尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件のビデオがインターネット上に流出した問題は5日、政府が最重要課題と位置付ける10年度補正予算案の審議に微妙な影を落としつつある。与党は「ビデオと補正予算は別問題」として、8日の衆院予算委員会で補正予算案を審議入りさせる考えだが、野党はビデオの公開拡大を求めて与党を揺さぶる構え。政府はビデオの公開拡大はしない方針だが、野党に付け入るすきを与えた政府の甘い情報管理に、与党内からも不満が出ている。
与野党は5日、衆院予算委員会の理事懇談会などを断続的に開き、ビデオ問題への対応を協議。自民党の塩崎恭久氏は「ビデオの公開なくして委員会審議に入るべきではない」と述べ、理事らが1日に視聴したビデオ映像の公開拡大を主張した。与党側は公開に難色を示し、最終的に8日の予算委開会前に開かれる理事会に海上保安庁の鈴木久泰長官を呼び、流出経緯の説明を受けることで折り合った。ただ、自民党の逢沢一郎国対委員長は5日の記者会見で「(調査が)十分でないなら、予算審議に大きな影響が及ぶ」と、政府・与党をけん制した。
政府は中国側から流出問題への「憂慮の意」が伝えられたこともあり、公開対象の拡大は避けたい考え。仙谷由人官房長官は同日の記者会見で、公開しない場合に野党が審議を拒否する可能性を問われ「どう論理的に関係あるのかよく分からない」と不快感をあらわにした。だが、与野党は1日のビデオ視聴の際、日中関係への影響を懸念する政府側の意向を受け、対象を衆参の予算委理事ら約30人に限定した。今回の流出問題でこうした配慮が意味をなさなくなっただけに、衆院予算委の中井洽(ひろし)委員長(民主)は記者会見で「制限的な視聴を求めながら、当局から流出したなら信頼をいっぺんに失う」と不満を漏らした。
日本を衝撃が駆け巡った。中国漁船衝突の映像がネットに流れた。映像を見る限り本物だろう。誰が何の目的で流したのかは分からないが、この時期に、警察の一件といい、今回の件といい、これが義憤に駆られた個人の行為とは考えにくい。国家の国際社会における立場や、公安にもかかわる、こうした情報が次々に流れ出すということは裏に何らかの力が働いているのではないかと思う。このようなことが起こって一番利益を得るのは誰だろう。
事実が明らかになったことは悪いことではない。しかし、成熟した法治国家としてこのような方法で情報が流出することは決して好ましいこととは言えない。そもそも政府が早期に事実は事実として映像を公開しておけばこんなことは起こらなかった。今回の尖閣諸島の中国漁船による公務執行妨害事件では、現場は法に則って極めて適切に対応した。何ら問題はない。そして本来それをしっかりと認証して正当な行為であることを広く国際社会に表明すべきであった政府はその役割を真に適切に果し得たのだろうか。
Posted at 2010/11/05 23:24:09 | |
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