2018年01月02日
佐山芳恵再び、‥(^。^)y-.。o○(16)
しばらくすると警察が来たと連絡があった。僕は総務課長と一緒に警察に現場を見せて隠しカメラの回収について説明をして最後に例のサイトを開いて見せた。警察官は色々メモをしたり、カメラが置かれていた場所を写真に撮ったりサイトについてURLやサイトの名前を控えたりした後に回収したカメラと写真を持って行った。もちろん例の『これこれの品物を提出します』と言うくどい書類を書かされて。もっとも今回は総務課長が書いたのだが、・・。
「それで被害を申告されますか。場所が女子トイレなので一応建造物侵入と言うことになると思いますが、・・・。ただし、実際に被疑者を特定して検挙すると言うのはなかなか難しいと思いますが。」
「こちらの弁護士と相談して後日告訴状をお持ちします。担当の方の名前を教えていただけますか。」
総務課長がそう言うと警察官は一瞬嫌な顔をした。弁護士などが入るとあれこれ言われて面倒だからだろうか。警察が帰ってから女子トイレの使用禁止は解除された。それでもみんな使うのを躊躇ってトイレの前で溜まっていたり外に出るものまでいた。盗撮なんて危険性はどこでも同じだろうし、却ってレストランやデパートのトイレの方が危ないように思うのだが、事実を見せつけられるとそんなものなのかも知れない。僕は構わずに使っていたが、トイレよりもすれ違う社員の目線の方が何となく気になった。こんな噂の広がるのはきっとずい分早いのだろう。夜、家に帰って食事を済ませて部屋で寛いでいると女土方がそれとなく声をかけてきた。
「ねえ、大丈夫、あんなことがあって気持ちの方が。不安とか動揺があったら何でも言ってね。」
女土方は本当に僕のことを心配してくれているらしい。本当に心の底から優しい女だ、この女は。
「大丈夫よ、あんなことくらい。私だと言う証拠もないし、違うと言えばそれまででしょう。結婚も離婚もして男を知らないわけでもないし、それにあの時の方が恥かしいかもね、大きく脚を開くから、ね。」
本当のところ僕は男を知らない。当たり前のことだが、そんなものを知っていたら大変なことだ。今回のことどころの騒ぎじゃない。
「あなたは本当に強い人だわ。私だったら錯乱してしまうかも、あんな写真を公開されたら。ねえ、もう一つ聞いてもいいかな。昨日はどうしてあんなに激しく求めたの。私はどうして良いか戸惑ってしまったけど何か理由があるだろうと思って。その理由をちょっと聞いてみたくなったの。」
「そんな深い理由なんかないわ。あなたが好きだから。そしてあなたと一緒にいると心が安らいで落ち着くから。それが理由と言ったら納得してくれる。」
女土方は黙って頷くとはにかんだように微笑んだ。僕はその笑顔を見て嬉しくなってしまった。でも本当のことを言うと昨日あんなに興奮したのはサイトの写真のせいなのかも知れない。僕の心の奥底にはちょっと危ない性癖が隠れているのかも知れない。本当のことは僕にも分からないが、・・。
数日後、警察に告訴状を出してきた弁護士から社長に報告があったそうだが、あの隠しカメラはCCDカメラ、画像データ保存用のメディア、それにメディアが一杯になると自動的に画像データを送信する送信機が組み合わされた盗撮デバイスとしては極めて高度なものだったそうだ。ただ、発信した電波の送達範囲がかなり狭いのでビルなどの建造物の中ではほとんど外には届かないということだそうだ。
「外に届かないと言うことは内部でデータを受けているってこと。そうすると犯人は内部にいるってことよね。」
クレヨンはまた至極単純なことをのたまった。
「でもあのサイトにはずい分いろいろな場所の写真が掲示されていたでしょう。うちの社員がそんなにあちこち出かけて行けるかしら。デパートとか駅なら誰でも入れるけど、人目につきやすいし、一般の会社や役所とか銀行なら中に入ってしまえば人は少ないでしょうけど、外部の人が、『こんにちは』って入って行ける場所じゃないところもたくさんあったでしょう。それを考えると一概にうちの社員が犯人とも言えないわよね。営業なら可能性はあるけど、うちの入っていないところもずい分あったみたいだから。」
女土方はやはりそれなりに深いところを考えて見ているようだ。サル知恵とは雲泥の開きがある。確かに女土方の言うとおり、一概にうちの社員とは言い難いところもあるようだ。ごく限られた範囲にしか電波が届かないと言うのなら届く範囲で電波を受けてデータを回収しないといけない。そのデータ回収をどうやってやるかと言うことだが、頻繁に出入りすれば当然怪しまれるだろうし、誰かに見つかる可能性も高くなる。その問題をどうクリアするのか、何だか僕が犯人になったような気分だった。
「ねえ、あなたが一生懸命に見つけようとしていた指紋はどうだったの。」
「ああ、指紋ね。警察はいくつか見つけたようだけどそれが誰のものかは分からないみたい。」
女土方は少し首を傾げて考えていたが、今度はあのサイトのことを言い出した。
「サイトはどうなるの。あのまま残ってしまうの。」
「弁護士が米国の知人の弁護士に頼んで閉鎖の手続きをとっているようだけど、まだしばらく時間がかかると言っていたわ。」
「そう、今度のことがずい分と評判になってしまったので何とかサイトを探そうとしている男子も多いみたい。あなたの他に総務や経理の子はことが公になって精神的に不安定な状態になってしまって出社出来なくなって休んでいるわ。出勤している子も気持ちが落ち着かなくて仕事が手につかないみたい。会社を辞めると言っている子もいるみたい。早く何とかしないと大変なことになるわ。」
どうも盗撮の被害を受けた中で犯人探しに血道を上げて元気なのは僕だけのようだ。僕の思考回路は、まっ更、男のそれだから写されたからと言って、良い気持ちはしないものの精神的の動揺するというほどのこともない。それよりも本来人目に晒されないことを絶対条件に、あれこれ必要欠くべからざることをしているところを盗み撮りするその根性の方が腹立たしい。しかし、今のところはそんな卑劣な犯人に鉄槌を食らわせる方法は何一つ見当たらなかった。昼時になって僕たちは昼食を取ろうと部屋を出た。たまたま廊下で溜まっていた営業の男子社員の脇を通り過ぎる時に、そこにいた一人が僕を振り返った。そして他の仲間に小さな声で言ったのが耳に入った。
「おや、鉄の女のお出ましだ。何があっても元気なものだ・・・若くはないけど・・・どんなものか、興味が、・・・ちょっとお目にかかって、・・・。」
言った当の本人は聞こえないと思ったのだろうが、何故だか途切れ途切れではあったが、その言葉が僕の耳に入った。
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小説3 | 日記
Posted at
2018/01/02 00:17:28
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