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銀河遼のブログ一覧

2015年12月15日 イイね!

1969年の日本グランプリを見た。





上の画像は、実際に私が富士スピードウエイのメインスタンドから、父に借りたミノルタ・ハイマチックで撮った画像をフィルムスキャンでJPGにしたものです。

昔話で恐縮ですが、今思っても、この6回目の日本グランプリは興味深かったレースなのです。

思えば第1回の日本グランプリで、日産と合弁する前のプリンス自動車勢はほぼノーマルの車で参戦したがレース用に多くの改造がなされた車には及ばず、最高位でも8位と敗北した。

プリンス自動車は、ブリヂストンタイヤの会長だった石橋正二郎氏の出資で設立された「たま電気自動車」を前身とする会社であり、石橋正二郎氏が最高に地位にあったが、レース結果に激怒した石橋氏の肝入りで翌年の第2回日本グランプリでは2000CC6気筒のG7型エンジンにイタリア製ウエーバーキャブレターを3連装してS50スカイラインのボディーを長くして搭載、優勝こそ式場壮吉氏の駆るポルシェ904に奪われたが、それ以外は上位を占め、更にはプリンスのドライバーとして参加した生沢徹氏の乗るスカイラインがポルシェ904を一時抜いて一周だけだがトップを走り、日本人の心を熱く刺激したのだった。

そのポルシェ904と式場壮吉氏が第二回日本グランプリに参加してプリンスに勝利させなかった陰には、世間ではあまり知られていない噂話がある。
それは当時式場壮吉氏がトヨタ自動車の契約ドライバーであったことから、プリンスのレース用の車の開発の進捗を知ったトヨタが式場壮吉氏とポルシェ904を個人参加させ、プリンス自動車に日本グランプリで勝たせないようにしたというまことしやかな噂話だ。
真偽のほどは、その後の式場氏や生沢氏が何度かそのことを語っていて、そうしたまことしやかな噂話は否定されてはいるが、その辺の真相は式場氏の胸の中だけに在るのだろうと私は思っている。

そういう歴史もあって第3回日本グランプリは盛り上がり、その時すでに日産との合弁が決まっていたがプリンス自動車の開発したR380は、富士スピードウエイで今度は滝新太郎が駆るポルシェ906をR380を駆る生沢が抑えに回り、トヨタ2000GTともども下して優勝する。
日本のモータースポーツファンはポルシェを破るなど、国産車の力が確実についてきたことを感じ取っていた。そしてモータースポーツ熱もさらに高まりを見せることになって行く。

翌年の第4回日本グランプリは結果的に生沢徹氏がポルシェ906で日産R380に雪辱を果たした。レース内容では高橋国光のR380がポルシェ906の生沢を追い詰めてスピンに追い込んだが、そのアクシデントからの回復状況の違いが明暗を分けたものだった。R380はポルシェ906に対し互角以上に戦えたことを日本人は知ったのだった。
また、この年、トヨタ自動車は日本グランプリに参加せず、レースでは日産に遅れをとったことが誰の目にも明らかであった。
しかしトヨタは翌年の第5回日本グランプリで雪辱すべく、3リッターの新型車の開発を静かに進めていたのであった。

1968年順調な仕上がりを見せる3リッターのトヨタセブンに対し日産はR381は完成が遅れ、R381が出場できるかどうかも怪しかった。日産はR380-2で対抗できるのか?プライベーターの滝レーシングはポルシェ910と言う最新型のポルシェを用意していたから、日産の劣性は誰の目にも明らかだった。
結局、日産が開発していた自前のV12エンジンは間に合わず、なんと掟破りとも言える5.5リットルのシボレーエンジンを積んで参戦して来たのだ。「血迷ったか日産?借り物のエンジンで出て如何する?」と言う状況だったが、桜井 眞一郎氏の手になるR381は世界初の左右分割式の可動ウイングを持つ空力の車であった。エンジンでは言い訳出来なかったが、左右分割式の翼を羽ばたかせてレースを支配、3リッターのトヨタ7にも勝利し、レースファンとレース関係者を驚かせたのだった。

