2018年01月25日
佐山芳恵再び、・・(^。^)y-.。o○(23)
処置室ではてきぱきと看護師にカーゴパンツを脱がされて傷を消毒されて麻酔を打たれて傷口が縫い合わされた。足の方は太い糸でしっかりと、腕は細い糸で細かく縫ったようだった。
「足の方はかなり深く切れています。しばらくは過激な動作を避けて安静にしてください。それから傷は消えないと思いますので承知しておいてください。腕の方はそれほど深くはないので完治すればさほど傷は目立たないと思います。」
処置が終わってから医者にそう言われて処置室を出た。血だらけのパンツはひざ下で切り離した。ファスナーでひざ下を切り離せるカーゴパンツはこんな時は便利だった。それから薬をもらって会計を済ませたが、保険が効かないとかでずい分な料金を請求された。これって誰が払ってくれるんだろう。そんなことを考えたらまたむかっ腹が立ってきた。病院からは迎えに来ていた警察の車に乗って警察署に行った。そこには社長、弁護士、そして女土方が待っていた。僕は何よりも女土方の顔を素早く窺った。思った通り女土方は僕の無謀な行為に激怒している様子だった。変態男よりも僕は女土方の方がよほど怖かった。車から降りると三人が待っている玄関の方へと歩いて行ったが、玄関先で待っている女土方の顔を見ると何となく足が進まなかった。僕と女土方の距離が数メートルまで近付くと女土方が僕の方へと歩いてきた。
「あ、あのね、偶然で、どうしようもなかったのよ、その・・」
僕は言い訳をしようと思ったが、しどろもどろの言葉しか口から出てこなかった。そこに女土方の平手打ちが飛んできた。この女に殴られるのはこれで何回目だろう。
「一体何を考えているのよ。みんながどんなに心配していると思っているの、ばか。」
「ごめんなさい。すみませんでした。」
僕は女土方に向かって深々と頭を下げた。女土方が本当に僕のことを心配しているのがその表情から読み取れたからだった。
「ちょっと落ち着いてください。」
警察官が女土方を制止するように僕たちの間に割って入った。
「大丈夫、いいんです。」
僕は間に割って入った警察官を押しのけて女土方を抱き寄せた。
「心配かけてごめんなさい。」
僕はもう一度女土方に謝った。女土方はその表情は緩めなかったが、僕を心配してくれているその気持ちは痛いほど伝わってきた。確かに僕のやったことは軽はずみなことだったのかもしれない。それから僕は中に呼ばれていわゆる事情聴取というのを受けた。まず身上から始まって事のなれ初めから順に聞かれるのだが、話をしてもそれがうまく文章にならないようでまどろっこしいと言ったらありゃしない。足も痛いし面倒だし、ちょうど弁護士がいたので自分で書いてはいけないのかと聞いたら自分で書いたものは上申書と言って警察官が書いた調書よりも証拠価値が高いというじゃないか。
「じゃあ、自分で書きます。要するに今回のことのなれ初めから何が起こったのかそれを書いて提出すればいいのね。」
僕がそう聞くと警察官は何だか嫌な顔をしながら肯いたのでパソコンを借りて上申書とやらを打ち始めた。要は社内で盗撮事件があっていろいろ調べてもらっていたらあの男に行きついた。でも証拠がないのでどうにもならなくて歯ぎしりする思いでいたところ、たまたまあの男を見かけて後をつけて行った。自宅まで来たところどうしても事の決着をつけたくなって声をかけてしまった。そして招かれるままに部屋の中に入ってあの男に事実を確認したら、その後はもうここで話した通りだ。奴がちょっと油断していて、性格もぬけていたので僕は殺されたり弄ばれたりしないで済んだということだろう。
何だかんだでこれまであったことを一時間ほどで書き上げて印刷して弁護士に見てもらい合格をもらって上申書とやらは出来上がった。それに署名して警察官に渡してその日はお役御免となった。奴は傷害と脅迫で逮捕されたとこのと、まあそれはそれで当然のことだし結構だと思う。警察署を出るときに警察官に「この次からはもう少し穏やかに行動してください。我々を信頼してもらって出来ればあまり派手なことは慎んでください。」と念を押されてしまった。警察署を出たところで弁護士に礼を言って別れ、社長の車で送ってもらった。社長は黙って運転していたが、そのうちに意を決したように口を開いた。
「佐山さん、あなたは会社にとってもかけがえのない大事な社員だし、個人的にもあなたを必要としている人がたくさんいる。あなたはあなただけの佐山芳恵じゃない。そのことを忘れないでほしい。悔しい気持ちは分かるが、あなたはあんな男と刺し違えるような人じゃない。だからもう少し自重してもらいたい。」
「はい、ご心配とご迷惑をおかけして本当にすみませんでした。これからはもう少し慎重に行動します。」
「しかし、刃物を向けられても慌てずに対応して相手をノックアウトしてしまうあなたには恐れ入った。男でも冷静に対応するのは難しいだろうに、あなたにはどうしてそんなことができるんだろう。本当に一体あなたって何者だろうと不思議で仕方がないよ。」
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小説3 | 日記
Posted at
2018/01/25 17:22:17
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