かつて大会社を舞台にしたドラマや映画、漫画などでときどき見られた設定に、お掃除のおじいさん(おばあさん)だと思っていたら、その会社で一番偉い人(創業者や社長など)が、社員の本音を探るために清掃員のふりをしていた、というものがあった。いま現実に、そういった隠密行動をとる社長はいないだろうが、トイレや更衣室の中で社員の本音が現れやすいのは変わらず、今では契約の清掃スタッフに本音がぶつけられている。ライターの森鷹久氏が、ハラスメントに直面する真面目に仕事に取り組む清掃スタッフたちの悩みをレポートする。
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「仕事だと割り切ろうと思っても、どうしても納得できない。余り言いたくありませんが、セクハラにパワハラ、年齢に対するハラスメント、そのすべてを受けていると思っています」
時折深く息を吐きつつ、自身が置かれた状況を語るのは、都内のビルメンテナンス系会社で清掃員として働く倉田良子さん(仮名・50代)。以前は、都内繁華街にある飲食店の厨房で長く働いていたが、コロナ禍のあおりで店は閉店。転職を余儀なくされ、現在の会社でパートとして働くようになったが、最初に命じられたのは、都内の大手企業本社ビルに常駐し、館内の清掃全般を行う業務だった。
「上司は開口一番“おばちゃんだから男子トイレ頼むね”と言ってきたんです。確かに業務の中にはトイレの清掃もあって、女性トイレも男性トイレも、なぜかすべて女性スタッフがやることになっていました。そして、男子トイレの業務は、若い女性はできるだけ入らない、そういう決まりでした」(倉田さん)
男性だから女性だからといって、与えられる業務に差が出てはならないが、確かに女性トイレの清掃員が男性だと抵抗があるだろう。でも、女性清掃員が男子トイレに入るのは、逆のケースに比べると許容されていることが多い。そして、現場の女性スタッフを最も苦しめているのが、トイレの男性利用者による、女性スタッフへの言動だ。
「トイレをされているときに、私たちが横で作業をしていると、こちらをチラチラ見たり、見せつけるようにチャックを下ろしたり、女性の前で用を足すなんて、と笑いながら入ってくる人もいます。こちらはあくまで仕事として、下を向いて“失礼します”と、黙々作業をするだけ。みっともなくて恥ずかしくて悔しくて…」(倉田さん)
倉田さんと同じ部署には男性スタッフもいるが、なぜか喫煙所や給湯室、トイレ掃除はすべて女性スタッフの業務として固定されている。さらに倉田さんが驚いたのは、女性スタッフの全員がそのことを不満に思っているのに、誰も言い出さずに我慢していること。年齢の近い同僚も「本音は嫌、悔しい」と言うが、仕事だから仕方がないと皆あきらめているのだという。
また、人手不足のためなのか、稀に、若い女性スタッフが、男性トイレの清掃をするという事態も起きている。倉田さんと同じ会社に所属し、神奈川県内にある大規模商業施設に常駐する脇山佳奈さん(仮名・20代)は、ある経験をして以降、恐怖で男子トイレの清掃ができなくなった。
「作業をしていたところ、若い男性数人が入ってきて用を足しながら“おばさんに見られても興奮しない”等と言って笑いながら、こちらを見ていました。思わず顔を上げて、男性達の方を見てしまったんです。そしたら、意外と若いじゃん、得したな、と更に笑いが起きました」(脇山さん)
馬鹿にされ、そしてセクハラめいた言動まで投げかけられ、恐怖と恥ずかしさで足がすくんだと振り返る脇山さん。その男性達は、施設内に入る大手企業の支店に所属する営業社員らであることも知っている。普段は忙しそうに、そしてまじめそうにバリバリ働いている彼らが、トイレの中ではあのように変貌してしまうのかと思うと、怒りより悲しさがこみ上げてきたと話す。こうした傾向は、温泉旅館や健康ランド、今はやりのサウナ施設でも散見されるようだ。
先日 、こうした問題について「男性だって恥ずかしい」のだと、あるテレビ局が報じた。報じる発端となった意見をテレビ局に投稿したのは男子高校生だという事だったが、SNS上でこの記事が取りあげられある程度盛り上がってはいたものの、現場でつらい思いをしている女性スタッフに言及するものはほぼ見当たらない。
もちろん、脇山さんや前出・倉田さんの所属する会社でも、そうした女性スタッフの意見は把握しているのだろうが、別の大手清掃会社幹部、ビルメンテナンス会社関係者に話を聞いても「理屈はそうだが現実はそうならない」と、誰もが業務のやりくりの難しさを指摘する。そして、現実として男性スタッフと女性スタッフが請け負う仕事の性質はどうしても違う、と言うのも同じだ。
しかし、その変えがたい現実とは、本当に変えられないものなのだろうか。変えられない、という思い込みが、仕事がしづらいと感じる人々を次々に生み出している。清掃会社も客あっての商売である以上、 理不尽だと思いつつも、取引先の常駐企業に環境改善を申し入れるのが難しいと、自ら忖度してしまっているような状況ではないのか。ハラスメントの加害者となっている事実は、客である大手企業が知っておくべき現実だ。おそらく、その会社もその主旨に賛同し目標達成を株主や社会へ向けて公表しているであろうSDGs(持続可能な社会)の実現を目指すなら、把握しておくべき事実だろう。取り組みづらい現実は実際にあるのだろうが、様々な被害を誘発する可能性をはらんだ、ぜひとも解決しなければならない問題であることは間違いない。
最近結構若い女性が男子トイレの清掃をしている。入ると掃除しているのでやめて出ようかと思うと「かまいませんから使ってください」と言われるが、そういわれてもなんだか落ち着かない。できるだけ離れたところでそっと用を足して「どうも」と言って出てくる。こっちも気まずいが向こうも気まずいだろう。そんなところでセクハラめいたとことをするなどまさに武士の情けを知らない不届き千万な振舞ではある。できれば清掃中で使用禁止にしてくれた方がいいのだが、まあ使わせてもらえるなら相手を尊重して使うべきだろう。大昔は本当に年配の女性が掃除をしていて「ああ、いいよ、使いな」みたいなところがあってこっちが恥ずかしかったが、そういう場面でセクハラのようなことをするのが香川照之みたいなことになるんだろう。相手に対する配慮はどんな場合も必要だろう。他人に対する優しさを忘れないようにしたいものではある、・・(^。^)y-.。o○。
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Posted at
2022/09/03 23:10:51