シボレーエンジンを載せてまで勝利にこだわった日産は決して良くは言われなかったが、翌年の5月には開発していた12気筒のエンジンは完成、R380の直列6気筒エンジンを2つ並べてV型の5リッターとした自前のGRX-1エンジンだったが、それを搭載したR381-2はフジスピードカップに出場して優勝する。
しかし8月のNETスピードカップではFIA発の突然のルール変更があり、可動式ウイングは元よりウイングそのものが禁止され、5リッターV8の新エンジンを積んだトヨタニューセブンに敗北してしまうのだった。

そうしていよいよ10月、言わば無差別級ローカルルールのような日本独特のグランプリレース、1969年日本グランプリの開幕を迎えるのでした・・・・。

滝レーシングが招聘したドイツの本家ポルシェ917はFIA国際メーカー選手権のグループ4チャンピオンカーで、エースドライバーのジョセフ・シーファートを起用し必勝を期して来日、2か月前には日産を破ったトヨタニュー7は絶好調で、トヨタの契約しているラリードライバーのビック・エルフォードをドライバーに起用するなど、5台のエントリーで、こちらも必勝の構えだった。

しかし、10月9日の予選は戦前の予想を裏切り日産R382と言う新型車が1~3位を独占することになった・・・。
4~6位はトヨタ7、7番にポルシェ917、8~9位にトヨタ7、10~11位に滝レーシングのローラ勢という上位グリッドで10月10日のスタートのフラッグは振られることになったのです。

日産はGRX-1の5000CCをスケールアップして5954CC/600馬力以上としたGRX-3と言う12気筒のDOHCフォアバルブエンジンでエントリーして来たのでした・・・。

日本車を完全に舐めていたポルシェは「こんなに速いセブンカーが日本に在るとは知らなかった、こんなことなら917PAを持って来るんだった」と言ったそうだが、滝レーシングの滝 新太郎オーナーは、散々日本には世界で最も速いグループセブンカーがあるから、決して侮るなと言ったけれど、ポルシェは自信満々で聞く耳は無かった。と語っていた。(滝 新太郎氏はBSの石橋正二郎氏の後ろ盾もあってこのようなレース活動をしていた。)


その決勝レースのスタートの様子が上の画像という訳です。

この頃のレースを振り返ると、トヨタ自動車と日産自動車が激しくレースでしのぎを削ったたったの5年間で日産は世界で初めての左右分割式の可動ウイングを発明するにまで進化し、コンベンショナルな手法で力を発揮してきたトヨタ自動車を出し抜き、そしてR382の開発では公式予選の前日まで6リッターの新エンジンであることを隠して再びトヨタに勝利するのですが、そのトヨタとニッサンの激しい意地のぶつかり合いは、いつしかヨーロッパのメーカー選手権のチャンプカーの実力さえ凌駕してしまっていたのです・・・。

ここで現在のレース界の状況を考えて比較してみると、その時に日産のやり遂げた開発がどれだけ凄い事であるか判るのです。

先ず、当時12気筒エンジンで成功したのは95年のF1最終戦のメキシコで初勝利を遂げたホンダF1の1.5リットルエンジンと、97年のイタリアGPで同じホンダの3リットルF1、RA300しかなく、大排気量の12気筒エンジンが世界的に見て大きなレースで勝った試しはなかったという事があり、12気筒エンジンの完成度が短期間でありながら見事だったこと、次に新設計のシャーシーと新型ボディーカウルの車にレース経験の全くないエンジンを載せたにもかかわらず、シェイクダウンから間もない状況で720kmに及ぶ長丁場のレースでワンツーフィニッシュで、最も健闘した川合稔のトヨタ7を1周遅れにし、ポルシェ917にも4周差と言うデビューウインしてしまう事が、どれくらい困難なことか想像を越えます。

いきなり出てきた全くの新車が予選ではトヨタ勢に3秒以上、ポルシェ917にも4秒以上の差をつけてしまったのですから、無事に走り切れば楽勝と言うよりカテゴリーの違う車の混走レースみたいなものです。
こんなことは現在では殆ど起こり得ないほど難しい勝ち方であることが判るでしょうか?同じ島国の中で競い合っていたら世界で最も速い車になってしまい、自動車レースの本家のヨーロッパのチャンピオンカーポルシェ917が蚊帳の外になるほどの実力に達してしまった。という事です。

日本の車は世界に通用すると、多くの日本人が自信を強くしたエポックメイキングなレースだったのです。

Posted at 2015/12/15 22:03:23 | コメント(2) | トラックバック(0) | 日記
2015年12月14日 イイね!

