2016年01月27日
昨日、ウインターマックスのコーナリングの話で、タイヤの横剛性と加速度について触れたが、たぶんあまりよくわからない表現ではなかったかと自分でも思ったので、
そのことに関連したトラクションのことを少し書いてみようと思う。
F1などで、トラクションが非常にかかり易くコーナーからのの立ち上がりが非常に良い車…などの表現を聞いたことがある人も多いと思うが、理解できてますか?
まあ、同じようにアクセルペダルを踏んでも、ホイールスピンせずにエンジンのトルクが路面にうまく伝えられて加速できる車がある一方、同じ車重、ほぼ同じホイールベース、同じエンジンのF1でもトラクションがかかりづらくホイールスピンが起きて前に進まない車も在ると解説者が言ったりしているのを聞くと、不思議になりませんか?
ほとんど同じような車のコンセプトで、しかも同じタイヤで、空気圧も決められていたり(去年はその辺の規則がより厳しくなった)、サスペンションの構造的な形式もほぼ同じなのに、トラクションが良いとか悪いとか???
しかもF1の設計者は腕利きのエンジニアが寄ってたかって開発したものなのにです・・・・。
何が違うとトラクションの良くかかる車と悪い車の差がつくのか??
その答えが「加速度の差」なのです。
異なるコンストラクターが作り上げた2台のF1が、コーナーの出口の同じ場所で、同じ速度から、同じエンジンを全開にして加速する時をイメージしてみてください。方やホイールスピンをせずに脱兎のごとく加速できる車があり、片方はホイールスピンを起こしてわずかにテールが流れてカウンターステアを当てつつ加速する・・・。
同じエンジン、同じミッションのギア比、同じデファレンシャルギア比、同じタイヤに同じ空気圧と同じタイヤ表面温度、同じ車両重量、同じ前後重量バランス、同じサスペンショントラベル量・・・ほとんど同じスペックに見えるけれど、僅かに異なるところがあり、動き始めの加速度がわずかに異なることで顕著な差となるのです。
車を加速するための物理的な能力は同じだから、タイヤの摩擦係数と駆動輪にかかる荷重が同一であれば加速できる可能性としてのスペックは同じです。
しかし、アクセルを踏んでエンジンのトルクが立ち上がって、タイヤがより早く回転しようと周りはじめても、タイヤをホイールスピンさせてしまえば、十分な加速はできないので、まずエンジンのトルクマネジメントが問題になります。
おそらくアクセルペダルの踏み込み速度に対して直接的にエンジン回転数を上げることは無いはずで、デミオだってわざと遅くして余分な燃料を消費しない仕組みがあるわけで、例えばレース用のエンジンも、本当は0.1秒で全開にしたドライバーの足の動きに対し0.2秒で全開に持ってゆく制御が入っていれば、まずそこだけでタイヤ表面と路面の間に生じる加速度を半分に下げられます。
つまり非常にパワーがあるF1エンジンなどでは、いきなり全開にすればホイールスピンが起きてしまうことが当然だから、トラクションコントロールシステムでホイールスピン寸前を維持して加速するのが常識となるけれど、レギュレーションでクローズドループのトラクションコントロールが禁止されれば、あとはアクセルの踏み込み量や踏み込み速度を制御して、強大なエンジントルクが唐突にタイヤを回し強い加速度を路面との間に生じさせない工夫が不可欠となってくると考えられるのです。
もちろんドライバーがその辺をデリケートに扱えばさらに失敗はしなくなるのだが、ドライバーが僅かに早く踏み込みすぎたときなどにそうした遅延回路が働けば失敗だけを覆い隠して、車はホイールスピンせずに最適な加速に近い状態でコーナーを立ち上がることが出来るようになるはずです。
以上のことは、スロットルのコントロールだけでもトラクションにそれだけ大きな影響力を持っていると考えられるということで、トラクションに係わるところはまだほかにたくさんあるのです。
例えばリア・サスペンションのジオメトリが最適であれば、どんな加速をしてもタイヤは垂直に路面に対していて、タイヤのコンタクト面積が減少しなければ、タイヤの持つトルク伝達能力は壊れず長時間維持できる。それは、急激なトルク変動を受け止めるだけの面積を維持できるという事になって、ホイールスピンしずらくなるということに繋がるはずです。(物理では摩擦力はミューと荷重の積という事になり、力としては面積には影響されないが、トレッドゴムがその摩擦力によって壊れてしまわないためにはある程度広い面積でその力を分散して受けねばならず、その面積が減ればトレッドゴムは早期に壊れて失われてしまうのです。)
また、サスペンションのバネ定数とダンパーの減衰特性の工夫があれば加速時にリアが敏感に小さく沈み込むことでタイヤと路面の加速度の立ち上がりを緩やかにしてくれる機能を持たせることが出来て、重心移動を滑らかに起こしてタイヤと路面の垂直荷重を増やしつつ加速して行けることになります。
また、デファレンシャルシステムも大きな影響力があるはずで、いわゆるリミテッドスリップデフといった思想以外にも内輪差がある後輪の駆動システムに新しいソリューションが持ち込まれていることもあり得ると思われます。理想を考えれば、コーナリングが完全に終了して直線的な加速を始めるよりも早く、アクセルを踏んで行っても駆動輪の内輪差を考慮した左右独立した駆動システムが完成していれば、加速はコーナーリングの終わる前からも行い得るのではないだろうか?
