三菱自工による燃費不正問題で、メディアもユーザーのその実態がよく分からない「惰行法」。「惰行」とは、「惰性で走行」することを指す。
なかには、くねくねと曲がる「蛇行法」と思っているユーザーもいるほど、世の中で情報が錯そうしている状況だ。そんな中、「惰行法」を使った、走行抵抗に関する実験のデモンストレーションが行われた。
通常、この実験は自動車メーカーが行ない、そのデータを国土交通省が所管する交通安全環境研究所(通称:交通研)の自動車認証審査部に提出する。その過程で、自動車メーカーはジャーナリストを含めて、こうした実験を外部に公開することはまずない。
さらに、交通研も「自動車メーカーを信頼している」ため、いままで自動車メーカーが行なう同実験に立ち会うことはなかったという。
実験が行われたのは、埼玉県の北部、熊谷市の郊外。近隣には、スバルの主力工場がある群馬県太田市や、ホンダの寄居工場があり、自動車関連の企業も多い地域である。
使用されたコースは、全長1200m×全幅60mの総合試験路。約1000mの直線路の両サイドにバンク路があるレイアウトだ。
車両は、三菱自工が持ち込んだ「ekカスタム」。そこに、交通研が、ルーフ部分に測定専用のGPSアンテナ、車内にはデジタル車速計、パソコン、そして車速変化とその時間をプロットするグラフを表示するディスプレイを取り付けた。
デモンストレーションを行なうにあたって、交通研の自動車認証審査部から「惰行法のやり方」について詳しい説明があった。
それによると、計測は90km/hから10km/h刻みに20km/hまで、8つの「指定速度」に対して行なう。各指定速度に対して、+5km/hから-5km/hまでの10km/hが何秒かかるかを計測する。
こう説明しても分かりづらいと思うが、例えば指定速度70km/hならば、75km/hから65km/hまで速度が落ちる時間を計るということだ。
そう聞いても、まだよく分からない人が多いと思う。今回の現場でも、テレビ局や新聞社の記者らから「もう一度説明して欲しい」と何度も要望が出たほどだ。
そして、実際にデモンストレーションが始まった。
8つの指定速度を一気にテストすることは事実上不可能
最初の指定速度90km/hに対応するため、バンクで加速した「ekカスタム」が直線路に戻って来て、100km/h超の時点でギアをニュートラルに入れた。
そして、95km/hに達した時点で、後席にいる担当者が計測スイッチを押す。さらに減速して、85km/hで計測スイッチを押す。この時点で、指定速度90km/hでの「惰行時間」が算出できた。
「ekカスタム」はそのまま惰行し、75km/h、65km/hと計測スイッチを押していくことで、指定速度80km/hと70km/hの「惰行時間」が取れた。
ただし、惰行が可能な直線路では、100km/h超で惰行を始めると、60km/hあたりで直線路が終わってしまう。
そのため、指定速度60km/hに対応するためには、初速を70km/h超で再度走り出す必要がある。その場合でも、最も低い指定速度20km/hに必要な15km/hまで惰行することができない。
結局、直線路1km程度のテストコースでは、90~20km/hまでの8つの指定速度を一気に計測することができないことが分かった。
国の規定では、8つの指定速度に対する計測を、「いくつに分けて良いのか」という規定はなく、自動車メーカー側の判断で決まる。
以上のような、8つの指定速度に対する惰行時間の計測は、直線路で(最低で)往路3回、(最低で)復路3回の計6回行い、その平均値をとる。
往復する理由は、風の影響を考慮したもの。規定では、直線路の方向に毎秒5m以下、直線路の垂直方向に毎秒2m以下としている。
こうして得られた8つの平均惰行時間から、走行抵抗を求める。
その計算式は、抵抗値=(1.035×試験車重量)÷(0.36×平均惰行時間)
これを、X軸に「速度」、Y軸に「走行抵抗値」とするグラフ化する。
その結果、(空気抵抗)×(速度の二乗)+ころがり抵抗、を導き出す。
こうした値を、シャーシダイナモに入力し、JC08モードでの実験を行うという流れだ。
菱自が発言した「高速惰行法」なんて、存在しない!?
さて、一連の三菱燃費不正の報道で、「高速惰行法」という言葉が出てくる。なぜなら、これを三菱自工が会見で使っているからだ。
ところが、交通研の自動車認証審査部では「高速惰行法などという言葉はない。今回の報道で初めて聞いた」という。
つまり、これは三菱自工の社内用語、または一部の自動車業界関係者が使う俗語だというのだ。
また、アメリカで行われている惰行時間の測定試験は、「ダウンコースト・メソッド」が正式名称で、直訳すれば「惰行法」であり、高速を意味する「ハイスピード」は含まれていない。
アメリカの「惰行法」では、初速が80mph(128km/h)であり、日本の最高指定速度90km/hよりは「高速」と言えなくもないが…。
こうした用語の定義がどうであれ、交通研による三菱車を対象とした「惰行法」による試験。
そこから得られた走行抵抗によるシャーシダイナモ試験の結果は、国土交通省が6月末に発表を予定している「取りまとめ」のなかで明らかになる。
説明されても訳の分からない方法で普通に走ったら出せもしない燃費を出して、「燃費が良いの、悪いの」とにぎやかなことだ。国土交通省と自動車メーカーの内輪受けのようなものだろう。要するに「慣行法」で車両の固有抵抗を算出してそれを数値化したものをシャシダイナモの抵抗値として燃費を算出するんだろう。そんなものにエコ減税などとご褒美のようなものをつけて、実際どの程度エコになっているんだ。1トンのものを動かすエネルギーは原動機がどうあれ、さほどは変わらないだろう。そんなお役所数値は止めて実際に市街地、高速、山岳路とコースと距離を決めてそのコースを一定回数走行させて平均値を出したらどうだろう。三菱の軽と他社の軽をいろいろな人間に運転させたら燃費が逆転することもあり得るだろう。エコだ、エコだと言うが、電気自動車もその電気を作るには二酸化炭素を排出する。燃料電池車も水素を作るために莫大な電力が必要だ。燃費に一番効くのは運転の仕方だろう。三菱自動車は最も責められるべきは顧客を裏切ったことだが、その罰は売り上げの低下で受けているだろう。最近の燃費信仰にはなかなか深いものがあるが、燃費を良くしたいなら運転の腕を磨いて優しい運転をすることだろう。
Posted at 2016/05/02 23:04:20 | |
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