裁判所の令状なく捜査対象者の車両にGPS(全地球測位システム)発信器を取り付けた捜査手法を、大阪地裁が「違法」と判断した連続窃盗事件の控訴審判決が2日、大阪高裁であった。横田信之裁判長は、今回の大阪府警のGPS捜査について「重大な違法とは言えない」として、1審とは逆の判断を示した。ただ、懲役5年6月とした1審判決は支持し、被告側の控訴を棄却した。GPS捜査を巡る高裁の判断は初めて。
大阪府門真市の自営業、岩切勝志被告(44)は知人らと共謀し2012~13年、大阪など6府県で事務所荒らしなどを繰り返し、計約416万円相当の物品を盗んだ窃盗などの罪で起訴された。
昨年6月の地裁決定は、GPS捜査は令状が必要な「強制処分」に当たると判断。約半年にわたって被告らの車やバイク計19台に無断で発信器を取り付け、行動を監視した大阪府警の捜査を「プライバシーを侵害し、違法」とした。そして、捜査資料の一部を証拠から外した。
高裁判決は、犯罪の疑いをかけられた被告らが夜間に広く移動し、警察の捜査を警戒していた状況などを踏まえ、「尾行、張り込みだけでなくGPS捜査の必要性が認められる状況だった」と判断し、やむをえない事情があったとした。
仮にGPS捜査が令状の必要な強制処分だとしても、「令状の要件は満たしていたと考えられる。当時、GPS捜査を強制処分とする司法判断は定着していなかった」と指摘。その上で「警察官らに令状主義を逸脱する意図があったとは認めがたい」とした。
また、警察官らが機械的に捜査対象車両の位置情報を取得し、過去の位置情報を網羅的に把握した事実は認められず、「プライバシーの侵害の程度は必ずしも大きくない」と判断。ただ、令状なしで捜査に利用したことについて、「違法と解する余地がないわけではない。今回の事件についてみる限り、重大な違法があったとまでは言えない」と言及した。
車両を利用して広域にわたって犯行を繰り返す窃盗団に、「何がプライバシーの侵害だ。いい加減にしろよ」と思うが、法はこうした犯罪者にも平等に権利を認めているのでなかなか厄介だ。また、捜査だからと言って何でも認めていると際限がなくなり、法の精神を逸脱することもあるのでどこかで歯止めをかけないといけない。そのさじ加減はなかなか難しい。今はGPSだの、防犯カメラだの、Nシステムだの、スマホの位置情報だのと個人の権利と公共の安全を秤にかけなければいけない場合が多い。全般に捜査を取り巻く環境は厳しさを増しているので警察もなかなか大変だろう。今回の判決は警察側に有利な判決だったことから警察もやや安堵しているだろう。
Posted at 2016/03/02 18:02:16 | |
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