米海兵隊の新型輸送機オスプレイが沖縄県名護市の海岸に不時着した事故で、第11管区海上保安本部(那覇市)は15日までに、航空危険行為処罰法違反容疑で捜査を始めた。
ただ、米軍が乗員の事情聴取などに応じるかは不透明で、日本の司法警察権を制限する日米地位協定の壁もあり難航が予想される。
外国籍の航空機が墜落・不時着した場合、主権が及ぶ領海内であれば、海保が事故原因を捜査する。11管は14日未明に捜査を始め、現場周辺の写真を撮影するなどした。今後、乗員の事情聴取や実況見分などを行い、容疑が固まれば書類送検したい考えだ。しかし、米軍に捜査協力を要請したが返答はなく、現場に近づけないという。
日米地位協定に基づく刑事特別法は「米軍の財産の捜索、差し押さえ、検証は米軍の同意を得て行う」などと規定しており、これまでも日本側の原因究明を阻んできた。
2004年8月、沖縄国際大(同県宜野湾市)に米軍ヘリが墜落した事故では米軍の同意が得られず、県警は機体の検証や乗員の事情聴取ができなかった。
県警は氏名不詳で米兵4人を書類送検したが、地位協定の「米軍が公務中に起こした事故は日本側に第1次裁判権がない」との規定から不起訴処分となった。
米国には基本的に過失犯を処罰する法規定がない。交通事故も警察は取り扱わない。一般的な事故の場合は事故当事者双方の保険会社が扱うことになる。事故の原因が重大な過失による場合、飲酒、薬物摂取、過度の速度違反など、殺人罪(殺人もいろいろと程度の差がある)として起訴される。航空機事故のような重大事故の場合、日本のように刑事訴追、個人の責任追及と言うのではなく再発防止を最大の目的に事故調査が行われるが、そこには一切捜査機関は介在しない。関係者も刑事訴追免除が約束される代わりに真実を証言することが求められる。こうした社会制度上の違いがあることを理解したうえで事故をめぐる状況を見ないと単なる「米軍けしからん」の感情論になってしまう。日本側が刑事訴追と個人の責任追及を目的とした共同捜査を申し入れるので米軍側は地位協定を盾に拒否することになる。別に個人をかばったり隠したりするのではなく米国にそうした制度がないので応じることができないということだ。軍事機密等の壁があるからどうなるか分からないが、捜査機関とは全く別の国土交通省などの事故調査委員会が原因の共同調査を申し入れると言うのも一つの手かもしれない。メディアも何かあると米軍けしからん調の記事ばかりを書くのではなくきちんと社会制度や背景を確認したうえでそれなりの正確な記事を書くべきだろう。
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2016/12/15 18:21:07