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2016年09月06日 イイね!

翼の向こうに(15)




翌日、ここに赴任して最初の作業で滑走路脇の待機所に出た。そこで初めて紫電二一型に対面した。機体は未だ試作機を示す黄色に塗られたままだったが、大きな幅の広い四枚のプロペラや太い胴体、広く大地を踏みしめた両脚、翼から突き出した四門の二〇ミリ機関砲など、私はこれまでの零戦にはなかった紫電の力強さに目を奪われていた。


「今日は慣れた零戦で行きましょう。乗り物は向こうに用意してありますから。」
紫電に見入っていた私の後ろから高藤飛曹長に声を掛けられて後ろを振り返った。


「今日はまだこいつは見るだけにしといてください。でも近いうちにいやって言う程乗れるようになりますから。」

 
高藤飛曹長の後について指揮所に行き、訓練開始の申告をするとエプロンでエンジンを回している零戦の方に駆け出した。走りながら高藤上飛曹は私に、「今日は私が先に行きますからついて来てください。」と声を掛けた。


『つまり任用試験のようなものか。』

 
少しばかり嫌な気がしたが、それも操縦席に納まると忘れてしまった。離陸の時指揮所を見渡すと何時の間にか司令、飛行長から山下大尉までが椅子に座ってこちらを見つめていた。


「どうせ俄か雇いだ。」

 
そう呟いて腹を決めるとスロットルを開いて滑走を始めた。先には高藤上飛曹の機体がもう滑走路を蹴って飛び立とうとしていた。車輪が滑走路を離れて機体が浮き上がると同時に車輪を格納して先を旋回しながら高度を取っている高藤機を追った。高度三千に上がるといきなり急上昇から失速反転、機首を戻して連続宙返り、左右のロール、急降下から引き起こして急上昇、そのまま宙返りをして水平に戻してから左右の連続垂直旋回と息もつかせない高等曲技飛行の連続だったが、それでもこのくらいは難無く追従できるくらいの技量は持ち合わせていた。

 
一通り機動飛行が終わると高藤機は一旦私の横に機体を並べて身振りで空戦機動に入ることを示し、すぐに急横転で翼を翻して離れて行った。追従しても無駄なことは分かっていたので私は高藤機とは反対の方向に機体を振って大きく旋回しながら高藤機の位置を確認しようとした。

 
遮二無二後を追ってこない私に面食らったのか、高藤機は千メートルほど上空で旋回しながら様子を見ているようだったが、そのうちに狙いすましたように後上方からこちらに向かって降下して来た。

 
私は以前に高瀬から聞いていたとおり機体を背面にするとそのまま思い切って操縦桿を引き、背面急降下に入った。そして背面のまま徐々に引き起こして私とは反対の方向に降下して行った高藤機を首が捩れるほど一杯に捻って視野の端で捕えながらその行く手を追った。そして引き起こして上昇して来た高藤機を目がけて、もう一度機体を背面にするとそのまま急降下して突っ込んだ。

 
自分に向かって突っ込んでくる私を発見した高藤機は小気味良く切り返して真っ直ぐに私の機を目がけて上昇して来た。双方の相対速度は千キロを超えていただろう。あっという間に接近して機体を躱す間もあればこそ、二機はごく至近距離をすれ違った。後で聞いたところ地上で見ていた幹部達は『衝突したか。』と息を呑んだ者もいれば救助のために走り出した者もいたそうだ。

 
私は『距離が近い。』とは思ったが、衝突しそうになるほど接近していたとは思わず、そのまま地上すれすれまで降下して這うように安全圏へ逃れた。へたに頭を上げると上から狙い撃ちにされると考えたからだったが、これがいけなかった。地上では私が墜落したと大騒ぎになっていた。

 
そんな地上の騒ぎなど全く知らずに大きく横須賀基地の外側を回って滑走路に滑り込んだ。そして指揮所に終了の申告に行くと佐山少佐が「あまり派手なことをしてはらはらさせるな。」と小言を言った。山下大尉は何も言わずにやにや笑いながら私を見ていた。

 
私は先に降りていた高藤上飛曹のところに行って危険な目に遭わせたことを謝罪した。高藤上飛曹は「実戦だったら私が落とされていたかも知れません。少しばかり慌てましたよ。零戦であんな飛び方をするのは高瀬中尉くらいと思っていました。」と言って笑った。 

