およそ48年前に、私は結婚の記念にと、友人達から手回し式のコーヒーミルをプレゼンしてもらって、それまでもコーヒーはドリップで頂いていたが、コーヒー豆から挽いて飲むようになった・・・・。(このころの私はヤマギワ電気の下請け会社で資材調達セクションで働いていて、設計業では無かった。)
使っていたそのミルは下の画像に良く似た形式だった。
それから紆余曲折を経て1988年、39歳の時に機械設計業で独立し、つい7年ほど前(2015年)にコーヒーをローストして売るための移動販売用の車両に搭載する電気式のコーヒー豆ロースターの開発と設計製作を仕事で請けたのです。
それを機に私も自分で飲むコーヒーは自分でローストして頂くようになりました。
私が開発し製作したのは車載可能な小型のマグネトロン式コーヒーロースターで、特に新しい思想では無く、マグネトロンが実用化されてほどなく事業用の大型マグネトロンでコーヒー豆をローストして販売したという記録もあるのです。
装置の受注はロースト方式を限定するものでは無かったのですが、注文の量に即応してその扱う量に影響を受けずに安定した焼き上がりを実現する為に、私が選んだ方法でした。
1号機は非常に考え抜かれた500kパスカル迄上げられる圧力容器の内部でマグネトロンロースターを駆動し短時間で安定した理想的なコーヒー焙煎を目指したものでしたが、完成後の試験で幾つか問題が発生し、最終的にはマグネトロンの発生する電波が、圧力シールリングを貫通して圧力容器の外へ出てしまう問題の解決に手間取ることになって、納期に間に合わないという事が起きてしまったのでした。
↓は設計された加圧式マグネトロンコーヒーロースターの3D図、クイックロックの開閉部品がまだ書き込まれていない状態です。
↓はハッチの構造が良く解る加圧タンクの3D組立図(設計途上初期)
↓の画像は、加圧式マグネトロンロースターで焼いた一回目のコーヒー豆の状態です。加圧は100kパスカル程度で試運転しましたが、少しだけ焼きムラが見えるものの充分実用に耐えるレベルでした。
↓加圧シミュレーションの画像3Kg/cm2での様子
電波は眼に見えず、市場で得られる圧力シールの素材では電波の貫通が止められなかったことで金属系のシール材を幾つも考案試作して対処しようとしましたが、マイクロ波の特性を文献で調べてあったにもかかわらず、予想外と言うか文献に出ている状況と必ずしも同じではないことを経験し、営業開始予定日までに安全な装置を完成できないという事が確実であると解った時点で、私は加圧マイクロ波ロースト方式を一時止めにして、加圧しない2号機を急遽設計したのでした。
開発の開始から約3か月の苦労は報われることなくお蔵入りし、今はその時に特急で設計製作した2号機が6年近く稼働し今日も市中で営業しています・・・・。
1号機の失敗の主因は圧力容器のハッチの形式にあって、私はオートクレープ窯のクイックハッチを踏襲したのですが圧力を封じるシールがオーリング式であった為の電波リークという問題を改造なしでは克服できなかったことに有りましたが、更に試運転で解ったことの中には加圧雰囲気中でのマグネトロンの冷却には限度があって焼くコーヒー豆の量によってはマグネトロン自身が設置したファンだけでは放熱できずに溶解するトラブルも起きました。
これは500Kパスカルの雰囲気中の冷却ファンの回転に必要なトルクが想像を超えて大きかったのですが、その事を充分知らずに大気圧中で使う普通のファンモーターを設置していたことが原因でした。加圧容器内部が目視不可能であったこともあり、その原因がはっきりするまでに2台のマグネトロンが融けて壊れたのでした・・・・。恐るべし高圧気体の高粘性と流体抵抗・・・でした。
その様な経験を経て、設計された2号機はほぼトラブルらしいトラブルも無く5年を経て使用されていますが、昨年の秋にオーバーホールして念のためマグネトロン本体を2台交換しました。
そう言う装置の意匠的な部分を除いたものが自宅に1台あって、私はそれを使って自前でコーヒー豆を焙煎して、ミルで挽き、ドリップして毎日欠かさずにいただいているのですが、豆はグアテマラSHBを6年間ずっとローストしてブレンドせずにドリップしています。最高とは言えませんがなかなか良いものです。
高価な豆を使いたいとも思いますが2週間で500g以上のコーヒー豆を消費する我が家では、安価に手に入れられる豆であることも重要なのです。
今日、その焼いておいたコーヒー豆が底をついたのです。
昨日の雪で豆をローストするタイミングを失い、株主優待で木村コーヒー店から送られてきた挽いてあるコーヒーをドリップして頂いたが・・・、優待品のせいかどうかは良く解らないが、実にバランスよく滑らかな飲み心地の旨いコーヒーであった・・・・。
生豆から自分でローストした直後にミルで挽いてドリップして飲むグアテマラSHBと比べるとマイルドで癖が無い・・・、唯一自分でローストしたグアテマラが勝るのは僅かに多くコーヒーの個性的な香りが残っているという部分だけで、その他はキーコーヒーの優勢勝ちだ・・・・。
ベンチマークとしてキーコーヒーの株主優待品を使っているようなものだが、「さすが木村コーヒー店だな~・・・」と家内と話した今朝でした。
マグネトロンでのマイクロ波加熱というのは電子レンジでコーヒー豆をローストしていると言っても同じことですが、きちんとムラなくローストすることはなかなか困難ですので工夫が必要なのです。立ち上る煙を覚悟して一度、生の豆を電子レンジで焼いてみるのも良い経験でしょう・・・・。
Posted at 2022/01/08 13:50:43 | |
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