他にも、タイヤの表面温度の管理、ダウンフォース、リアサスペンションアームの取り付け角度によるインピーダンス効果等々、トラクションを良く出来る可能性は多岐に渡ります。
それらのことは、主に加速時のトラクションというメカニカルなグリップを向上させることについて書いたことですが、
昨日のタイヤの横剛性をあえて下げたのかもしれないと書いたのは、トレッドゴムと滑りやすい凍結路面の間に起きるミクロ的メカニカルグリップを唐突に立ち上がる横方向の加速度で壊さないために採用された手段なのではないかという意味なのです。
言いたいことは伝わったでしょうか・・・・?
Posted at 2016/01/27 19:13:53 | |
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2016年01月27日
東京では雪も降ったようですが、私の住む千葉県の市原市では積雪もなく、また長野県方面への出張もなくて、せっかく履いたスタッドレスタイヤですが、相変わらず雪道を経験していない。
そのダンロップ・ウィンターマックス185/60R16ですが、今日首都高速から湾岸線に出て得意な宮野木ジャンクションで、速度を高めに維持した状態で走ってみた感想を書きます。
印象ははっきり言って良くなかったです。
空気圧はフロント0.3MP、リア0.26MPですが、腰砕け感がありました。東京方面から来て東関東自動車道から京葉道路へ乗り換えるジャンクションの左コーナーから右へと切り返すあたりで、かなりアクセルを踏んで速度を上げた時にどういう反応をするか試した結果です。
左カーブから右カーブに転じて、車体の左側に荷重が移ると左側が沈んでゆきますが、そこからもう一段沈む感じの動きです。明らかに柔らかすぎるという印象ですね。
ダンロップタイヤは、以前から何本も使ってきた経験があるので、タイヤのサイドウオールが設計ミスで腰砕けになっているような事はないと想像できるので、これはトレッドゴムの柔らかさが原因と考えられます。
しかしわずか10mm程度のトレッドゴムの柔らかさだけにしては大きな動きに感じられたので、氷上でのコーナリング時の加速度を減らすためにタイヤボディーの剛性を幾分下げて、ハンドリングで起きる横Gが唐突に立ち上がらないようにタイヤの横剛性をあえて下げているのかもしれないと考えました。
結論は、氷上性能が高ければ、その氷上性能とドライ路面での横剛性がトレードオフされたとして納得するほかないかもしれませんが、これはタイヤとして褒められることではありません。
まあ、スタッドレスタイヤで夏用タイヤに近いコーナーリング速度でドライ路面の130Rを走ることの是非を考えれば、それが無謀なことと言えないこともありませんが、結構気持ちの悪い2段モーションのロール感があったことを報告しておきます。
念のため言っておきますが、二段モーションのようなロール感の後も速度を上げ続けましたが、ブレイクしてしまうことはなく、その後はその状態でアンダーステアにもならずに踏ん張っていましたから、致命的なことはありません。ただ、一度ロールした後2度目のロールを感じたときはブレイクしてしまうのではないかという不安な気持ちにさせるので気持ちは良くはないです。
ダンロップ・ウインターマックス185/60R16の高速コーナーでのインプレッションでした。
Posted at 2016/01/27 00:38:43 | |
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