 
午後は紫電の機体構造と操縦法の説明があり、それが終わるとその日の作業は終了した。宿舎に引き上げる途中、聞きなれない爆音が耳に入ったので音の聞こえてくる方向を見上げると数機の友軍機らしい機影が目に入った。


「紫電を取りに行った連中が戻ったぞ。」

 
誰かが叫ぶのが聞こえた。機影は徐々に大きくなって鮮やかな濃緑色に塗装された紫電二一型が四機滑走路に滑り込んだ。


「試作機じゃなく量産型だ。」

 
隊員達は口々に叫びながら真新しい機体に駆け寄った。私は皆の後からゆっくりと四機の新型戦闘機に近づいて行った。その中の一機から高瀬が降りてくるのが見えた。高瀬も私を見つけて軽く手を振って見せた。


「とうとうお出でになったな。」

 
飛行機から降りて来た高瀬は私に向かってぞんざいな口調で言った。


「ところで今晩貴様の歓迎会を兼ねてこの間の料亭に行くか。四国の肴と酒を持ってきているんだ。あの芸者、ほら、小桜もお前に会いたがっているぞ。」

 
高瀬は私が何と答えようと歓迎会は既成事実として実行を決めているようだった。そして本当に出先から抱えて来た一升瓶と肴をいれた風呂敷包みをぶら下げて宿舎へ歩いて行った。後に残された新型戦闘機にはもう整備員が取り付いて整備を始めていたが、その周りを基地に残っていた搭乗員が取り巻いて物珍しそうに眺めていた。


『どうせこれからいやと言うほど見られるさ。自分の棺桶になる乗り物なんだから。』

 
何だか高瀬が好みそうな言葉を心の中でつぶやきながら私はゆっくりと宿舎に向かって歩いていった。着替えを済ませて宿舎のベッドに寝転んでいると高瀬が戻って来た。


「皆、一生懸命乗り物を見ているが、自分の棺桶にはやはり興味が湧くのかな。」

 
窓の外に視線を投げながら言った高瀬の言葉に私は吹き出してしまった。


「何が可笑しいんだ。」

 
怪訝な顔をして振り返った高瀬には答えもしないで私は笑い続けた。


「おかしな奴だな。何とも悲しいことなのに。何故そんなに笑うのかな。」

 
高瀬に真新しい塗料を纏って身繕いした新型戦闘機に見入っている搭乗員達を見ていて、自分も同じことを思ったこと、そして高瀬もきっと同じことを言うだろうと思っていたことなどを話すと高瀬も笑い出した。そうして二人でしばらく笑い合った。


「貴様もニヒリズムが分かってきたようだな。ところで今日は外泊許可を貰って来たぞ、飛行長から。小桜な、本気でお前に惚れたらしい。あれから毎日、お前がくるのを待っているようだ。特に海軍の客が来た時には駆け出すようにして玄関先に出迎えているらしい。俺も彼女に何度かお前のことを聞かれたよ。」

 
突然高瀬に小桜のことを言われて小桜と過ごした一夜を思い出した。たった一人の肉親を戦争に奪い取られて身の置き所もなく彷徨っていた小桜が私に何を求めたのか、そんなことにさえあまりに無頓着だった自分に後ろめたさを感じもしたが、死に神の大鎌のように人の絆や個人の感情を絶ち切って憚らない戦争の中にあって、しかも軍人という立場で女一人の心の平穏を守ってやることを考えるなどとんでもないことのように思えた。


「戦争をしているんだ。芸妓一人に構っていられるか。」

 
照れ隠しもあって私はわざとぶっきらぼうに言い放った。


「確かに俺達は戦争をしている。お前の言うことも尤もかも知れない。ただ一人の人間の心の平穏さえも考えてやれない者に国を守ることなんか出来るのかな。お前のことを言っているわけじゃない。一般的なことを言っているんだがな。まあ、とにかく会って声くらい掛けてやれ。戦争をしている軍人だけが苦労しているわけじゃない。軍人だけが戦争をしているわけじゃないんだから。」

 
高瀬は何時になく殊勝なことを口にした。私もそんな高瀬に気圧されて「分かった。」とだけ一言答えた。



Posted at 2016/09/06 23:51:57 | コメント(0) | トラックバック(0) | 小説2 | 日記
2016年09月06日 イイね!

