岸田文雄首相は16日夜、国家安全保障戦略など「安保3文書」を閣議決定したことを受け、首相官邸で記者会見した。3文書は、敵ミサイル拠点などへの打撃力を持つことで攻撃を躊躇(ちゅうちょ)させる「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有を明記するなど、戦後の安保政策を大きく転換する内容となった。「増税ありきの財源論」や「首相の説明不足」などへの批判もあるが、日本を取り巻く安全保障環境の悪化を受けた「防衛力強化」は避けられない。同盟国・米国などが高く評価する一方、中国は反発したのか空母「遼寧」など艦艇6隻を沖縄周辺に送り込んできた。
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「わが国の周辺国、地域において、核・ミサイル能力の強化、あるいは急激な軍備増強、力による一方的な現状変更の試みなどの動きが一層、顕著になっている」「現在の自衛隊の能力で、わが国に対する脅威を抑止できるか」「率直に申し上げて、現状は十分ではない」「私は首相として国民の命、暮らし、事業を守るために、防衛力を抜本強化していく」
岸田首相は注目の記者会見で、こう決意を語った。「安保3文書」は、日本が「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している」との認識を示したうえで、中国や北朝鮮を念頭に「力による一方的な現状変更の圧力が高まっている」と指摘した。
共産党一党独裁のもと、軍事的覇権拡大を進める中国の動向を「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と記した。
「反撃能力」保有をはじめとする「防衛力強化の重要性」を訴え、一連の施策が「安全保障政策を実践面から大きく転換する」とも強調した。具体的には、米国製巡航ミサイル「トマホーク」など、複数の長射程ミサイルを順次配備する。宇宙・サイバー・電磁波などの新たな領域と陸海空を有機的に融合する「多次元統合防衛力」を構築する。自衛隊では長く予算不足を強いられてきたため、弾薬・誘導弾が必要数量に足りていないうえ、戦闘機などが、他の機体から部品を外して転用する「共食い修理」が続けられてきた。今回、こうした状況も解消する。
来年度から5年間の防衛力整備経費を約43兆円と定め、インフラ整備など防衛力を補完する予算を含め、2027年度に「対GDP(国内総生産)比2%」に達することを目指すとした。防衛費の財源については、安倍晋三元首相が日本経済への打撃を考慮して提示していた「防衛国債」を排除し、財務省の筋書きなのか「増税」方針を強行する構えだ。防衛力には力強い経済が不可欠であり、自民党安倍派を中心に反発は続いている。それを意識したのか、次のようにも語った。
「安倍政権において成立した安全保障関連法によって、いかなる事態においても切れ目なく対応できる態勢がすでに法律的、あるいは理論的に整っているが、今回、新たな3文書を取りまとめることで、実践面からも安全保障体制を強化することとなる」
日本の決意と覚悟が込められた「安保3文書」を、米国は歓迎した。ジョー・バイデン米大統領は16日、ツイッターに「(日米同盟は)自由で開かれたインド太平洋の礎石であり、日本の貢献を歓迎する」と投稿した。ジェイク・サリバン大統領補佐官も同日、「日本は歴史的な一歩を踏み出した」とする声明を発表した。
渡部悦和氏が懸念「いまだに非核三原則」
一方、中国外務省の汪文斌報道官は16日の記者会見で、「中国への中傷に断固として反対する」「アジア近隣国の安保上の懸念を尊重し、軍事、安保分野で言動を慎むよう改めて促す」などと語った。自国の異常な軍備増強を棚に上げた暴言というしかない。さらに、中国海軍の空母「遼寧」と、ミサイル駆逐艦3隻、フリゲート艦1隻、高速戦闘支援艦1隻の計6隻の艦艇が16日、沖縄本島と宮古島の間を南下して東シナ海から太平洋に航行した。防衛省統合幕僚監部が同日発表した。「安保3文書」への軍事的威嚇のようだ。
今回の「安保3文書」をどう見るか。
元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は「画期的な内容だ。NATO(北大西洋条約機構)並みの『防衛費のGDP比2%』の目標を明記したことで、実質的に防衛戦略の大転換となった。『反撃能力』も明記し、長射程ミサイルの順次配備など具体的整備と予算を確保したことも大きな前進だ」と評価する。
ただ、懸念される点もあるという。渡部氏は「ロシアのウクライナ侵攻では『核抑止』が重要なポイントと認識されたが、いまだに『非核三原則を維持』という。『専守防衛の堅持』も(日本の国土が戦場になることを意味するが)、長年の抑制的な安全保障政策の根本を変えられなかった。防衛費増額の財源も『国債発行』が通常の考え方だと思う。増税では日本経済の成長を抑制する。経済と安全保障は一体不可分であるはずだ」と語った。大きな決断をした岸田首相だが、問題は山積している。
今回の防衛力増強については米国の強い要請があったんだろう。日本に対して大規模侵攻を企図できる国は中ロなどにその力はなく、強いて挙げれば米国くらいのものだが、中国は台湾侵攻に併せて先島諸島に侵攻、占領する可能性は高い。そうした有事にいちいち米国に依存されては米国も欧州、ウクライナで手一杯で仮に台湾有事には台湾の支援で日本まで手が回らないだろう。
「台湾有事の際に米国は台湾支援で手一杯で日本まで手が回らない。日本は世界第3位の経済規模を持った国家なのだからある程度の抑止力、反撃力を装備して第一義的には日本のことは日本独自で対応してほしい」
と言うのが米国の本音であり、また日本に対する強い要望なんだろう。
日本もまずは補給継戦能力の強化や施設の抗堪性の強化、隊員の処遇の向上などが第一だろう。そして反撃能力などと言っているが、要するに抑止力だろう。日本が何千発と言う長距離ミサイルを保有することが周辺国にとって安穏としていられるはずもない。中国が声高に日本を非難して艦隊などを派遣して威迫するのは「嫌なことはやめろ」と言っているようなものだ。だから金をかける効果はあるだろう。
ただ日本は太平洋戦争当時の戦略戦術に基づいた「専守防衛」を書き改めるべきだろう。今の専守防衛とは我が国に敵が攻撃をかけてきて被害が生じないと反撃ができない。「開戦即本土決戦」になってしまう。長距離兵器や無人兵器、サイバー攻撃などが一般化している現在では敵はできるだけ遠方で撃破するのが鉄則だ。我が国に侵攻しようとする船団が着上陸して戦闘行為を始めるまでじっと待っているなんて愚の骨頂だろう。
防衛力と言うのは戦争をするためではなくてその力で戦争を抑止するためのものである。戦闘を開始するのは万策尽きた最後の最後の手段ではある。ただやるのであれば最も効果的に敵を撃破できる方法を考えるべきだろう。お上はなぜ今防衛力の増強が必要なのか、‥は言えないか。せめて防衛力は戦争を抑止するためのものであるが、万策尽きたときは速やかに敵を撃破できるように体制を整える、‥くらいはしっかり宣言すべきだろう、・・(^_-)-☆。
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2022/12/17 21:45:25