御嶽山の噴火は心肺停止・死亡と確認された登山者が計36人と、噴火災害としては平成3年の長崎県の雲仙・普賢岳以来の惨事となった。その多くは山頂部で発見されたというが、被害はなぜ、ここまで拡大したのか。
轟音(ごうおん)とともに激しく立ち上った噴煙について、気象庁は火口上約7千メートルに達したと推定した。一見、大規模な噴火だが、日本火山学会元会長の宇井忠英・北海道大名誉教授(火山地質学)は「空高く上がったのは、風に流されて上昇したから。火口から直接噴き上げたのは数百メートルぐらいとみられ、小規模な水蒸気爆発だ」という。
今回の噴火規模は、御嶽山が有史以来初めて噴火した昭和54年10月の水蒸気爆発と同程度とみられるが、当時の噴火での死者の記録はない。
「火砕流も多くが観光客がいない南側の谷に流れ落ちていた」と宇井氏。にもかかわらず多数の人的被害をだした要因は、「紅葉シーズンの土曜日、午前11時52分という噴火のタイミングと場所だった」という。
多くの登山客は絶景を眺めながら昼食をとろうと山頂付近に集結しており、噴火はそのそばで起きた。
山頂に近い山小屋「二ノ池本館」の支配人(34)は噴火後、「ガンガンガン」と噴石が次々に降り注いでくる音を聞いた。「このままでは危ない」。館内にいた登山客らにヘルメットを配ったという。
地下水が地中のマグマに熱せられて高圧の水蒸気となり、地上に噴出する水蒸気爆発。岩肌は大きく破壊され、四方八方に噴石が飛び出す。「軽トラック大の石が飛んできた」。山頂付近にいた山岳ガイドの女性(43)は、そう証言した。
気象庁によると、火口から噴き出す岩や石は時速約720キロに達することがある。上空から頭に飛んでくれば致命傷となる。
さらに大量の火山灰が登山客らを苦しめた。国立病院機構災害医療センター(東京都立川市)の小井土雄一救命救急センター長は「火山灰を吸い込み、呼吸困難を起こした人は多いのではないか。噴石に当たって身動きが取れず、火山灰に埋もれ窒息した人もいるかもしれない」とみる。一部の救助者は、高温の灰でのどをやけどしていた。
捜索活動を阻んでいる有毒性の火山ガスも、山頂に取り残された登山客らの足を止めた可能性が高いが、火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣(としつぐ)会長は「火口近くでガスの濃度が測定できず、実態は分からない」という。
長野県警は犠牲者の死因について、「事件性がなく、噴火の影響で死亡したことが明らか」として解剖などを実施せず、「災害死」と認定している。
自然と向き合うレジャーと言うのは常にリスクと隣り合わせだ。山は気まぐれで真夏にドカ雪が降ることもあれば厳冬期に氷雨が続くこともある。水と食料と着替えを持って安全に登って安全に降りて来れる保証などどこにもない。体力と行程に見合った装備を背負って登り、降りてきて使わなかった装備を解いて無事に降りて来れたことを喜ぶ。山登りと言うのはそんなレジャーだ。噴火予知を充実させるというが、気まぐれな自然を正確に予知するのは難しいし、無闇に警報を出すのも山を生活の糧としている人たちのことも考えないといけない。山にしても海にしても自然と向き合うレジャーはそれなりにしっかりと備えておくべきだろう。しかし、いくら備えていても今回の噴火に対応することはできなかっただろう。自然は気まぐれで何とも手強い。
Posted at 2014/09/29 23:11:09 | |
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