■規制委新基準も批判
関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の運転差し止めの仮処分を命じた大津地裁は、耐震性能や津波に対する安全性能、過酷事故対策など7つの大きな争点について言及した。しかし、多くは関電の説明が「不十分だ」と指摘するだけで、科学的根拠に乏しい内容となっている。高浜を「合格」とした原子力規制委員会に対しても「非常に不安を覚える」と批判するものの、決定文に科学的な反証は見当たらない。
今回の仮処分の主要な争点となったのは、原発事故の後、電力会社に最も厳しいハードルが課された「地震や津波への対策」だ。規制委が定めた原発の新規制基準では、原発ごとに想定される最大の揺れ(基準地震動)を策定し、それに基づいて機器や設備の耐震設計をするよう求めている。
大津地裁の決定は、関電の周辺活断層の調査について「徹底的に行われたわけではない」とし、耐震評価も「安全余裕をとったといえるものではない」と断じた。しかし、根拠は不明で、関電の説明の不十分さを指摘した上で「十分な資料が提供されていない」とするだけだ。
さらに「津波に対する安全性能」についての記述は9行にとどまり、「大規模な津波が発生したとは考えられないとまでいってよいか、疑問なしとしない」と曖昧な言葉が並ぶ。
これ以外にも、裁判所側の説明の放棄は随所に見られる。地裁は「(規制委に)代わって判断すべきであると考えるものでもない」としながらも、規制委の新基準の合理性について疑問を投げかけた。
例えば新基準は、電力会社に多様で大幅な過酷事故対策を求めている。具体的には、複数の空冷式非常用発電装置や、電源車の設置などだ。ところが、地裁は新基準が求めるこれらの備えについて「このような備えで十分であるとの社会一般の合意が形成されたといってよいか、躊躇(ちゅうちょ)せざるを得ない」と指摘した。
新基準は福島の事故を教訓に、国際的な基準を参考にして、広く国民の意見を反映した上で策定された。その根底には「安全に終わりはない」という安全神話との決別がある。
そのような策定過程を無視して、「躊躇」という感想めいた言葉で片付けることが合理的といえるだろうか。仮処分とはいえ、裁判所の判断には緻密な論理と精密な論拠が要求される。
原発事故が発生した場合の被害の深刻さを考えると安全対策はこれで良いと言うものはない。まして自然災害などは予想不可能でそれに対してどう備えるかと言われても上限はない。一方で、エネルギー政策という国家の根幹に係わる事項を一部の市民と専門家ではない一裁判官の心証に委ねてもいいのかという問題も存在する。電力自由化で様々な業者が電力供給に参入するが、原発は今後かなり厳しいものがある。新規参入業者にしても安定供給が出来るかどうかは未知数で、既存の電力会社も新たな電源開発を推進する必要がある。電力供給もこの先混乱するのではないだろうか。でも、福島第一原発の事故の原因は電源を全て喪失したことによるなら電源を多重化するとともに非常用電源装置を免震防水シェルターなど頑丈な容器に収納するなど方法はあると思うが、・・。
Posted at 2016/03/10 15:14:26 | |
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