私がバネ下重量を軽くしたい訳

バネ下重量の軽量化はバネ上重量の10倍効果的等と言われたりするが、その最も大きな理由は慣性モーメントの軽減である。慣性モーメントが小さくなると何が良いのか?

1.まずタイヤを回すときのエネルギーが少なくて済むため、馬力が加速に多く使われ、タイヤとホイールの重さ分を回すのに割く割合が減る。当然その逆の動作のブレーキングでも同じように重いタイヤとホイールよりは小さなブレーキ力で、同じ制動力が得られるからブレーキパッドやディスクへの負担が減り長持ちするし、制動距離もわずかではあるが短縮する。

2.タイヤとホイールが回る時に発生するジャイロ効果が小さくなることで、ハンドルが軽く切れるため、車の動作が俊敏になる。

3.軽くなったバネ下重量はタイヤの接地性を高める。不整地やギャップなどの乗り越えではタイヤが宙に浮いている時間が短くなり、タイヤのグリップが高まる。(これが最も重要)もしレースやラリーならタイムは確実に短縮する。

4.車全体が軽くなり、加速減速が素早くなる。などの効果がある

バネ下重量の軽量効果はホイールとタイヤでは、より外側にあるタイヤを軽くすることでより大きな効果を生むから、タイヤはコンパウンドや構造的なグリップ力もさることながら、その軽さは非常に重要なのだ。

昔からホイールの軽さばかり気にしてタイヤの重さを考えない人が多いので、なんで???と、私は思っていました。

ご存知かもしれませんが、レーシングタイヤは嘘みたいに軽いですよ。

バネ下の軽さを欲しくなるのは、高速道路のインターチェンジなどで減速する時、ブレーキングゾーンがやや荒れているところなどでは、アンチロックブレーキが作動して制動距離が伸びたりします(市原インターのカーブ手前がまさにその状態です)高めのコナーリング速度の80kmまで素早く減速しようと多少強くブレーキを踏んで入って行くとカーブの始まる部分にある舗装の継ぎ目であの不快なアンチロックブレーキが作動して、ハンドリング開始後もブレーキを残さねばならなくなるんです。(基本は直進中にブレーキングを完了させるから。)

最も速く走ろうとしたときはコーナーへ進入してもブレーキはかなり残すのだし、それはそれで仕方ないのですが、更に雨だったり、凍っていたとしたら・・・と考えると、タイヤが宙に浮く時間は出来るだけ少なくしたいのですよね。正確なブレーキングのためにはアンチロックブレーキの作動は邪魔でしかないですから・・・。

実際、省燃費のためにタイヤの空気圧を0.35MP程に高めておくとテキメンにアンチロックブレーキが舗装の継ぎ目で作動してしまうのです。空気圧を0.25MP程度に戻すと、その頻度は格段に下がります。

つまり、舗装の継ぎ目で一瞬リヤタイヤが宙に浮くためブレーキがロックしているという事ですから、空気を入れ過ぎたタイヤが操縦安全の立場からはいかに危険かを物語るものでもある訳です。

高速道路のインターチェンジのように比較的滑らかな路面で、その先の路面も予想の範囲の場合であればブレーキを少し残して侵入すればほとんどは事なきを得ますが、もしその先の路面が凍っていたとしたら、もしくはソロバン上のウネリなどがあるのであれば、結構危険な状態になることも有りますよね。

そういう予想出来ない様な未知の道路では、なるべく予期しないアンチロックブレーキは作動してほしくないので、タイヤの空気圧は標準まで下げ、出来るだけバネ下重量は軽くしておきたいのです。



Posted at 2015/12/14 22:38:42 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2015年12月14日 イイね!

