日本政府は北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記の死去に備え、朝鮮労働党による独裁体制の崩壊や軍部の暴発的な軍事行動、朝鮮半島の混乱に伴う大量の難民発生などを想定した危機管理体制をとってきた。しかし、19日は北朝鮮の「特別放送」があると知りながら野田佳彦首相が街頭演説に向かうなど情報収集に手間取り、国内の治安を担当する山岡賢次国家公安委員長は午後1時からの安全保障会議に遅刻。北朝鮮側の不穏な動きは表面化していないものの、危機管理の甘さも露呈した。
◇首相官邸
北朝鮮は19日午前、特別放送を正午から行うと発表。訪米中の玄葉光一郎外相は「(金日成国家主席が死亡した際に特別放送があった)過去の経緯から、そういうこと(死去)もありえるのではないかということだった」と述べ、外務省から死去も想定した報告を受けたと説明した。
だが、首相は特別放送の内容を確認しないまま19日午前11時59分、就任後初めての街頭演説を東京・新橋で行うため「遺漏なきように」と秘書官に言い残して官邸の執務室を出発。首相秘書官が午後0時3分に金総書記の死去を首相に連絡し、藤村修官房長官からも同5分に「戻ってください」と電話があったことから、首相は街頭演説を取りやめ、同9分、官邸に戻った。
外務省は19日午前から、北朝鮮の重大放送の内容に関し米国などと連絡を取り合っていた。しかし、死去情報は入らず、藤村長官は同日の記者会見で「米国もそのようだが、北朝鮮の放送によってのみ確認されたというのが事実だ」と説明。「あらゆる想定をした」とも語ったが、死去の可能性を重視していたなら、首相が街頭演説に向かうことはなかったはずだ。
首相は午後0時10分に(1)北朝鮮の今後の動向について情報収集態勢を強化する(2)米国、韓国、中国など関係国と緊密に情報共有する(3)不測の事態に備え万全の態勢をとる--の3点を指示。午後1時からの安保会議は首相が関係閣僚に「十分情報を集め、警戒態勢を整えてほしい」と指示し、約10分で終了した。山岡氏は東京を離れていて安保会議に間に合わなかった。
◇防衛庁
一川保夫防衛相は安保会議に先立ち、省内で折木良一統合幕僚長ら自衛隊幹部を招集。情報収集に全力を挙げ、警戒監視に万全を期すよう指示した。防衛省が最も警戒するのが、金正恩氏への権力移譲に伴う混乱。(1)日米などとの対立を演出して国民の統制を図るため弾道ミサイルを発射(2)軍の統制が利かなくなり、強硬派が韓国軍と衝突(3)大量の難民が日本海を越えて日本国内に流入(4)国内に侵入・潜伏する工作員がテロを実行--などの危機シナリオを想定しており、防衛省幹部は「北朝鮮国内が混乱すれば何が起きてもおかしくない」と情勢を注視する。
◇警察庁
警察庁は西村泰彦警備局長を本部長とする「警備対策本部」を設置し、重要施設の警備や情報収集を本格化している。同庁はこれまで、北朝鮮の動向について、政治体制の維持を目的に金正恩氏の業績の積み上げが進められていると分析。「先軍政治の継承者」とのイメージづくりを背景に、軍や工作機関の活動が活発化する可能性も否定できないとみて警戒を続けてきた。こうした従来の態勢に加え、今後、予期せぬ事態に備えた対応も求められることになる。警察幹部は「情勢がどう変化するかは何ともいえないが、国内の治安に万全を期すことに変わりはない」と話した。
◇海上保安庁
海上保安庁も対策本部を設置。日本海などに展開しているすべての巡視船・巡視艇に沿岸の監視や警戒強化を指示した。全国の原発など沿岸部の重要施設への警戒を強めるほか、当面は沖合のパトロールの頻度を増やす▽情報収集を北朝鮮関連に集中させる--などで対処する方針。
常識では先が読めない国だからこの先どんなことが起こるのか予測は難しいが、新たな体制になって世界の情勢を少しは読んで常識的な対応をするようになることを望む。さまざまな勢力が自己の立場を有利にしようと跋扈している国家なので先が読めないが、考えてみればそれは日本も同じことか。
いずれにしても少しでも常識的な対応をしてくれることを望む。それにしてもどうして民主党政権下でこうも重大事件ばかり起こるのだろうか。神は愚かな政党に政権を与えたことにお怒りなのか、国家の緊急事態に己や所属する政党のために街頭演説に出かけてしまう総理大臣、相も変わらず危機感のかけらもなく安全保障会議に遅刻する国家公安委員長、これでは神でなくとも怒りたくなるかもしれない。今回もこの国の命運は現場力に委ねられるようだ。
それにしても独裁の限りを尽くした金正日だが、統治者としての評価はともかく個人としては死と言うものはやはり厳粛なものだ。その意味で金正日氏の死亡に哀悼の意を表したい。
Posted at 2011/12/19 23:28:48 | |
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