
古いデータを入れてあるハードディスクの中を見ていたら、今作っているホイールのデザイン開発をしている時のフォトレアリスティックレンダリング画像や、カワサキZ1のフレームの解析画像などが出てきたので、ちょっと紹介しようと思う。バイクに乗る方はぜひZ1の解析の記事を読んでみてください。
約8年前に、デザインレビューのために作った評価用のレンダリングCGですが、ある程度リアリティーが出ていると思う。レイ・トレーシングを使って反射の映り込みを再現しているから、リアルに見えるのです。
下の画像は、カワサキZ1のフレームを採寸し、正確にモデリングしたものをメッシュ切りしたものですが、このモデリングは難しいですし、メッシュに切るのもなかなかエラーが出やすく大変でした。
その下の画像は解析の応力分布。Z1のスチールパイプフレームを有限要素法による応力解析をしたのだが、Z1が開発されたころにはこうした解析ツールは無く、手計算と破壊テストで強度を確保していたものと思われるが、この時(。(2009年)私がやった解析は、恐らく初めて、Z1のフレームでコンピューターによる解析を行ったものだろうと思う。
応力のかかり具合がよくわかる大きく誇張されたアニメーションはここをクリック
以下は当時、私が書いたBlog記事。(2009年6月)
ここ数日、カワサキZ1のフレームの応力解析をやってみて、スチールパイプフレームの優れた強度に驚いている。
オートバイはコーナリングする時、車体を傾け、遠心力と重力でつりあった状態である一定の傾きを維持したまま進むので、その状態と言うのは、垂直に立っている状態で、向心加速度のかかった分だけ重くなったような状況で推移していると言える。
つまり、オートバイが走行中に受ける力は、殆どは加速GとブレーキングG、そして垂直の重力荷重とコーナリング時の垂直Gであると言えるのです。
そこで私はコーナリングの時にどれくらいの荷重がかかっているかを考え、200kgのバイクなら、人間を乗せて265kgと仮定し、高速コーナーを走行したイメージで考えてみた。
バイクが走行状態で45度の傾きで走れると言うことは、重力と遠心力でちょうどつりあうと言うことだから、合成されたバイクの垂線にかかるベクトル力は総車両バネ上重量の1.414倍となって、サスペンションスプリングを圧縮するはずです。
バイクのバンク角が直立に対し、もし60度に達したとすればバイクのサスペンションにかかる力はちょうど直立状態の2倍になる計算ですから。仮にバイクのシート上にライダーのほかに人間4人を乗せてみた時と同じ荷重と考えてみれば、前後のサスペンションの沈み具合が、コーナリングでそこまで沈むことが殆ど無いであろうことが理解いただけるだろう。
そういう大きな荷重でカワサキZ1のフレームにどれくらいタワミが生じるものか解析してみたわけなのです。
Z1はフレーム剛性が決して高いと評判があるわけではないのだが、なんと2Gで計算して0.035mmしかタワミが起きなかったのです。言い換えれば35ミクロンしか動かないのです。
実は私も今まで勘違いをしていたのですが、これでバイクのフレームは捩れたり撓んだりすることは殆ど無いと解ったのです。
では、私も嘗て経験した高速コーナーでユラユラと揺れるあの感覚の原因は一体何なのか?ツインショックのアンバランス説もありますが、私の乗っていたバイクはヤマハRZ350で、モノショックですから、左右に分かれたショックアブソーバーがあるわけではなく、その左右バランスが悪くてスイングアームが捩れているわけではないのが解るし・・・・。
解析の結果からフレーム剛性が低いと言うことは殆ど無いと解ったので、それはライダーである人間の錯覚ではないか?と言う方向を強く意識できるようになったので、今日、その謎の訳に気が付いたのです。
バイクをフルバンクさせてコーナーを曲がっている時、人間の頭はどんな角度になっているか想像してみてください、バイクは今にも倒れんばかりに傾いていても、人の顔と頭は路面になるべく垂直になろうと努力しているのがレースシーンの写真などを見ても解ると思います。
これは人間が直立して歩いたり走ったりするように進化してきた中で、平衡感覚や横滑りなどを敏感に感じ取る為に、頭は地面に対して垂直なほうが横滑りGを重力を感じる方向と分離できてセンシング感度が良い為で、ライダーはそうして転倒に繋がるタイヤの横スベリに神経を集中しています。
