【菅政権考】
政治とは全く関係のない話から始めたい。
■引き際は自分で決める
「横綱に昇進したときから引退するときを考えていた」
大相撲の横綱・白鵬が4年前に綱を張った際、昭和の大横綱・大鵬の納谷幸喜氏(70)から聞いた話だそうだ。納谷氏は「宿命」という言葉も使って、最高位に上り詰めた者の覚悟を諭したという。その白鵬が初場所で大鵬の持つ6連覇の記録に並んだ。大相撲の世界において、横綱はどんなに負け越しが続こうと、休場が続こうと、決して降格することはない地位だ。引き際は自分で決めるしかない。
「角界の覚悟」に関するエピソードをもう1つ。
行司の最高位である立行司(たてぎょうじ)は取り組みを裁く際、脇差を帯刀している。かつては差し違え(誤審)を犯した場合、土俵上で切腹する覚悟を示していたことの名残だ。今も、立行司が差し違えた場合、進退伺を提出するのが習わしだ。
なぜ、こんな話を思い出したかというと、菅直人首相(64)が年明け早々、民放番組に出演し、消費税を含む税と社会保障の一体改革について「政治生命をかけて、覚悟を決めてやっていきたい」と決意表明していたからだ。
■「政治延命」を図る?
第177通常国会が24日に召集された。自民党の谷垣禎一総裁(65)は26日の代表質問で、首相の覚悟を正面から問いただした。「約束の期限通りに物事をなし得なかった場合、(首相を)辞職する、もしくは(国民の)信を問うために解散するのか」、「仮に解散の考えがないということなら、『政治生命をかける』という言葉の意味は、『政権にしがみつくための口実として消費税を利用する』『政治延命を図る』という意味だったということになる」
「わが党は『覚悟のかの字もない』首相とは協議できない。国民に信を問うこと(=解散・総選挙)をもって、菅首相の『覚悟』と受け止め、税制抜本改革の与野党協議に真摯かつ積極的に参加させていただく」
さて、谷垣氏の質問に首相はどう答えたか。
「政治生命をかける」と発言した真意については「改革に向けて最大限努力をしていきたいという私の覚悟を申し上げた」
と説明した。解散・総選挙への覚悟については「消費税引き上げについては、従来より『引き上げを実施する際には国民の審判を仰ぐ』と言ってきており、その方針に変更はない」と述べたが、その時期についてははっきりしない。谷垣氏が首相の覚悟を執(しつ)拗(よう)に追及したのには伏線がある。首相周辺から「民主党は衆院で300以上の議席があるのに、解散するバカがいるか」という声が聞こえてくるからだ。
確かに、自民党は2005(平成17)年の郵政選挙で296議席を獲得していたが、09年の衆院選で一気に野党に転落した。小選挙区を基本とする現行の衆院選挙制度では、こうした大逆転の可能性が十分ある。だから政権与党はなるべく選挙をしたくない。首相が国民に「進退伺」を提出する可能性は低い。
■「マイナス支持率ない」
では、首相が「切腹」する、つまり内閣総辞職する可能性はあるのか。意外な人物がヒントをくれた。首相夫人の菅伸子さんは1月12日、日本外国特派員協会で記者会見した。そこで、支持率が低空飛行を続ける首相に対し、「支持率にマイナスはないんでしょ?」と励ましたエピソードを披露した。そして「(首相は)『もうちょっとやってみよう』と思いを固めたんでしょうか」と述べた。首相が自ら政権を投げ出す可能性も低い。そろそろ「永田町の横綱」としての覚悟を見せてもらいたいものだが…。
まあ、政権にしがみつこうとすることはあれこれやってはいるが、菅総理が衆議院を解散して国民に信を問うことはないだろう。衆議院で300議席を持っていれば何とか政権の延命は出来る。菅政権はそれに賭けて、小沢切りの支持率回復策に出た。それはそれで元々相容れない体質同士なのだから良いだろうが、そんなことよりも真剣にそれこそ政治生命をかけて取り組まなければいけないことがある。それは財政の再建と確固たる外交政策の確立だろう。
借金1千兆円はもう笑い事ではないところに来ている。社会保障制度と税制の改革、それと安定した税収のための消費税の増税は喫緊の課題だろう。マニフェスト詐欺などと言われ、ばら撒き政策を推し進めようとしている民主党だが、そんなことで支持率を回復して政権の座に居座ろうなどと思わないで、この際、消費税を15%くらいまで上げて、底で解散に打って出て、潔く下野していただきたい。それが民主党に出来る唯一の国家への貢献だろう。
支持率にマイナスはないなどとうそぶいて政権にしがみついてバカさ加減をさらけ出し続けていると、もしかしたら、菅政権は、政治史上初の「支持率マイナスとなった政権」として歴史にその名を残すかも知れない。
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2011/01/29 20:55:59