2017年11月11日
あり得ないことが、(148)
そして僕たちの周りを見回してみると何と言ってもクレヨンだが、このサルはこの春めでたく大学を卒業することが出来た。
サルの進路についてはいろいろ意見があったが、僕は当面の仕事よりもまず後一年で卒業出来るという大学卒業を優先させることを強行に主張した。
高等普通教育をしっかりと受けておくことがこれから先サルの人生にきっと大きな力になるであろうことを思ってのことだった。そしてその僕の意見は採用され、サルは大学卒業までは仕事よりも通学を優先させることになった。
しかしいくら高等普通教育がサルの将来に力になるとは言っても卒業も出来ないようでは話にならないのだが、まあ普通の人間が普通に卒業しようと思えばできる程度の日本の大学を卒業出来ないということになるとこれはもう社会的不適格者と言われても仕方がないのかもしれない。
クレヨンも本能的に不吉な予感を感じたのか、卒業前の半年はかなり神経質になっていたので僕たちもかなりレポートや卒業課題の作成を手伝ってやった。
それがなければクレヨンは大学も卒業できなかったかもしれないのでやはり知的能力では未だ進化の途上にあって通常のレベルには達していないのかも知れない。
それでも勝てば官軍でクレヨンは晴れて僕たちと机を並べて仕事が出来る立場になっている。ただし実際に仕事が出来るわけではなく立場がそうだということだけだが。態度もずい分と大きくなったようだが僕との関係に関しては昔のまま僕の絶対優勢下にある。
クレヨンをこの世に誕生させた原動力となったのであろう社長と北の政所様は相変わらず極めて近接した距離で親密な交際を続けている。
ただし最後の一線だけはこの二人もさすがに簡単に越えることは出来ない様子で親密ながらも周囲にはそれなりに配慮したお付き合いを心がけているようだ。
でも僕や女土方の前ではあからさまに愛し合う男女を実践して見せる時もあるからこちらとしてはそんなことは十分に分かっていてもどぎまぎさせられることがある。それでもこの二人にはどろどろした陰鬱さも陰に紛れるような暗さもないのでそれを傍から見ていてもかなり救われる気がする。
それからクレヨン家住み込みの件だが、クレヨンは当然母親のところに行く機会が多くなったので僕等のお役目はかなり軽減されることになって以前よりは自由な自分の時間を取り返しつつある。
そんな状況だから余った時間はもちろんのこと女土方と過ごすために有効に活用させてもらっている。そう、そのとおり僕たちは世間がどう言おうとどう思おうとお互いに固い絆で結ばれたパートナーとして存在し続けている。
そして僕と女土方の関係が続いているということは僕が相変わらず佐山芳恵のままということになる。女の体で生活することについては最近僕にはあまり不都合は感じられなくなった。
周囲もすっかり元祖佐山芳恵のことは忘れてしまって佐山芳恵と言えば僕が演じている新生佐山芳恵のことだと思うようになっている。そんなわけで僕は自分の好きなように佐山芳恵の人格を形成していくことが出来るようになった。
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Posted at
2017/11/11 11:24:47
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