米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、沖縄県が代執行訴訟の和解に従い国の是正指示を不服として国地方係争処理委員会に審査を申し出たことで、国と県の争いが再び法廷に持ち込まれることが濃厚となった。政府が4日、抵抗の強かった移設工事中断を含む和解を受け入れた背景には、回り道をしてでも司法による“最終決着”を目指した安倍晋三首相の判断があった。(小川真由美)
◆菅長官も「驚いた」
「何かいいアイデアを考えてほしい」
首相は2月2日、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)が1月29日に和解案を示したことを受け、官邸に外務、防衛、法務各省の幹部を集めこう指示した。
首相は「全体的な状況を知りたい」と各省の報告を聴取。和解案を即刻拒否する意見もあったが首相は新たな道を探ることにした。
福岡高裁が示した和解案は、辺野古移設を前提に国が基地返還時期などを米国と交渉する根本案と、国が工事を中断し再協議する暫定案の2つだった。
そもそも福岡高裁による和解案は政府にとって想定外。普段は危機管理で冷静な対応が目立つ菅義偉(すが・よしひで)官房長官も「驚いた」と周囲に漏らした。「裁判なら99%勝つ」(政府高官)と強い自信があったからだ。
◆負けるリスク現実味
過信は裏目に出た。法曹関係者は、国が代執行訴訟に出た手法を「あらゆる法的措置を尽くした後の最終手段で強引」と指摘。高裁の和解案で残り1%の「負けるリスク」(政府筋)が現実味を帯び始めた。
首相が和解案への対応で最も懸念したのは「国の対応が世論に悪く映ること」(関係者)だった。敗訴すれば政権へのダメージは大きく、強引な印象は夏の参院選への悪影響にもつながりかねない。
法務省は、環境対策や土砂運搬などの工事過程で「訴訟が10年続く可能性もゼロではない」などと首相に進言した。
◆少数スタッフで調整
2月下旬。首相は、菅氏に「急がば回れだ」と、政府としての和解策を提示するよう指示した。
「首相がおっしゃるなら」
これまで強気の交渉姿勢だった菅氏は一瞬ためらったが、首相の力強い言葉にうなずいた。県との和解に応じれば、3つの訴訟が取り下げられ、翁長雄志県知事の埋め立て承認取り消しの是非を争う訴訟に一本化されるというメリットがあった。
菅氏は自室に岸田文雄外相を呼び、首相の考えを伝達。外務省の森健良北米局長を米ワシントンに派遣し米政府に内々に説明するよう指示した。中谷元(げん)防衛相にも首相方針を伝え箝口(かんこう)令を敷いた。首相と菅氏はごく少数のスタッフで調整し今月4日の和解を導いた。
ただ、和解条項は法的拘束力がない“紳士協定”にすぎない。翁長氏の出方次第では辺野古移設が停滞する懸念もくすぶる。
普天間が危険だというならいろいろ問題はあるだろうが、20年もかかって、「これしかない」と言う辺野古に移設するのが、ベストではないにしろ、やむを得ない良策だろう。何時までも角を突き合わせていても状況は変わらない。事故が起こって死傷者が出てからでは遅い。和解策を受け入れたならよく話し合って合意に至るべきだろう。
Posted at 2016/03/15 15:27:36 | |
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