたくない ⇒ イニシャルトルク:低め
・アクセル開度が大きい領域ではLSDの効きは一定でいい ⇒ カム角:大きめ
・アクセル開度が小さい領域ではLSDのON/OFFをコントロールしたい ⇒ クリアランス:大きめ
ふ~む.そうすると以前のEG6用の「type-RS」はクリアランスが大きめで,現在のDC2用は同じ製品でもクリアランスが少なめだったという事なのかな? 確かに今のDC2用のLSDは,乗ってて精密感というか剛性感というか,そういったものも感じる部分もあるので,有り得るかもしれないなぁ~と思いました.