米大統領選の共和党指名争いで、不動産王のドナルド・トランプ氏(69)が指名獲得を確実にした。民主党はヒラリー・クリントン前国務長官(68)の指名が濃厚で、11月の本選は、両氏が激突する見通しとなった。トランプ氏は、大統領に就任すれば、米軍が日本防衛のために支出している国防費の全額負担を求める考えを示したが、東アジアは大丈夫なのか。専門家の分析では、韓国は困窮するが、安倍晋三政権の対応次第で、日本は中国を出し抜くことも可能だという。
「私は日本と非常に良い関係を持っている」「米国は(日本防衛に)莫大な労力、エネルギー、兵器を投じている。日本にはかかった費用を返済してもらいたい」「北朝鮮には狂ったヤツがいる。もし、(日本や韓国が)米国に(防衛費などで)適切に対処しなければ、どうなるか分かるだろう。自力で防衛しなければならなくなる」
トランプ氏は4日、米CNNのインタビューにこう答えた。同氏の十八番である「ディール」(deal=取引)や、恫喝すら感じさせる発言だ。その影響は後述するとして、トランプ氏の勢いは止まらない。
米FOXニュースのインタビューでも、「(分裂状態に陥った共和党を統一し)人々を団結させる」「ヒラリー・クリントンには勝てるだろう」と語った。AFP通信が5日配信した。
反トランプ色が強い共和党主流への融和の呼びかけであり、民主党やヒラリー氏への宣戦布告といえそうだ。本選は党と党の総力戦になるため、通商政策や外交・安保政策などで距離がある共和党主流派との調整が不可欠となる。同時に、ヒラリー攻撃は過激さを増しそうだ。
CNNの最新世論調査では、ヒラリー氏の支持率は54%で、トランプ氏は41%。その差は昨年7月以降で最大というが、ヒラリー氏は「私用メール問題」や「ウォール街からの巨額献金」を抱えており、本選でのアキレス腱(けん)となるのは必至といえる。
トランプ氏はすでに、ヒラリー氏に「不正なヒラリー」とレッテルを貼り、「彼女は偉大な大統領にはなれない」と言い切っている。今後のヒラリー攻撃次第で、トランプ氏の本選逆転もあり得る状況なのだ。
これには、中国や韓国が身構えているとみられる。
トランプ氏は4年前の大統領選に出馬しなかったが、途中まで「アンチ・チャイナ」の過激な言動で注目された。今年1月には、核・ミサイル開発を繰り返す北朝鮮を糾弾し、「北朝鮮問題を解決しないならば、中国を潰してしまえ」「貿易関税を引き上げるか、貿易そのものを中止してしまえば、2分以内に中国は崩壊する」などとブチ上げている。
習近平国家主席率いる中国が軍事的覇権を強める南シナ海問題でも、オバマ政権が避け続けた強硬姿勢に踏み切る可能性がある。
韓国については、同盟国と認めているのか疑わしい。
前出のCNNインタビューでも、韓国が負担している駐留経費についてトランプ氏は司会者に「何%だ」と尋ね、「5割」と教えられると、「なぜ100%ではないのか。全額負担するべきだ」と発言した。米韓の軍事協力に絡み、「米国は韓国を守る必要がない」と繰り返している。
日本も無傷では済みそうにない。
日本防衛費の負担要求に加え、今年3月には、日本の核保有を容認する発言もした。先のインタビューでも「(日本と韓国の核武装容認論は)敏感な問題ではない」と言い切っている。
選挙演説では、中国やメキシコとともに日本に触れ、「米国民の雇用を奪っている」と批判してきた。日米が主導し、日本経済の起爆剤に期待されるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)にも反対している。「日本にとっては憂慮すべき選挙戦(=本選)になるかもしれない」(住友商事グローバルリサーチの足立正彦シニアアナリスト)という指摘もある。
安倍首相は、夕刊フジGW特別号(2日発行)のインタビューで、米大統領選について触れ、「私も関心を持って、情勢をフォローしている。なぜなら、日米同盟は、日本の外交・安全保障政策の基軸であり、米国は世界の平和と安定に大きな責任を負っているからだ。次期米大統領が誰になるにせよ、日本にとって米国の重要性は変わらないし、米国にとっても日本の重要性は変わらない」と語った。
政府高官は「政府内にトランプ陣営とのパイプを持つ人がいない」として、外務省などに情報の収集と分析、人脈づくりを指示している。
トランプ大統領の誕生は、日本をはじめ、東アジアを激震させるのか。
米国政治に精通する徳島文理大学の八幡和郎教授は「現時点では、ヒラリー氏が有利だが、(1)トランプ氏が発言のトーンを抑えるなど変身する(2)副大統領候補に、マルコ・ルビオ上院議員など、共和党主流が納得する人物にする(3)ヒラリー氏の自滅-などで逆転の可能性はある」といい、続けた。
「トランプ氏が大統領になれば、韓国は最も困るだろう。韓国をあれほど軽視する人物はいない。世界中に兵士を送り出して歓心を買うぐらいしか手が無くなる。日中は微妙だが、(安全保障法制を成立させた)安倍首相は、トランプ氏とうまく関係を築ける可能性がある。トランプ氏と安倍首相、ロシアのプーチン大統領で『日米ロ連携』という道もある。トランプ氏は中国は大嫌いだが、ディールの相手と見るだろう。安倍政権は『中国は、米国をたたき落としてナンバーワンを狙っている。極めて危険だ』と、トランプ氏周辺に説明すべきだ」
トランプさん自身、自分がここまで来るとは思ってはいなかったんじゃないだろうか。それで派手な発言で注目を集めて来た。今後、具体的な政策を決定するに当たってはある程度トーンダウンする可能性はある。言っていることは政治家と言うよりは実業家と言った感じでディールのためのトークと言う感じがしないでもない。言うとおりにやったら第3次世界大戦になってしまうかもしれない。それにしても言ったことは内容をトーンダウンさせても要求してくるだろうから日本もそれなりに対策を講じておく必要があるだろう。でもこのおっさんは世界戦略を理解していないのか、あるいは為にする意図で言っているのか、どちらかだろう。世界各国トランプ氏には戦々恐々だろうが、一番慌てているのは米国の官僚たちではないだろうか。
Posted at 2016/05/08 10:11:31 | |
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