「日本の領空を侵すものは撃墜するぞ」と言う強制権が担保されなきゃ誰も守らねえよなあ。




航空自衛隊の対領空侵犯措置(対領侵)の主対象は冷戦期のソ連から中国に移った。ソ連軍の領空接近の目的が偵察と訓練だったのに対し、中国軍の目的は尖閣諸島(沖縄県石垣市)の実効支配とみられる。だが威嚇や挑発がエスカレートする中、空自が対処する上で重大な欠陥がある。元空将の織田(おりた)邦男氏に聞いた。

 --対領侵の問題点は

「自衛隊法には防衛出動などと並び対領侵の行動が規定されている。ほかの行動は自衛官が武器を使用できる権限が規定されているが、対領侵だけ権限規定がないことが問題だ」

「権限規定がないため自然権である正当防衛、緊急避難以外は武器を使えず、対領侵の任務を遂行するための武器使用はできない」

 --自分がやられるまで武器を使えない

「そうだ。『領空侵犯機が実力をもって抵抗する』場合に武器を使用できるという政府答弁があるが、実力をもった抵抗ですでに空自は犠牲者が出ている」

「『相手が照準を合わせて射撃しようとしている』場合には攻撃される前でも危害射撃を行えるとの答弁もあるが、机上の空論だ。相手が照準を…と悠長に判断していれば、次の瞬間に攻撃されている」

 --権限規定がないことは法的不備では

「ある元裁判官は『立法不作為』と断じた。権限規定がないことは『武器を使用してまで(侵犯機を)領空から退去あるいは強制着陸させるべき強制的権限を与えないという国家意思と解さざるを得ない』とも指摘している」

「任務は与えるが、権限と手段は与えない。だから対領侵の実効性は担保されなくても構わないというのが国家意思だろうか。そうではなく、『断固として領空を守れ』のはずだ」

 --尖閣の領空が危うい

「中国は尖閣を力ずくで奪おうとしており、中国軍機が尖閣で領空侵犯をする日は近いかもしれない。尖閣で頻繁に領空侵犯され、厳正に対応できなければ実効支配しているといえなくなるのではないか」

「領空侵犯されれば直ちに撃墜できるようにすべきだと主張しているのではない。撃墜されるかもしれないと相手に認識させて初めて領空侵犯を防ぎ、強制的に退去・着陸させることも可能になる。対領侵の権限規定を追加する法改正は待ったなしの課題で、立法不作為を放置することは許されない」




法治国家などと言ってはみても、「この法律を守らなければ処罰するぞ」という国家強制権の発動が担保されているから従うのであって罰則規定のない法律など何の効力も持たない。国民を対象にした国内法であってもこれが現実なのに外国の実力武装機関を相手に、「領空に入ってはダメですよ。出て行ってください」などと言ってみても始まらない。「領空を侵犯したら撃墜されるかもしれない」という現実の恐怖があってこそ法は守られる。それを規定もしないで、「領空侵犯には厳正に対処する」などと口先で言ってはみても、お隣さんは、「ああ、そうですか。やってもらいましょう」と笑っているだけだ。





Posted at 2016/09/06 17:03:52 | コメント(0) | トラックバック(0) | 軍事 | 日記
2016年09月06日 イイね!

国会議員がオービスに引っかかるだって、・・不届き千万!!




鶴保沖縄・北方担当相は今年7月にスピード違反で検挙されていたことについて、6日、「大変申し訳ない」と陳謝した。

 

鶴保沖縄・北方担当相「大変申し訳ないと思っております。今後ともこういうことのないようにせねばならんなというふうに思っているところでありますけれども、なんと言ってもこれから車の運転をする機会なんてもう私自身もほとんどありませんし、本当に皆さんにご心配をおかけしたことを大変申し訳なく思っていますが、襟を正して職務に精励をし、分かっていただけるようにがんばりたいというふうに思っています」

 

また、鶴保沖縄・北方担当相は運転免許停止処分となったことを明らかにした。一方、自らの進退については「襟を正してがんばる。そのことに尽きる」と述べ、閣僚の職にとどまる考えを示した。





国会議員が順法精神に欠けるのは重々不届き、徳川幕藩体制なら蟄居閉門、下手をすると切腹お家断絶か。高速道路の案内標識は緑で高速の「青い標識」と言うのは曲者だ。速度自動取締機の前には2枚の青い看板が出ている。2キロ手前と1キロ手前、いずれも「自動速度取締路線」「速度自動取締機設置路線」などと表記されている。高速で青い標識はほとんどないので結構目立つ。前をしっかり見ていれば見落とすことはない。ナビなどでも教えてくれるが、・・。またオービスの設定速度は40キロよりもかなり上に設定されているのでそれで捕まると言うのはかなり悪質ではある。あまり飛ばしてはいけない。
Posted at 2016/09/06 17:01:34 | コメント(0) | トラックバック(0) | 政治 | 日記
2016年09月06日 イイね!

