2019年06月24日
佐山芳恵再び、‥(^。^)y-.。o○(69)
翌朝、起きてカーテンを開けてひっくり返りそうになった。街は真っ白けで深々と雪が降り積もり水墨画状態だった。その時になって初めて北海道の雪をなめていたことを思い知った。しばらく呆然と眺めていると電話が鳴った。出てみると社長で「飛行機が欠航になるかもしれないので昼で打ち切って帰るので迎えが来るまでに支度をしておくように」とのことだった。それでそそくさと支度をして食堂に朝飯を食いに行くと社長に出会った。
「ちょっと雪がひどい。佐山さんは北海道出身だからよく分かっているだろうけど空港が閉鎖になるとまずいので早めに帰ろう」
社長は外を見ながら心配そうな顔をした。僕は帰れなくなったらもう一泊していけばいいことだろうなんてお気楽に考えていた。迎えの車が到着して会場まで行く途中、向こうの人が「ちょっと飛行機危ないかもしれませんね。飛んでくれるといいけど、・・。」などと嫌なことを言う。展示会も昨日とは打って変わって開店休業状態で主催者側と調整して昼で打ち切ることになったが、その昼近くになったら向こうの社長が泡食ってうちの社長のところに駆け寄ってきた。そして二言三言言葉を交わすとまた慌てて出て行った。
社長は僕のところに歩いてくると「空港閉鎖になったそうだ。向こうの社長がホテルを探してくれるそうだからもう一晩こっちに泊まるようになる。会社には僕から連絡を入れるけど何か連絡しておくところがあったら連絡しておいて」と言った。僕は女土方に「雪で空港が閉鎖になったので明日帰る」とメールを入れて置いたらしばらくして「気をつけて帰ってきて」と返信があった。その直後にクレヨンから「雪の札幌ナイトを二人で楽しんで、・・。」とかメールが入った。相変わらずのお気楽バカさ加減に雪に埋もれた街の写真を張り付けて「お前もここに埋めてやろうか」と返したら「気を付けて帰ってきてください」と返信があった。初めから素直に送信してくればいいんだよ。知的美人からは「帰ったら何があったか教えてね。楽しみにしている」とこれもクレヨン並みのメールが着信した。雪の写真をもう1枚張って「あんたもここで少し頭を冷やす?」と打ち返しておいた。
その後、しばらくして向こうの社長がやってくるとまたうちの社長と何やら話し込んでいたが「佐山さん、ホテルに送ってくるれるそうだ」と僕を呼んだ。ホテルに向かう車の中で向こうの社長が申し訳なさそうに「実はホテルがみんな満室で1部屋しか取れませんで、・・」と言い出した。社長と僕は一瞬顔を見合わせたが、「札幌以内のホテルはどこも満室でどうにもなりませんで、・・」という向こうの社長の言葉で観念した。まさかこの大雪の中で野宿もできまい。
ホテルの到着すると「飛行機が飛び始めたらできるだけ早く席を確保させます」と言うので飛行機のチケットを向こうの社長に渡して別れた。最後まで「申し訳ありません」と平身低頭の様子にこれ以上は何も言えなかった。社長はフロントでカギを受け取ってくると「やっぱり満室でどうにもならないようだ。何か所か他を当たってもらったが、どこも一杯だそうだ。まあ取り敢えず部屋を見てみるか」と言ってエレベーターの方に歩いていくので僕もその後を追った。どんな部屋かと言ってもなんだかあまりいい予感はしなかったが、その予感は見事に当たった。部屋はいわゆるスーペリアシングル、ベッドはダブルだった。社長と僕は立ちすくんで顔を見合わせてしまった。
「こりゃあいくらなんでもまずいなあ。」
社長がため息交じりに一言そう言った。
「でもほかに泊まるところもないし、この雪の中で野宿というわけにもいかないし仕方がないですね。雨露じゃなくて風雪を凌ぐところがあるだけでも幸運ということでしょうね」
僕がそう言うと社長はニコッと笑った。
「佐山さんにそう言ってもらえると僕としては一安心だ。じゃあこの先どうするかはちょっと置いておいてリラックスするか」
社長はそう言うと小さな椅子に腰を下ろしてテレビを点けた。
「コーヒーでも入れますか」
僕はそう言うと部屋のコーヒーサーバーを使って2人分のコーヒーを入れた。女も10年近くもやっているとさすがに慣れたものではある。社長にソーサーに乗せたカップを渡すと「ありがとう」と受け取った。僕は自分のカップを取ってもう一つの椅子に腰を下ろした。テレビでは大雪のニュースを放映していたが、雪も夜半には峠を越えるとかで明日は飛行機も飛びそうだったが、問題は今晩この部屋で社長とどう過ごすかだった。僕が元祖女なら成り行きに任せてという選択肢もありだろうけどいくら社長がいい人で嫌いではないと言っても僕としては成り行きに任せてなんてことは天地がひっくり返っても受け入れられない。その点については万難を排しても死守しないといけないが、あからさまにそれを表に出すわけにもいかない。まあ社長にしても好みもあるだろうし、40を過ぎた戦闘系女子では振り向いてもくれないかもしれないが、・・。
しばらく二人で黙ってテレビのニュースを見ていたが、やがて社長が、「腹ごしらえでもしておくか」と言い出した。それでホテルのバーダイニングに電話すると席が空いていたので早速出かけることになった。
「佐山さんは酒は飲まないんだよな」
社長がそう聞くので「少しならお付き合いします」と答えた。それでステーキディナーにビールを頼んだ。運ばれてきたビールで軽く乾杯した後で「私を酔わせる気ですか」と聞くと社長もにやっと笑って「その選択肢もあるなあ」とか答えた。ビールを少し飲んで運ばれてきた前菜やらスープやらサラダやらを食べてビールをお替りして今度はステーキをバクバク食って残ったビールで流し込んでそしてデザートにコーヒーで締め括った。なかなかうまいディナーだった。社長も僕に合わせたのかさっさと食べ終わると最後にコーヒーをゆっくりと飲み始めた。
「さて、飯は食ったけどこの先が問題だなあ。あの部屋で今晩一晩どう過ごすか。」
社長は窓の外を見ながらそんなことを言い出した。
「どうもこうも部屋はあそこしかないんですし他に寝るところもないんだからどうしようもないでしょう。なるようにしかなりません。そうじゃないですか。」
僕がそう言うと社長は僕をじっと見つめた。
「その発言、何だか意味深だなあ。取りようによってはかなり危ない解釈もできてしまう。」
社長はそんなことを言って笑った。
「さあ、部屋に帰るか」
社長は請求書を取るとキャッシャーで支払いを済ませて部屋に向かった。僕は「ごちそうさまでした」と言って後に続いた。
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小説3 | 日記
Posted at
2019/06/24 13:51:02
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