2017年04月21日
あり得ないことが、(137)
類人猿と人類はある時期から種が枝分かれして別種として生存進化してきたのでサルがいくら進化しても人間になることはないというのが最新の進化論に基づく学説だそうだが、ここに学説を打ち破る新種のサルがいる。こいつ小生意気にも進化していやがる。
「私はね、あなたを自分のパートナーとして選びたいの。お友達や後見人としてじゃないわ。自分がこれから生きていくためのパートナーとしてあなたが必要なの。」
「それは分かったわ。でもね、私もあなたも女でしょう。それは自然なことじゃないし、あなたにとっても良いことではないわ。そうじゃない。」
「じゃあ、あなたと伊藤さんはどうなの、同じことでしょう。」
「私達はもう女としての盛りを過ぎているし、彼女にしても私にしても特別な趣味や趣向の持ち主でしょう。周囲もそれで納得してしまっているけどそれがあなただったらそうはいかないと思うわ。」
「私が納得すれば良いことじゃない。そうじゃない。」
「そうね、基本的にはね。でもなかなかそうもいかないのよ、自分だけが良ければ良いってことにはならないの。特にあなたのような特殊な状況を背負った人はね。」
クレヨンはそれ以上は何も言わなかった。いくらサルでも自分が背負ったものの大きさくらいは分かるんだろうか。
僕達は黙って1階へと降りて行った。そしてダイニングに入るとお手伝いさんが朝食の支度を始めた。ここは家長の主義で朝食はしっかりと食べることになっているのでハム、ソーセージ、卵料理からサラダ、スープ、果物、牛乳、ジュースまでほとんどフルコース状態だった。
「ああ、お腹が空いた。」
僕はテーブルに着くとすぐに並んだ料理を食べ始めた。これじゃあ栄養過多になってしまうが、これから一日活動するのだからこれで良いのかも知れない。
でも僕達は盛んに活動するどころか散々食いまくった後また二階に上がってベッドの上に転がってしまった。クレヨンは僕の脇にぴったりとくっついて横になった。
「抱いて。」
クレヨンは上目遣いに僕を見た。
「あんたねえ、今食べたばっかりでそんなに強く抱擁を交わしたりして食べたものが出て来ちゃったらどうするのよ。ゲロしちゃったらばばっちいでしょう。」
「何でそんなに嫌なことを言うの。全くこの女だか何だか分からない人はムードも何もないんだから。」
思ったとおりクレヨンはあからさまに嫌な顔をして体を離した。
「あのねえ、急にそんなにべたべたしないのよ。今までは何もなかったんだから。あんただってビアンでも何でもなかったでしょう。何でいきなり何の前触れもなくそんなに私に急接近するのよ。夕べは酔っ払っていたけど冷静に考えてみればおかしいじゃない。あんなに濃厚なキスまで何度もしちゃって、ねえ、あんた、本当の目的は何なのよ。」
僕はベッドに半身を起こしたままこっちを見ているクレヨンを逆に見つめながら問い詰めた。どうもこの女はいくら何でもちょっとおかしい。
「私はね、確かにあんたが言うとおり女だか何だか分からない生き物よ。それは私も認めるわ。でもね、私は私なりに生き方に筋は通しているつもりよ。だからあんたもきちんと筋を通して言ってごらんなさい。何が目的なの。私に何をして欲しいの。」
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Posted at
2017/04/21 19:40:52
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