2019年11月28日
佐山芳恵再び、‥(^。^)y-.。o○(78)
部屋に戻ると知的美人がどこに行っていたのかと聞いたので「社長に挨拶に行った」と言うと「愛を確かめに行ったのね」とまた訳の分からないことを言う。この女も愛想なくすましていた時の方がまともだったのかもしれない。
「お手当もらってきたわ」
僕がそう言うとクレヨンまで「えっ」と乗り出してきた。そこで僕はさっき庶務でもらった封筒を振って見せてやった。
「この時代に現金支給なんておかしいわね。本当に出張愛人手当じゃないの」
知的美人が目ざとく追及してきたが、庶務からの支給袋に入っているのでちょっとそれは当たりそうもなかった。確かにこのご時世になぜ現金支給になったのか僕にもよく分からなかった。
「ねえ、ごちそうしてよ」
本能で生きて食い気しかないクレヨンがそういうので「じゃあ昼に何か食べに行く。ごちそうするわよ」と言うと「わぁーい」と声を上げて「子供じゃないんだから大きな声を出さないの」とか女土方に叱られていた。まあ、こいつは子供以下ではあるが、・・。
「あなたも行くでしょう」
僕が女土方にそう言うと女土方はにっこり笑って頷いた。
ところで今回は他社の英会話教材の展示会にアドバイザーとして顔を出したことでとんでもないことになってしまったが、うちの会話教材も最近ではネットを使ったマッチングシステムや旅行会社とタイアップした旅行も兼ねた現地経験型などを主に扱っていてあまり教材のようなものは出してはいない。大体、「何とか英会話」などと言っても要は英語がしっかり話せればあとは必要な単語を覚えればいいわけで話すことに差異があるわけではない。それを商品として販売するためにいろいろと飾りをつけているだけで何があってもなくても会話に変わりはない。英語と言うのは例の
S+V
S+V+C
S+V+O
S+V+IO+DO
S+V+O+OC
の5文型しかないのだから読むにも書くにも話すにもこれに当てはめていけばいい。簡単なことではある。これはかなりの長文を読むときなどにも当てはまるが、要は主語と主節の動詞を見つければ基本的な意味は分かる。あとはすべて修飾語句なのでどれにかかる修飾語句なのかを探していけばいい。日本語よりもよほど簡単である。そんなことを考えながらなんとなく北海道の夜に思いを馳せていたら「何をぼぉーとしているの。行くわよ」と言うクレヨンの声で静寂を破られてしまった。全くこの女、いくつになっても本能以外の欲求はない女だ。僕たちはクレヨンに先導されて近所のイタ飯屋に入った。何と手回しのいいことにちゃんとテーブルが予約してあったにはあきれた。クレヨンは本能の欲求には忠実ではある。
店に入るとクレヨンは店員が持ってきたメニューを見ながらあれこれ注文をし始めた。あまりの品数の多さに「あんた、そんなに食べられないでしょう。食いすぎると脳の活動が鈍るわよ。ただでさえ鈍いんだから」と知的美人から嫌味なオーダーストップが入ったほどだった。結局それぞれ1品に大森のサラダを注文してあとはドリンクと言うことになった。取り敢えずドリンクをもらって待つことにしたが、クレヨンがちょっと真面目な顔つきで僕を見た。こいつのこの手の顔を見るのはずいぶん久しぶりではある。
「ねえ、ちょっと相談に乗ってほしいんだけど、・・」
クレヨンはそう切り出した。
「何なのよ。相談って。また変なことじゃないでしょうね。くだらない話なら聞かないわよ」
僕は鼻からまともなこととは思ってはいないが、一応そう言って予防線を張っておいた。
「あのね、私の大学時代の知り合いなんだけど一緒に暮らしている男にお金を無心されているっていうの。なんかもうかなりの額を渡しているらしいんだけどまたまとまった額を用立ててほしいって言われているようなの。それでどうしたらいいかと、・・。」
最近はこうして男に貢がされて捨てられて路頭に迷って冥界やら神様の世界に迷い込んでそこでイケメンの妖やら神様やら魔法使いやらに助けてもらって平穏を取り戻して楽しく暮らすと言った小説が多い。こっちもなんだかおもしろがってそんなものをけっこう読んではいるが、実際にそんな女って多いんだろうか。
「その知り合いって一体いくら貸しているのよ。で、相手の男って何者なの」
僕はちょっときつい口調でクレヨンに聞き返したらその口調でクレヨンがちょっと引いたようだった。
「貸した額は300万くらいだそうだけど仕事でもう一段飛躍できるかどうかの瀬戸際でお金が必要とかで500何とかならないかって、・・」
「500って500円じゃないわよね。そんな男いい加減諦めて手を切れって言ってやれば」
知的美人が横から口を出した。クレヨンはそれはずいぶん不満だったようで知的美人をにらんだが何も言わなかった。
「あんたに何とかならないかって聞いてきたの、その女、・・。」
クレヨンは黙って頷いた。
「じゃあ貸してやれば。500万くらいあんたにとっては小遣い程度の額でしょう。何しろあんたんところの金庫は桁が違うんだから」
僕はそう言ったが、いくら金があるとは言ってもそうそう500万からの金を右から左と言うわけにも行かないだろう。
「その相手の男って何をしているの。」
僕が相手の男について聞くとクレヨンは引き気味な様子で「FXとネットショップか何かをやっていると言っていたけど詳しいことは聞いていない」と口を濁した。大体、自分で商売をするには何よりもまず元手を作るべきでそれもしないで女から金を引っ張るなんてもっての外だ。そんなのに碌な奴はいない。僕も随分女とつき合ったが、女に金を無心したことは一度もない。女だけじゃなくて知人や友人に金を無心したこともない。
まあ元手が必要な商売じゃないけれど知り合い同士で金を貸し借りすると甘えが出るのかまず戻ってこないし、付き合いもなくす。もうずいぶん前の話になるが、「当座の金を貸してくれ」と頼まれて貸してやったが、やはり戻ってこなかったし、付き合いもなくした。それから何度か頼まれたこともあるが、「金は貸さない主義だ」と断ってきた。5万、10万の金なら貸すよりもくれてやった方が良い。そう言えば若かったころ当時のキャバクラのようなところで遊び過ぎて出張の旅費を使いこんでしまった知人に「貸してくれ」と頼まれたので「おう、持って行け」とたまたま手元にあった金を渡してやったが、さすがに出張から帰って清算したとかですぐに戻って来た。まあこっちも一緒に遊んだので半分は責任があると思いくれてやるつもりで渡したがくれてやるつもりの金はきちんと返って来た。でも百万単位の金になるとそうもいかないだろうし、クレヨンくらいの年齢の女にとってはほとんど全財産と言ってもいいほどの大金だろう。
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小説3 | 日記
Posted at
2019/11/28 21:55:25
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