2021年07月05日
佐山芳恵再び、‥(^。^)y-.。o○(92)
そこにクレヨンと知的美人が入って来た。
「あら、ずいぶん関係が進んだみたいね」
知的美人がベッドの上で寄り添った僕たちを見てニヤッと笑った。
「そうね、お互いに戦友だからね、私たち。あんたたちは何もしないで震えていただけでしょう」
「それはそうでしょう。あんなばかデカい犬に箒で立ち向かうなんて人間じゃないわ。しかもあの犬に咬みつかれたんでしょう。考えられないわ」
知的美人は首をすくめた。
「私、こいつが好きになっちゃった。みんなに言ってもいいわよ。『佐山芳恵、毛が生えたオオサンショウウオのような大ドラ猫と恋に落ちた』って。体型が違い過ぎて愛を交わすのは無理だけどね」
そう言って僕が笑うと大ドラ公も「グエ」とか鳴いて体を寄せてきた。知的美人のやつ、なんだかんだ言って僕や大ドラ公がバカ犬と戦っているところを録画していたらしい。怖いのなんの言っていてよくもそんな余裕があったものだ。見せてもらったら大ドラ公のやつ恐ろしい顔をしてバカ犬と対峙していた。飼い猫のものなんて生易しいものじゃない。まさに獣の顔だった。犬に嚙みつかれながら箒を振るっている僕も大したものである。そんなことをしていたらあの犬のことで訪ねてきた人がいると呼ばれた。出てみると50代後半と見える中年の男性で犬がけがをさせられたことに文句を言いに来たようだ。
「あんな大型犬をどうして離したんですか。それが原因でしょう」
僕がそう言うと反論を始めた。
「犬が離れたのは確かに申し訳なかったが、だからと言ってあんなケガをさせていいということはないでしょう。その点についてはそれなりのことはしていただきます。場合によっては法的手段を取らせてもらうかもしれないのでご承知を、・・。」
その男性はそんな物騒なことを言う。こっちも頭ごなしに言われて腹が立ったので言い返してやった。
「今回のことはお宅の犬が離れていたのが原因でうちで預かっている猫もけがをさせられたし、私も腕を咬まれてケガをしました。法的手段と言うならこちらも相応の対応をさせていただきます。連絡先をいただきたいのですがよろしいでしょうか。私は、・・」
僕はそう言うと自分の名刺にここの連絡先を書き込んで渡した。相手は名前と連絡先を言ったのでメモしておいた。男が帰ってから申し訳ないとは思ったが金融王に電話をして事の次第を伝えると「ああ、その御仁ならご近所のうるさ型でね。分かりました。猫の飼い主にも連絡しておきます」と言って話が終わった。その後すぐに猫の飼い主から電話があって「ずいぶんご迷惑をおかけしたそうで申し訳ありません。犬に咬まれたと聞きましたが大丈夫でしょうか。向こう様が法的手段を取るというならうちの法務に対応させますので相手方の連絡先を教えてください」と言う。こっちも「分かりました。良しなにお願いします」と言って電話を切った。
それからすぐに大ドラ公の飼い主の会社の法務の何とかいうのから電話があって「証拠になるようなものを残しておいてほしい」と言う。動画があると言うと「それはいい証拠になります。それからあなたの咬まれた時に着ていた衣類とあなたと猫の診断書をもらっておいてください」とか言う。言われたので獣医に電話をして診断書を頼み、この家の主治医さんのところに電話して腕を見てもらい『左前腕挫傷および左手首関節捻挫により2週間の加療を要する見込み』とか言う診断書をもらった。衣類はそのままビニール袋に入れた。そして動画は知的美人に言って何とか言う法務の担当者にメール送信してもらった。翌日会社に出勤するとまたまた大騒ぎになっていた。「佐山芳恵、愛猫とともに大型犬を向こうに回して大乱闘の末に撃退」とか動画が出回っていた。これも知的美人だろうが、まあ事実だからやむを得ないだろう。そうこうしているうちに社長に呼ばれた。きっと社長もこの動画を見たんだろう。
「佐山さん、大変だったなあ。昨日あっちの社長から電話があって話は聞いたし、さっき動画も見た。大の男も真っ青な大活劇だけどけがは大丈夫なのか。」
社長がそう言うので僕は「ちょっと赤くなった程度で大丈夫です」と答えた。
「佐山さん、あなたが女らしいことを見せたのは後にも先にもあの北海道の一晩だけだなあ。ところであの猫、あなたの愛猫とか言うけど僕よりも上なのか」
社長は笑いながら取りようによってはかなり危ないことを言った。
「はい、今回の一件であのドラ猫を好きになりまして、・・。何と言っても戦友ですから。でも社長とは比べ物になりません。大体、あんな毛の生えたオオサンショウウオのようなドラ猫と社長を比べるなんてとんでもないことです」
僕もけっこう危ない返事をすると社長は「これは参ったな。また熱が上がりそうだ」と言って笑った。
この騒動の結果は犬公の飼い主がメガ企業の法務に脅され、いやその不利を説得されて、僕とドラ公の治療費とそれから若干の慰謝料を支払うことで決着したが、直接謝罪には来なかった。これ以上ごたごたしても仕方がないので金は法務の弁護士から受け取ったが、その金はドラ公の好きな餌を買ってやった。ドラ公は何もわからずにその餌をバクバク食って満足の様子だった。
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小説3 | 日記
Posted at
2021/07/05 01:07:24
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