軽いタイヤを調べてみた・・・。

DJデミオの185/60R16を1インチアップで使うときのタイヤは、215/45R17が最も直径が近く、3.1mmしか小さくならないため、メーターの読みや平均燃費表示に最も影響が少ないので良さそうです。
因みに215/45R17は直径が625.3mmで外周長は1963.442mmとなって、約1.5mm車高が下がり、メーターの表示数値より実際の走行距離は99.5%の走行となります。トリップメーターで100kmの時、実は99.5kmしか走っていないことになりますから、車が表示する平均燃費も0.995を乗じて考えるのが正解となります。

標準よりやや直径の大きなタイヤでは205/50R17があるが、これだと、直径が636.8mmで外周長は1999.552mmとなり、車高は4.2mm上がり、メーターの表示数値は少なめに出て、101.33%が実際の走行距離となるから、メーター読みが100kmの時、実際は101.33km走ったことになり、平均燃費も1.0133倍すると正解になります。

さて本題のタイヤ重量ですが、国内大手4社に問い合わせてみました。

215/45R17と言うサイズで最も軽いタイヤと銘柄を電話で聞きました。軽い方から順に

ブリヂストンタイヤ  エコピアEX20         215/45R17    8.5kg   @16,340.-
                             
トーヨータイヤ     ナノエナジー2          215/45R17   8.6kg   @17,190.-

ヨコハマタイヤ    エコスES31          215/45R17   8.7kg   @9,600.-

ダンロップタイヤ   エナセーブEC203      215/45R17   8.8kg   @11,380.-

と言う結果です。(値段は価格.com調べ最安)

こうしてみると軽さで選べばBSのエコピアEX20という事になりますが結構値段が高いです。

値段で選ぶなら断然ヨコハマタイヤのエコスES31になりますが、グリップ性能や静寂性を考えるともう少しカタログと睨めっこしなくては何とも言えませんが、実際問題グリップレベルと静かさは数値データになりにくく、同じ車同じ場所で、走らせてみないと判らないだけでなく、新品タイヤと少し減って来た時の騒音の具合などの違いがあり、正確な判断は困難です。

こういう比較こそモーター雑誌がやってくれると有難いのですがね・・・・。

私は、自分のホイールを6.6kg程度で作るので、エコピアEX20を選んだ場合8.5kgとの合計は15.1kgとなり、標準で着いて来たアルミホイールと185/60R16のTOYOタイヤの合計重量16.3kgに対し1本当たり1.2kg軽量化することが出来るという事になります。これは慣性モーメントの面でも改善することを示しています。

さあどれが静寂性に優れまたドライグリップ、ウエットグリップに優れているのでしょう…まずは静寂性でふるいにかけてみようと思います。

最初に予定していた静かなレグノは9.4kgと重かったので止めます。他の調べた重さは・・・中国製ピレリP1=10.3kg、ダンロップRV504=9.0kg、ルマン4=10.1kg、ヨコハマSドライブ=9.8kg、ブルーアース9.2kg、トーヨーDRB9.2kg等でした。

様々なメーカー、銘柄やサイズ別にを調べてお知らせしたいところですが、これらの重量データはどこのメーカーも問い合わせないと知ることが出来ないのでなかなか大変なのです。
今日調べたメーカーのその他の銘柄のタイヤでは、9kg~10kg程度が標準的な重さでしたから、17インチにサイズアップする場合、ホイールは7kg以下の物でなければデミオに標準で着いてくるアルミホイールとタイヤセットよりも重くなってしまうことが解ります。

是非これらのデータを参考にしてみてください。
Posted at 2015/12/14 17:48:24 | コメント(1) | トラックバック(0) | 日記
2015年12月12日 イイね!

前回書いた図解のキングピンオフセットの件・・・。

だいぶ書き足した部分や書き直した部分がありますので、興味がある方は、御面倒でももう一度読んで頂けるとありがたいです。

長文で、読む気が失せることは承知しておりますが・・・・・。
Posted at 2015/12/12 14:18:25 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2015年12月11日 イイね!

