2020年02月04日
H5N1インフルエンザにどう備えるか? その7
7-H5N1インフルエンザパンデミックに備える
鳥インフルエンザパンデミックに備える その6に書いたことの続きを書こう。
「その6」を読んでいただければお解かりと思うが、H5N1ウイルスがパンデミックを起こすインフルエンザウイルスになるためには最低限、人の鼻腔から咽の粘膜に多量に出現するというレセプターであるSAα2,6Galというシアル酸オリゴ糖に取り付くことが出来るようにウイルス側のヘマグルチニンが変容する必要がある。
それは、爆発的感染に繋がる条件である空気感染は、感染者がくしゃみや咳などの唾液飛沫によってウイルスを撒き散らさない限り決して起きることは無いからです。
しかし、実は「その6」で述べたとおり、すでにH5N1にはSAα2,6Galに感受性のあるタイプは2003年に登場したのですが、それは未だ鳥型のSAα2,3Galと人型のSAα2,6Galの両方のレセプターへの感受性があるタイプであったので、ウイルス外郭のトゲの部分のヘマグルチニンの数的な問題としては不十分であり、SAα2,3Galへの感受性を捨て去る変異で、ウイルスのすべてのヘマグルチニンがSAα2,6Galに感受性を持つ様に変異を遂げれば、その「取り付き」という性能の部分での変容は最も危険なレベルまで達することになると言えるでしょう。
次にレセプターに取り付いてからどの程度の時間で細胞内に侵入出来て、どれくらいの時間でどれくらいの量に増殖できるかと言う部分では、H5N1は高いレベルにあると言え、高病原性トリインフルエンザと言われる、鶏の大量死を発生させるウイルスはH5N1でありその亜種がパンデミックを起こすことが懸念されているわけです。
ウイルスが細胞内で自分の殻を破ってRNA遺伝子を容易に放出するにはHAの開裂と言う、ヘマグルチニンの分断が必須なのですが、高病原性のH5N1は普通の細胞内にある蛋白質分解酵素によって開裂を起こせることで、細胞内で増殖したウイルスは開裂した状態で細胞から出て行くことになって、レセプターに依存せずに隣り合う細胞に次々に感染して行けるのだそうです。
アラスカの永久凍土を掘り起こし、スペイン風邪で亡くなった人の遺体から採取したウイルスの全ゲノムを解読し、当時のN1H1インフルエンザウイルスが、近年復元されたのですが、驚くべきことに、現在のA型インフルエンザウイルスの1000倍にも及ぶ増殖速度で増えるウイルスだったことが解っている。
増殖する速度は感染力や威力と密接な関係があって、速度が遅ければ生体内の免疫システムによって駆逐されて増えることが出来ないことになるし、逆に非常に速く増殖すれば、大量のウイルスを短時間で生産することになり、マクロファージなどの免疫システムによって貪食されるより大量に作られれば、咳やくしゃみで外界にも大量のウイルスを拡散させる性能持つということになるでしょう。
そして短時間に大量のウイルスが体内に出来た時、サイトカイン・ストーム等を誘導して罹患した者を死に至らしめたりもするわけです。
そして、恐らく細胞の中で増殖し細胞から出てゆく部分の性能では、ウイルスの外郭のトゲの中のヘマグルチニンが細胞膜のシアル酸に感受性があるためにウイルスが凝集してしまい、出芽出来なくなる為、ヘマグルチニンではないウイルス表面のスパイクのノイラミニダーゼ(NA)がシアル酸を細胞やウイルス表面から除く必要性があり、新たな感染性粒子を感染細胞から放出する性能の部分でも何らかの性能の向上が起きるかもしれない。ありふれた蛋白質分解酵素でヘマグルチニンが切れるなどの性質であれば、活性のあるウイルスとして体内に放出されるため、多臓器に感染が容易になって、更に感染力を強めるのではないかと思われるのです。
以上のような変容(人体の咽と鼻腔のレセプターに取り付きやすい事、速い増殖速度、高い細胞間感染能力)がすべて揃えばパンデミックを必ず起こすウイルスが出来上がったことになってしまうと思われますが、何を置いても、咳とくしゃみで拡大感染が起きる前提は、ウイルスは自分のヘマグルチニンの殆どすべてを人型のシアル酸SAα2,6Galに感受性を持つように変容させることが基本的前提条件と言えることになるはずだから、H5N1インフルエンザウイルスが自分の感受性をピタリと人型レセプターに合わせた変容を遂げた瞬間こそ、真のパンデミック前夜と言えるだろう。
ただ良く考えてみると、H5N1インフルエンザウイルスが、それらの変容で得るであろう恐るべき感染力も、すべての人が高機能な抗ウイルスマスクを着用することで、あっけなく打ち破ることが出来ることも事実だと気が付く。
何故ならどんなに強力なインフルエンザウイルスであったとしても、人から人への感染は人のくしゃみや咳、しゃべる時に飛び散る唾液に依存しているからに他ならない。
優れた脳機能により我々人間は確かな意識を獲得したが、人が意識ある生物であるなら、生体のもつ免疫シークエンスには出来ないレベルの防御も、人が人たる所以の意識による「理」を以ってなら可能なはずだし、我々の脳の発達は、そもそも生き残るために発達したものであったはずなのだ。
つまり、6ヶ月間も出来て来ないワクチンを怯えながら待たなくても、すべての人にマスク着用を指導することや、感染者でなくとも、決して自分からは感染を広げないと言う目的でマスクを着用するなら、ウイルスを大量に含む飛沫が大気中に飛び散る量を圧倒的に減らせると言うことになるから、恐ろしいと言われる強毒性新型インフルエンザを封じ込め得ると言えるのだ。
いや、待て・・・少なくとも日本でなら、すべての人でなくとも、人を集める集会や催しを規制し、交通機関や意図的でなくとも人が集まる場所、密度が高くなってしまう場所だけでもマスクをしていれば、ほぼウイルスの拡散は防ぎ得ると言えるのではないだろうか。
要するに、咳やくしゃみが出る人、飲食店の従業員、人前でしゃべる人にマスクを義務付けさえすれば事足りると言うことが言えそうだ。
本当に必要なのは、感染しないためのマスクよりも、感染させないためのマスクと言うことなるのだ。
此処まで来ると流石に気が付くだろう、つまり・・・いつも無知で愚かな者よって、守り得る平穏も無残に崩壊するのだ。
無知無教養がどれだけ罪であるか・・・勿論、無知で愚かな者はそれに気付くことも無いし、愚かなるがゆえに自分の愚かさ加減にさえ気付くことも無いのだが・・・・。
それでも貴方は・・・マスク無しで咳をしながら電車に乗れますか?
ブログ一覧 |
世界 | 日記
Posted at
2020/02/04 00:32:31
今、あなたにおすすめ