2016年01月05日
中国様の試験飛行で風雲急を告げる南シナ海
新年早々、南シナ海情勢が風雲急を告げている。中国がスプラトリー(中国名・南沙)諸島の岩礁を勝手に埋め立てた人工島の滑走路で、航空機の試験飛行を断行したことが発覚したのだ。米国はすぐさま批判したが、中国は滑走路や航空機について「民間用だ」と開き直っている。米中の対立は緊迫化しており、ベトナムやフィリピンも中国の横暴に拳を上げ始めている。「世界の火薬庫」と化した南シナ海では、突発的な軍事衝突の可能性も高まっている。
中国外務省の華春瑩報道官は2日、スプラトリー諸島・ファイアリークロス(中国名・永暑)礁に滑走路を完成させたことを発表した。試験飛行にも言及し、「飛行場が民間航空機の基準に符号するかを試すために試験飛行を行った。完全に中国の主権の範囲内の活動だ」と正当化した。
航空機の離着陸を行ったとみられており、事実であれば、中国による初めての試験飛行であり、実効支配を進める暴挙といえる。
中国は以前から国際法を無視して、世界のシーレーンである南シナ海のほぼ全域を囲む9つの線からなる「九段線」(赤い舌)を引き、「自国の領海だ」と強弁。複数の岩礁を勝手に埋め立てて軍事基地化してきた。
スプラトリー諸島以外の複数の岩礁でも軍事基地化を進め、滑走路建設に着手している。このまま放置すれば、中国が同空海域を支配しかねない。当然、米国がこの事態を黙ってみているわけがない。
米国防総省当局者は2日、「試験飛行が(地域の)緊張を高めたことを懸念している」と批判した。
米国は昨年10月、中国の野望を阻止するため、「フリーダム・オブ・ナビゲーション(航行の自由)作戦」を実行し、中国が「領海」と強弁する人工島周辺12カイリ(約22キロ)にイージス駆逐艦「ラッセン」を派遣した。さらに、同12月には、「死の鳥」と恐れられるB52戦略爆撃機を、スプラトリー諸島上空で飛行させた。
米軍は当面、オーストラリア軍と連携して圧力をかけていく構えで、早ければ今月中にも再び米艦船を人工島周辺で航行させる。懲りない中国に対し、一歩も引かない構えだ。
緊迫しているのは、米中だけではない。ベトナム、フィリピンも中国に怒りを抱えている。
ベトナム国営紙タインニエン(電子版)などは3日、同国中部クアンチ省沖の南シナ海で1日、10人乗りのベトナム漁船が中国船とみられる外国船に体当たりされたと報じた。漁船は沈没し、乗っていた10人は近くにいた別のベトナム船に救出されたという。
米国や日本と協調し、対中包囲網の先頭に立っているフィリピンも黙っていない。中国の横暴に怒りを持った同国の若者が、スプラトリー諸島のパグアサ島に船で上陸したことが明らかになった。
現地の報道などによれば、15~27歳のフィリピンの男女47人が昨年12月26日、パグアサ島に到着した。フィリピン国軍の退役軍人も同行していたという。
フィリピン国軍は安全上の観点から渡航自粛を求めていたが、上陸後は若者らに食料を提供し、大統領報道官も「若者たちの愛国心は認める」と述べた。
中国外務省はフィリピンの若者らの行動に対し「強烈な不満」を表明しており、こちらの対立も激化の一途をたどっている。
今後、南シナ海情勢はどうなるのか。
アジア情勢に詳しい元公安調査庁調査第2部長の菅沼光弘氏は「中東と並び、南シナ海は『世界の火薬庫』になりつつある」といい、続けた。
「中国による南シナ海への無謀な進出が、世界秩序を崩壊させかねない段階に進みつつある。米国も批判・抗議しているが、オバマ大統領が『世界の警察官を降りる』と表明したことがきっかけであり、中国は強硬姿勢を崩していない。米中が直接軍事衝突する可能性は低いが、ベトナムやフィリピンが突発的に中国と衝突を起こし、米国が対応せざるを得なくなる可能性は十分ある。日本にとっても南シナ海は国家の生存がかかったシーレーンであり、人ごとではない」
環礁を埋め立てて基地を作り、その人工島と周囲の海域は領土だと言うのは今の国際社会では誰も考えなかった暴挙だろう。しかし、ここまで進むと中国も後へは引けないだろうし、米国も黙って見ているわけにはいかないだろう。現時点で武力紛争ということになれば米軍が圧勝だろうが、地域紛争で終わる保証がない限り、うかつに手出しは出来ないだろう。日本もシーレーン確保のためにはただ手をこまねいてみているわけにもいかなくなるだろう。いずれ、どのような形にしろ、日本もこの問題に絡んでいかざるを得ないだろう。自分よければ全て良しのいやな国が台頭してきたものだ。
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Posted at
2016/01/05 18:00:04
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