↓光造形式3Dプリンタで出来上がった機械部品。
数回のテストを経て、どうやらこの装置の特徴や欠点等も理解できて、如何やったら欠陥の無い部品を造形できるかも解って来ました。
そういう意味では、部品の形状が造形の失敗を誘導していることも多いので、結果に及ぼす影響をモデルのうちに予想しなくてはならないのだが、一見してその部分を見抜けないことも有って、出来上がってから気付いてモデルを修正することも有りました・・・。
欠陥の無い部品を製作するには造形する時に何処を上にするか?と言う事に大きく影響を受けるので、想像力が物を言う訳ですが、最初はそれがなかなか難しく、やってみて始めて「こうなってしまうのか!?」と残念な思いも何度か味わいました。
光造形式3Dプリンタは、一般的な用途ではフィギュアや花瓶とか、置いて眺める物を作ることが多いはずなので、普段は見えなくなる底の部分をビルドプレートにくっつけて造形すれば問題は無いでしょう、しかし、機械部品の場合、全ての面がきちんと造形出来ていて欲しいので、造形時の設置方向によっては、ビルドプレートと言うプラットホームに接触している面が完璧なクオリティーに仕上がらないことが問題になってしまうので、実はその部分で苦労しています。
それを回避する手法として、ビルドプレートには接触させずにサポートで宙に浮かすような設置で造形する事も有り得るのですが、その方法はサポートが付いていた部分をどうやって目立たなくするのかが今度は問題になるのです。目立たなくすれば意匠的に問題が無い場合はそれでも良いですが、0.1mm以下の精度で篏合する機械部品の場合、そのサポートを外した痕跡が問題となることもある訳で、特に、ビルドプレートに対して並行で水平な面を最初に作らねばならない時は、最初に作る面の厚さがZ方向の積層高さに依存するので、0.05mm程度にならざるを得ない為、その面が広い時、1層目の硬化後に紫外線の出るフィルム面から離れて行く時や、離れて新しいレジン液がワークと光源の面の間に入った後に再び下がって光源面に到達するまでの動きで0.05mmと薄い膜なのでレジン液の抵抗で面が暴れてしまって2層目やその後の造形に異常をきたすことが問題となるのです。
と、ここまで書いたのですが、光造形式3Dプリンタの構造と立体物を造形する仕組みが解っていない場合、私が何を言っているのか良く解りませんよね?・・・・。
なので、簡単に仕組みを説明して置こうと思います。(興味のある方は「LCD式のレジンプリンターの仕組み」「光造形3Dプリンターの原理」等をキーワードにWeb検索してみて下さい。)
光造形式の3Dプリンタは、殆どの場合、液体の紫外線硬化樹脂を使って紫外線に当たった部分を瞬時(1秒~5秒)に硬化させて液体の樹脂を個体の樹脂に変質させることを数百回繰り返して積層することで立体形状を作ることを原理にしています。
その具体的な方法は、液体の樹脂(レジン⓪)を深さ20mm幅300mm奥行き190mm程度のトレー①に入れて、上方の空間から平らな板(ビルドプレート②)をその液に浸すように下げて行き、レジンの入ったトレー①の底にぴったりと接触する寸前まで下します。
レジン⓪液の入ったトレー①の底は0.2mm厚さ程度の半透明のプラスチック幕(FEPフィルム③)で作られていて、その膜の下側から強い紫外線を照射し、紫外線をLCD(液晶幕)によって遮光する場所と透過する場所を作り出して選択的にトレー①内の底面に有る樹脂を硬化させます。
硬化させる時間は1秒~5秒程度のLED紫外線ライト(385nm~405nmの波長)の照射で行いますが、その時の照射は目的とする造形物のスライス断面の形状以外を液晶画面で遮光することで得ています。
1回の照射で約0.05mmの厚さを硬化させ、直後にビルドプレート②を数mm上昇させて、FEPフィルム③に張り着いた硬化樹脂をビルドプレート②の上昇によってはがし、その空間にレジン⓪を引き込んで次の硬化層を作る準備とします。
そしてすぐに再びビルドプレート②をレジンの入ったトレーの底へと下げて行きますが、先ほど0.05mm厚さの硬化レジンがビルドプレート②の底面に張り付いているので、その分先程よりも0.05mm手前で停止して、1層目の下に2層目の硬化樹脂を着けるのです。
この様な動作を数百~数千回繰り返して薄い膜の様な硬化層を沢山積み重ねて、狙った立体形状を作り上げます。
それらの一連の動作はPC上で全てパラメーターに記録するので、実際に3Dプリンタにデータの入ったUSBメモリを差し込んでスタートボタンを押せばプリントは開始され、数時間~十数時間の後には完成します。
しかし、完成した造形物とプラットホームはレジンでベトベトに濡れていますから、FDM式の3Dプリンタの様に剥がして終わりとは行きません。
プリントが終了した後、ビルドプレートを外して斜めに吊り下げてレジンを出来るだけトレーの中に戻し、ニトリルのゴム手袋を使用しつつ作業が出来る程度までレジン液を掃除した後、作業台の上でプラットホームから造形物をはがします。
そしてビルドプレートをIPA(イソプロピルアルコール)を使用して更にきれいに掃除して、プリンターに戻し、出来上がった造形物もIPAを使って2~3回洗浄し、良く乾かしてから2次硬化装置の中に入れて10分~30分程度紫外線を当てて更に硬化させます。
そして問題はプラットホームにくっついていた部分の仕上げを手で行う事になるのですが、これがアナログ作業そのもので時間もかかってしまいます。
この部分を改善したいので、販売会社に良い方法はないですか?とメールを書いたのですが、改善する手法を案内されることは無く、ヤスリなどで仕上げて下さいと言う情けない回答が返ってきたのでした・・・・。
私には幾つかアイディアもあるので、順次試して改善を試みることに致します。
全体的な作業の最終段階はベトベトのレジンとかなり匂うIPAが、共に液体であり、衣服や床などを汚さぬように慎重に扱わねばならない事も、光造形3Dプリンタの大きな欠点と言えます。造形物のクオリティーは滑らか、で一見インジェクション成形された物と見まごうほどですが、プリント後の掃除や仕上げる手間を考えるとFDM方式のプリンタの方が未来はあるように感じますね・・・・。
光造形3Dプリンタのプリント後の面倒な作業がすべて自動化される日が来ないとも言えませんが、現状ではそれは高価な装置を生み出すことになるので、可能性はあっても価格の問題もあってホビー向け用の装置として考えると、実現する日はなかなか来ない気がします。
Posted at 2025/10/10 01:15:23 | |
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3Dプリンタ | 日記