キングピンオフセットの説明を図解で・・・・。

キングピンオフセットの説明を図解で・・・・。この図はレーシンカーなどのダブルウイッシュボーンサスペンションの前輪の中心断面です。



先日の、キングピンオフセットの説明では、文章だけの説明で多分わかりにくかったと思うので、図を描いてみました。

タイヤが垂直に立っていれば、このようにトレッドの幅が地面に接触していることになり、現在の車にはほぼキングピンは存在しませんが、このように仮想キングピン角度が存在していて、そのキングピン角度の延長線が地面と交わる位置が、ハンドルを切った時にタイヤが転動する中心となります。

この図では4.7mmトレッドの中心よりも、タイヤの転舵位置が外に在ります。この状態のことをネガティブオフセットと呼びます。

一応念のために言っておきますが、前や後ろから見た時にタイヤがハの字になるようなタイヤの取り付けは、ネガティブキャンバーと言って、このキングピンのネガティブオフセットとは関係がありません。

蛇足ながら、F1などでフロントタイヤがネガティブキャンバーになっているのが見られますが、それは限界的コーナーリング時のタイヤの変形が、接地面積を減少させるようなタイヤの性格がある場合、仕方なくネガティブキャンバーにして対処しているもので、理想で言えばサスペンションジオメトリーを走行中に変更して、横Gに応じてキャンバー角だけを変更したいところだと思いますが、アクティブサスペンションが禁じられていて出来ないのかもしれません。

本題ですが、この図のように、トレッドの中心より外にタイヤの転動する中心があるという事は、直進中も常にタイヤの転がる抵抗によってトーインになろうとしているし、ブレーキを掛けた時には、力関係としてボディー側にブレーキ抵抗の中心が来ますから、フロントサス全体として見ればトーイン傾向に僅かに動くことになり(ゴムのロッド端ブッシュの弾性分だけそのように動く)、車としては安定的変化となる。(トーインは直進性が上がり安定すると一般的には言われます。)

またエアーが減った時に車がやや傾いても、このオフセット分だけは接地圧中心位置がまだ転動中心の内側となることで、安定していることになります。

この図は前から見た右前輪の断面図ですが、このタイヤがパンクした時のことを考えると、それでも右側にハンドルを取られなくするにはネガティブオフセットの量がやや足りないと思いますが、車を5年間乗ってもフロントタイヤがパンクすることの確率が殆ど無いような昨今の道路事情を考えれば、パンクした時の安全性のために変更不能な、過剰なジオメトリーを採用する事への是非が、エンジニアの間では問われることでしょう。

その部分を考えれば、超ロープロファイルタイヤは、パンクによるライドハイトの変化が非常に少ないため、ジオメトリーの変化も少なく、ハンドルを取られるような外力も掛かりにくいので、乗り心地はともかく運動性と応答性、対パンク時の操縦安全性は上がると言えるでしょう。

上の図解したフロントサスペンションは、下のレンダリングしたフォーミュラカーの一部ですが、某工業大学のフォーミュラプロジェクトに招かれて、プロジェクトに参加した学生達にフォーミュラ・レーシングカーの設計と、3D・CADでのモデリングなどについて教えた時に、私がサンプルとして設計したものですが、どのカテゴリーにも属さない類のものです。



このキングピンオフセットのことを書いていて、ふと思ったことがあるので以下に記します・・・。


昔から行われていた、「トーインを少しだけつけておく」という事の目的をあらためて考えてみると、ステアリング系の組み付け遊び、特にステアリングギアボックスにはバックラッシがある為、、トーインゼロではニュートラル位置の直進時には、どうしてもふらつきが発生するから、両前輪にトーインをわずかにつけることでその不安定さを軽減させていたのではないか?また、強くブレーキングすると、テンションロッドのゴムブッシュが少し撓み、アライメントがトーアウトになってしまうとその状態でのハンドリングでは、荷重のかかる側(外側)のタイヤがトーアウトからトーインに切り替わることで唐突にハンドリング方向へ曲がる印象を与えるが、それは一般には不安定な挙動と捉えられる為、そうならない様にしてあるという事もあるのではないだろうかと思えて来た。