そういうわけでバイクの傾きと同じように頭もバイクの直立角度と共に傾けてしまうライダーはあまり居ないはずなのです。
バンクした状況の中で路面に少しうねりがあるとき、バイクは路面の起伏に対してに垂直に動くわけではなく、やはりサスペンションはバイクの直立角度に対してストロークして路面のアンジレーションに追従して行くしかないわけです。
フルバンクしたバイクは、サスペンションの動きにつれてバイクの垂線の方向に動いてしまうわけですが、ここで、仮に路面に50mmの緩やかな起伏があるとき、そのふくらみの真上をバイクがフルバンク状態で通過すればサスペンションのストロークはその傾きの分大きくならざるを得ないことが解ります。もしバンク角が60度まで達していれば1.73倍のサスペンションストロークを強いられることになります。つまり垂直に超えれば50mmのサスペンションストロークで済むアンジレーションもバイクが60度傾いていれば、理論的には86.5mmと、より大きくストロークせざるを得ないわけですが、実はサスのスプリングを介してボディーも動いてしまう為実際のサスペンションのストローク量はそれほど大きくはなってはいないのです。
サスが沈んだり伸びたりするのがコーナリング中のバイクの動きなので、僅かな起伏でも、それを超える度に突入してくる相対的エネルギーでコーナリングGも変化していることになりますが、その挙動は接地圧も同時に高めるので即スリップダウンすることは無く、バイクのボディーが動く分人間の頭にもその動きと変化するコーナリングGが伝わって来ることになるのです。
そして問題はそこで起きています。人間の体は、倒れんばかりに横に傾いてバイクと一体になっているとしても、頭は垂直に近い角度を保ってコーナリングしている為、バイクのサスペンションが上下に動いているのを頭の角度では上下よりも左右に大きく動いているかのような入力が有るということなんです。バイクが殆ど真横に近く傾いている時、サスペンションが動く方向は、頭(三半規管)にとっては殆ど横に動くと言うことが解るのです。
バイクは大きく傾いていても頭は地球重力に対して垂直に近く起きているから、バイクの垂線の動きは頭の左右の揺れの方が大きく感じられるために、ユラユラと横に揺れたような印象を持つことになったと言うのが私の理解であり、錯覚の原因であったと気付いたのです。
バイクのフレームは充分剛性があって、フルボトムするほどのコーナリングでタワむ量が僅かに35ミクロンと知った故に、人間の錯覚に違いないと思ったところから気が付いたと言うことなんです。
スチールのパイプフレームは悪くない!!決して剛性が無いわけではないのです!!スチールパイプのフレームは強度がなくて捩れたり撓ったりすると言うのは、どうやらまことしやかなガセであったと言って良いと思います・・・。
しかし、私はそこまで考えて、バイクのサスペンションは通常縦荷重しかかからないと考えて来たのですが、実はフルバンク状態等、傾き角の大きな状態で起伏に乗り上げる瞬間に横方向の力をかなり受けることも発見しました。これはスイングアームの捩れ剛性やフロントフォークの横剛性がコーナリングフィールに関連していることを意味するので、フレーム剛性よりも、実はフロントフォークやリヤスイングアームの剛性がライディングフィールに大きく関与していると理解することが出来ました。
それは、フロントのフォークでは横剛性がありすぎればフルバンクでの起伏乗り上げで簡単に跳ね飛ばされて転倒に繋がるので、もし剛性が充分あるとすればサスの瞬間的な動きを強く要求するし、リアスイングアームの捩れ剛性も、ありすぎれば同様にサスペンションの動きだけでその突入するエネルギーを吸収しなくてはならず、両輪共にダンパーセッティングと言う立場からは大きな矛盾を抱え込むことになるのです。
つまり、適当に横方向に「しなる」という必要性があるのだと解るわけです。そしてそのしなり方は前後のバランスがかなり重要になり、前後のサスペンションのバネ定数やダンパーの減衰特性のシンクロと共にセッティングの要となる要素であると感じることになりました。
そうして考えれば、バイクのコーナリング時の接地性は現在のF1のサスペンションと同じで、タイヤの柔軟性とリジットマウントされたアームのしなりを利用していることとよく似た話と極論できなくも無いと思う私なのです。
Posted at 2015/12/11 02:51:21 | |
トラックバック(0) | 日記