日中首脳会談、協議加速で衝突回避へ、・・。




中国・杭州を訪問中の安倍晋三首相は5日夜、習近平(シーチンピン)国家主席と会談した。両首脳は、様々な分野で対話を進めていくことで合意。また、東シナ海などでの日中の偶発的な衝突を避けるための「海空連絡メカニズム」について、日本政府は運用の早期開始を求めていたが、会談では協議を加速していくことで一致した。

 

首相と習氏との首脳会談は昨年4月以来、1年5カ月ぶりで3回目。30分余り行われた。

 

会談の冒頭、習氏は両国関係について「双方ともに妨害を排除し、中日関係を一日も早く正常な発展の軌道に戻すよう努力しなければならない」と呼びかけた。首相は「戦略的互恵関係の考え方に立ち、大局的な観点から協力や交流を進め、安定的な友好関係を築きたい」と応じた。

 

首相は会談後の記者会見で、中国公船が沖縄県の尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返している問題や、中国が軍事拠点化を進める南シナ海の問題について「日本の立場を率直、明確に伝えた」と強調した。

 

日本政府の説明によると、首相は会談で尖閣問題について「中国公船、軍による特異な活動は極めて遺憾だ」と主張。緊張を高める行動をなくして状況を改善するよう求めたうえで、「東シナ海の安定なくして日中関係の安定はない」と訴えた。習氏は、東シナ海の平和と安定を維持する考えを示したという。

 

尖閣周辺海域では、中国海警局の公船などによる領海侵入が続く。海空連絡メカニズムは中国公船の挑発的な行動などが軍事衝突に発展しないよう、両国の防衛当局間にホットラインを開設し、通信手段を共通化することが柱。14年11月の首脳会談で早期の運用開始を確認したが、これまで実現されていない。

 

首相は、南シナ海の問題については「国際法のルールを守り、周辺国の不安解消に努めてほしい」と伝えた。

 

国営新華社通信によると、習氏は「対話と協議を通じて意思疎通を強化し、東シナ海問題を適切に処理し、ともに東シナ海の平和と安定を守るべきだ」と述べた。南シナ海については「日本側は言動を慎み、中日関係改善の障害となるのを防ぐべきだ」と語った。また、習氏は「両国は古い問題をうまく管理し、新たな問題を防ぎ、足かせを減らさなければならない」との考えも示した。


■日中首脳会談の骨子

・様々な分野、レベルで対話を進めていくことで合意

・東シナ海の平和と安定を維持していくことで一致

・防衛当局間の「海空連絡メカニズム」の早期運用に向け協議加速

・東シナ海の日中中間線付近のガス田共同開発について交渉再開

・両国での五輪開催を見据え、様々な分野で交流


■日中間の主な懸案事項

・中国公船による尖閣諸島周辺での領海侵入

・東シナ海の日中中間線付近で中国が進めるガス田開発

・南シナ海での中国の権利主張を全面否定したオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所判決

・海空連絡メカニズムの協議停滞




「お前らがおかしいからこういうことになるんだろう。お前らが国際法の支配の下に立ち、周辺国との協調を第一とした国際関係を尊重した外交を進めろ。『自分良ければすべてよし』など不届き千万、以ての外」とでも言ってやればいいんだろうけどそういう意味のことを言葉のオブラートにくるんでやんわりと伝えるんだろうねえ。外交は丁々発止の駆け引きではある。しかし、最近は、「東シナ海の問題を片づけるには覚悟を決めて1回やるしかない」と言う論調も散見されるが、軍事衝突と言うと死傷者が出るんでねえ。


Posted at 2016/09/06 17:00:15 | コメント(0) | トラックバック(0) | 政治 | 日記

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ntkd29です。CB1300スーパーボルドールに乗って11年、スーパーボルドールも2代目になりました。CB1300スーパーボルドール、切っても切れない相棒にな...
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