2018年01月11日
佐山芳恵再び、・・(^。^)y-.。o○(19)
風上にも置けないとは思ってみても、これというきちんとした証明がないと、ただ怪しいでは手も足も出ずに僕の心の中には割り切れない思いが固まったままだった。何とか一矢報いてやりたいとは思ってもても怪しいという状況だけで証拠がないことにはどうにもならなかった。
弁護士にも話してみたが、「状況的にはかなり疑わしいですが、『疑わしきは被告人の利益』という法の大原則がありますからねえ。」と言われて話は終ってしまった。それでもサーバーの画像の方は何とか削除されたが、元のデータがあればいくらでもまたネット上にアップできる世の中だから始末が悪い。これで画像が売買されてでもいたら腹立たしくて涙も出ない。もっとも僕の、いや、元祖佐山芳恵の体かな、まあ、どちらでも中年女の画像など買い手が付かないだろうが、世の中には「ババ専」とか言って熟女が好みの殿方もお出でだろうだからなあ。
そうこうしているうちにあの盗撮事件も徐々に風化してきて会社の者も過去のこととして忘れかけたころ、僕はちょっと訪問するところがあったので早めに会社を出た。用事を済まして時計を見るともう勤務時間が過ぎていたので、そのまま帰宅することにして会社に電話を入れてから最寄りの駅に向かった。
駅前まで来ると本屋が目に入ったのでちょっと寄ってみることにした。女の体になってからもうずい分と時間が経ったが、好みは男の時のままなので本も女性が集うような本棚には向かわない。時々、好奇の目で見られることもあるが、そういうことはあまり気にしないことにしている。しかし、僕の名誉のために言っておくが、アダルトものなどを物色しているわけではないので誤解のないように。そうして本屋であちこち本を物色していると本棚の先を見覚えのある男が通り過ぎた。その姿は僕の神経を逆なでするような嫌な気配を振りまいていた。
「あいつだ。」
僕は手に取っていた本を急いで本棚に戻すと男の後を追った。奴は手に小型の手提げバッグを持ってあちこち見回しながら本棚の間を歩いていた。その間も陳列された本に視線を落とし、あるいは手に取ったりしていたのはその行動を怪しまれないためだろう。どうせ獲物を物色していたのだろう。奴はしばらく本屋の中をうろついていたが、そのうちに外に出て行った。
別に現場を押さえてやろうとかそんなことを具体的に考えていたわけでもなかったが、僕は付かず離れずに奴の後をついて行った。奴は駅でも階段の付近をうろついていたが、しばらくすると改札を入って行った。どこまで行くのかと思い、僕も改札を入って奴と同じホームで電車を待った。こんな時にはICカードは便利だ。どこまで行っても清算なしでついて行ける。
電車は間もなくホームに入って来た。奴はそれに乗り込むと多摩川の手前のある駅で電車を降りた。駅を出ると駅の正面のあるスーパーに立寄ったが、あまりくっついているとばれるといけないので僕は外で奴が出てくるのを待った。奴はほどなく買い物袋を下げて出てきた。大方、晩飯でも買ったんだろう。そして商店街を抜けて歩いて行った。そして駅から十分ほど歩いたところにある単身者用と思しきマンションに入って行った。僕は駆け出した。オートロックのマンションに入られたらお手上げだと思ったからだ。こういう時は自分が女の体で生きているということを忘れている。そうでなければこんなことはしないだろう。そしてマンションの郵便受けを探っている奴に声をかけた。
「失礼ですが、ちょっとお聞きしたいことが。」
僕が声をかけると奴は驚いたように振り返った。そしてまじまじと僕を見つめた。
「あれ、あなたはあの語学教材の会社の方ですよね。あの時はいろいろお世話になりました。今日はどうしたんですか、こんなところに。」
奴は穏やかで丁寧な物言いで僕にそう尋ねた。
「さっき、駅でお見かけしたものですから。ちょうどあなたに聞きたいことがあったので声をかけようと思ったのですが、あなたの足が速くて。」
僕は口から出まかせを言った。まさか東京から後をつけて来たとは言えなかったので、適当なことを答えておいた。
「え、僕に聞きたいことですか。一体どんなことですか。もしも良かったらちょっと寄って行きませんか。狭いアパートで散らかっていますけど。」
「ご迷惑でなければ。」
僕が立寄ることを承諾すると一瞬奴が不気味に笑ったように見えた。カモがネギを背負って来たとでも思ったのだろうか。舌なめずりをするような笑い方だった。この時、僕は自分が女として生きていることを全く忘れていた。普通の女は間違ってもこんなことはしないだろう。変態の根城に飛び込んで行こうというのだから何をされるか分かったものではない。場合によっては弄ばれて殺されるかも知れないのだ。
ブログ一覧 |
小説3 | 日記
Posted at
2018/01/11 17:32:42
今、あなたにおすすめ