特にフロントサスペンションの形式がローコストで容積効率の高いストラット式が多く採用されるようになった頃、ワイドなタイヤを使おうとした車では、キングピンオフセットをネガティブにするということはサスペンションとしては作りにくい方向であったし、そうした設計思想が広く普及していない時代でも、トーインやトーアウトにせずに真っすぐ転がるようにセットする方が、タイヤも長持ちするし、走行抵抗も少ないので良いことは解っていたはずだが、直進時のふらつきや、ブレーキをかけるとトーアウトになろうとする力が働くため、カウンター措置としてトーインをつけることが常識と化したのではないか?(少なくともハンドリング特性はマイルドになって行く)

直進ふらつきと、ブレーキを強くかけるとトーアウトになってしまうという事さえなければ本当は、トーインをつけなくてもキャスタ角だけで十分直進性は確保できるはずなのです。(電動式パワーアシストステアリングがついていることで得られる直進性もあるのではないか?、また私のDJデミオのハンドルのニュートラル位置の遊びの少なさは、トーインによるふらつき防止を必要としていない様にも感じる。)

そう考えれば、現在の車ではネガティブオフセットされたキングピン角度を持つのだし、タイヤの寿命や省燃費を考えると、わざわざ普通の状態でトーインをつける必要はないのではないかと思えて来たのだが、如何だろう?実際私はTE47トレノに乗っていた時は曲がり易さを求めて自分でトーインを調節してゼロにセットしていたが何の問題も感じることは無かったのだ。

現在のネガティブオフセットされたフロントジオメトリでは、ブレーキング時にはトーインとなるような応力が働き、たとえトーインをゼロにセットしていても強くブレーキをかけた時、実際は若干トーインになってしまうはずです。

それと、タイロッドエンドがアップライトに取り付く部分のナックルアームの角度を、上から見て進行方向とは平行でなくすることによって、ハンドルを切った時に、イン側のホイールは大きく角度を変え、アウト側のホイールは少し小さく角度を変えるように設計されているのですが、(アッカーマン・ジャントウ式)それによって、内輪差による曲がり易さを作り出して無駄なスリップアングルが付かない様にしますが、つまりそのハンドリング時の動きはトーアウトにして行くことを示します。

トーインセットアップからトーアウトセットアップ方向への接近は曲がり易さを増すことになり、ハンドリングをクイックにすると言えるのです。クイックなハンドリング特性が嫌いでなければ問題はトーインゼロがどの程度ニュートラル位置での直進安定性に影響を与えるかと言うことだけですから、実際やってみる他ないと思います。

今度の整備で私はDJデミオのトーインをゼロに調整してもらって見よう。きっとタイヤの損耗も減り、走行抵抗が減少してわずかながら燃費も良くなるかもしれませんよね、もともとDJデミオのハンドルに遊びは殆ど無いのですから良いのじゃないでしょうか・・・・笑



追記

今後の一般車を考えれば、トーインをあえてつけることは無くなるでしょう。(もしかするとそういう車はすでに存在していて、私が知らないだけかもしれません)理由は、無駄な抵抗となる要素は排除されることと、ステアリング系の部品の加工精度も高まって、バックラッシが殆ど無いステアリング系を作れるようななり、パワーステアリングの技術を応用すれば直進でのふらつきは無くせるだけでなく、レーンキープ自動制御が多くの車に取り付けられる時代も目前であり、すべての車はネガティブオフセットされたキングピン角度を与えられて、トーアウトを抑制する必要性などとっくに無くなっているためで、ハンドリングの落ち着きと言った味付けも電子制御でドライバーに気づかれない様にサポートするようになると考えられるからです。(すでになっている車も有るのでしょう・・・笑)

そうした時代はもうすぐ目の前であり(とっくに始まっているか?)、これまで黙認されていたタイヤ直径とオフセットの変更などがもたらすキングピンオフセットの変化が、車の安全運用の視点からみれば後退とみなされ、今よりも厳しく制限されるようになるかもしれませんね。

この記事を書くことで、私自身キングピンオフセットを意図せず結果的に変更することになってしまうパーツの使用がもたらすリスクを再考させられる結果となりました。

Posted at 2015/12/11 16:03:11 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記

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銀河 遼です。よろしくお願いします。(宝塚とは無縁です) フリーランスの機械系エンジニアです。(面倒な仕事してる面倒くさいかもしれない人です) 3D・C...
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