2020年03月15日
佐山芳恵再び、・・(^。^)y-.。o○(82)
「この人、人は悪くないんだけどほとんど男のような戦闘系女子で野蛮で口が悪いの。あまり気にしないでね」
クレヨンはそう取り繕ったが、本格派美人は案外落ち着いた様子でビールをちょっと飲んでは先付をつまんでいた。
「皆さんには迷惑をおかけして本当に申し訳ありません。澤本さんにはせっかくの機会を作っていただいたのにこんなことになってしまってお詫びのしようもありません」
僕は居住いを正して本格派美人と向き合った。
「あなたは本当にあの男の面倒を見るつもりなの。まああなたの自由だからあまり言っても仕方がないんだろうけどもうそれなり注ぎ込んでいるんでしょう。この上まだ注ぎ込んでやるつもりなの。そんなことをしていると自分自身が身動き取れなくなるわよ。そのくらいのことは分かるでしょう。」
本格派美人はグラスを取るとビールを一口飲み込んだ。
「あなたは彼が嫌いみたいですね。」
本格派美人は顔を上げると僕をまっすぐに見た。
「ええ、嫌いよ。自分がやりたいことがあれば自分の力でやるべきでしょう。それはね、足りないところを補ってもらう程度ならそれはそれでもいいかもしれないけど男なら命を懸けても自分のやりたいことは自分の力でやるべきでしょう。女の金に頼るなんて以ての外だわ。しかもそうして金を引っ張ってもこれと言って大したことはやっていないんでしょう。そんなのにどうしてあなたが大金を注ぎ込んでやるの。もうあなただって手元にお金はないんでしょう。だから澤本に頼ったんじゃないの。でも銀行って結構シビアだからあなたに金なんか貸しはしないわよ。それよりも澤本自身が融資を申し込んでもせいぜい100万がところ借りられるかどうかよ。それも無理かも。お金ってね、そんなに右から左にどうにでもなるものじゃないの、分かるでしょう。」
本格派美人は下を向いたまま黙っていた。そこに知的美人が口をはさんだ。
「まあそうやって感情的になって正面から否定してしまったら話が進まないでしょう。何が問題でどうすればいいのかその辺を掘り下げて考えてやらないと解決しないわ。お金が正面に大きくクローズアップされているけど実際の問題はあなたたち二人の関係なんでしょう。どうしてそんなにあの子に貢ぐのよ。この人の言うとおり商売をやりたければ自分でやらせればいいじゃない。もうそれなりに支援してやったんでしょう、あなただって。」
本格派美人は下を向いたまま黙っていた。
「いろいろ事情もあるんでしょうけど話してくれれば力になれることもあるかもしれないわ。」
女土方もそれとなく促した。
「ああ、面倒くさいわねえ。そんなことしていたら夜が明けるでしょう。」
未だ腹の虫が収まらない僕がそう言うと全員に「めっ!」と言う顔でにらまれてしまった。仕方がないので手尺でビールを注ぐとぐっと飲み込んで生涯そう何度も食えそうもない超高級そうな料理をバクバク食ってやった。
「大体、あんたみたいな美人がどうしてあんな出来損ないヤンキーみたいなのとくっついたのよ。あんただったら男なんか選り取り見取りでしょうに選りによってあんなできそこないと。何が良いのよ、あんな手合いの、・・。」
僕がそう言うと本格派美人は顔を上げて僕をにらんだ。
「そんなに言わないでください。あの人だっていいところはあるんです。確かにあなたが言うように礼儀を弁えない粗野なところもありますが、やさしいところだってあるんです。」
僕は「しめた」と思った。本格派美人は挑発に乗ってきたようだった。
「だからそのいいところを言ってごらんなさいよ。あんたが惚れたっていうそのいいところを、・・。まさかお床上手なんて言うんじゃないでしょうね」
僕がそう言ったとたんに両側から女土方と知的美人に叩かれた。
「何て下品なことを言うのよ。あなたとは違うのよ」
知的美人がそんなことを言ったが、『男漁りはお前の専売特許だろう。お前にだけはそんなことは言われたくない。僕がいつ男を漁ったんだ。元祖佐山芳恵は知らないが、僕は一度も男なんか漁ったことはない。未だに女は漁るけど、・・』とそう言ってやりたかったが、これも禁句ではある。
「実は、・・私の恥をお話しすることになるんですけど、会社に勤めて何年かして、周囲にちやほやされていい気になってちょっと遊んでいた時期があったんです。その日もちょっと遅くなって終電を逃してしまって『どうしようかな』みたいに駅前で考えていたらミニバンが停まって中からちょっと危ない風情の男の人が3人降りてきて『送ってやる』と絡まれて車に連れ込まれそうになったんです。私も危ないと思って必死に抵抗したんですけど男3人ではどうしようもなく連れ込まれそうになったところにあの人が飛び込んできてその男たちから私を引き離してくれたんです。でもその男たちもそれでおとなしく引き下がるわけもなく車からもう一人降りてきて1対4で殴り合いになって、・・でも相手は4人でとても一人ではかなうはずもなくて本当に袋叩きのようにされてしまって、・・彼は私に何度も『早く逃げろ』と言ってくれたんですけど私がその場から立ち去ってはいけないように思って動けなくて。そしてまたその男たちに車に連れ込まれそうになった時に一人の男が叫び声を上げてうずくまったんです。振り返るとそこには彼が血の付いたナイフを持って立っていて一人の男はお尻を押さえて座り込んでいました。そしてまたにらみ合いになったところに警察が来て、・・。結局彼は傷害とと言うことで逮捕されて、もちろん相手も逮捕されましたけど、・・。結局情状酌量と言うんですか、事情が事情なんで裁判にはならずに済んだんですけど、彼、自衛隊に入りたかったようで、人助けがしたいとかで、・・でも前科があるってことで採用してもらえなくて、・・結局こうなってしまったんですけどその責任は私にあると思うので、できる限り何とかしてあげたいと思うんです」
なるほどな、そう言うことか。そう言うことなら話は早いかもしれない。
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小説3 | 日記
Posted at
2020/03/15 09:59:33
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