ハイブリッド、プラグインハイブリッドの時代へ
独フォルクスワーゲン(VW)が引き起こした排ガス不正問題を受けて、すでに米国政府はガソリンエンジン、ディーゼルエンジンに関わらず、すべての自動車を対象に排ガス検査を強化すると発表した。今回問題になっている不正ソフトウエアを搭載したVWのディーゼル車は全世界ですでに1千1百万台が販売されたことが分かっており、米国に限らない。各国で燃費や排ガス規制に関連した検査体制が強化されることは必至である。
今回の事件でさらに重要なことは、VWの不正によってディーゼルエンジンが、日本、中国、米国、EUなど主要市場で今後さらに強化される燃費規制、排ガス規制の一つの「解」には、なりずらいとういうことだ。
代わってどのような技術が導入され、その技術の導入が加速されるのか。つまり、今回の不正事件を受けて誰が「勝者」となるか、という「ディーゼル没落」以降の短期的、中長期のシナリオが極めて重要な自動車産業界の関心事となる。
自動車関係者の意見を総合すると、勝者はトヨタを筆頭とするハイブリッドの先駆者である日本勢、そして小型のガソリンエンジンを発電機として搭載した限りなく電気自動車に近い「プラグインハイブリッド」車で先行する米ゼネラルモーターズ(GM)などのメーカー(トヨタにも「プリウス」の名前がつけられた商品ラインアップのなかにプラグインハイブリッド車がある)。
「世界的に押しなべて一般的な話しをすると、自動車業界には2020年問題があり、2020年規制をクリヤーするためにはメーカーによっては「クリーンディーゼル」が重要な解の一つでした。それがなくなるとすると、これからどうなるのか?」そう話すのは世界的なエンジンのスペシャリスト会社であるAVLの幹部。
2017年から2018年にかけての規制はターボ技術を駆使しガソリンエンジンを小型化し、さらに燃費を向上させる技術が有望。直噴エンジン、シリンダーといわれる燃焼気筒数を減らした3気筒エンジンや2気筒エンジンに秀でたサプライヤー、メーカーが勝利する可能性が高いという。
また、短期的に有望なのは信号で停車しているときにエンジンを一時的に切ったり、信号が青になったときに瞬時にスタートさせる技術。ブレーキからのエネルギー回生などの「マイルドハイブリッド」という技術のサプライヤー。さらには、「プリウス」に代表される電気モーターやバッテリーをガソリンエンジンと併用するハイブリッド車、そのメーカーが短期的な勝者といえるという。
ただし、問題はこれらの技術では2020年以降の規制問題がクリヤー出来ないことである。
もちろん電気自動車のコスト低減、一回の充電で走行できる走行距離が大幅に向上され、EVが画期的に普及すれば、2020年問題は簡単に解決できる。ただし自動車関係者の多くは(AVLの幹部も含め)その可能性が極めて低いことを指摘する。
2020年以降の規制をクリヤーするのに一番有効な技術は、従って電気自動車に限りなく近いが小型のガソリンエンジンを発電機として搭載している通称「プラグインハイブリッド」といわれる技術。さらに燃費規制、排ガス規制がさらに強化されれば、水素を燃料として使用する燃料電池車だとAVL幹部はいう。
ここまで言うと明確であるが、短期的にも中長期的にもことごとくトヨタが有望であること。また、トヨタに続けと積極的に投資してきたホンダやGMが「ディーゼル没落」以降の世界での勝者として躍り出る可能性がいかに高いかがわかる。
最近のガソリン安でハイブリッド、水素燃料電池の将来がいく分不安視されていたが、今回のVW排ガス規制不正問題でその将来はさらに明るくなったといえよう。
また、トヨタがその中でもとりわけ有望であり、絶対的な「勝者」になりえることが明確になってきている。
VWは10年ほど前に米国市場対策として主力製品のディーゼル車の製造コストを抑制しながら排ガス基準を守ろうとしたが、追加の排ガス除去装置を装着するとコストを押し上げるため、装着が見送られたという。その代わりに検査時に排ガス量を操作するソフトを導入したそうだ。結局、地道な技術開発とコスト管理を捨てて排ガスを違法なソフトで処理しようとした。これが悪魔のささやきとなったようだ。どうしてあれだけのスーパー企業がこんな決定をしたのだろうか。技術で問題を解決する。それが出来なければほかの部分でコストを抑える。そうした努力が出来なかったのだろうか。品質、性能ともに一歩リードしていたVWでもそうした違法な方法しか取れなかったのだろうか。日本の企業でもデータの改ざんなど種々の問題が生じるが、利益追求とは言っても一度失った信用を回復するのは並大抵のことではない。技術とは失敗と改良の繰り返し、これを怠っては技術の進歩はない。
Posted at 2015/09/29 22:28:30 | |
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