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2017年03月01日 イイね!

翼の向こうに(52)




高瀬は猪口の中の酒を見つめていた。酒を見ていたのではなくて酒に写った自分の顔を見つめていたのかもしれなかった。

 
次の瞬間、高瀬は猪口を口に運ぶと中の酒を口の中に放り込むようにして飲み干した。


「いやいや、今日はこういう話をするには惜しいような穏やかな一時だ。楽しくやろう、楽しく。」

 
一時の深刻な表情は消え去って、また穏やかな青年の顔に戻った高瀬はきっと心の底に常に去来しているであろう苦悩を振り払うように明るく笑った。


「なあに、神様も明日命の保証もない我々のことは大目に見てくれているだろうよ。おい、武田中尉、貴様『天皇陛下万歳』を叫んでみたことがあるか。なかったら今ここで天皇陛下万歳を言ってみろ。」


私は高瀬に言われるままに『天皇陛下万歳』を叫んでみた。


「我々はそうして『天皇陛下万歳』を叫んで死んで行くが、陛下はそうして国民が死んで行く度に大御心を痛めておられよう。無意味なことだ、お互いに。」


手勺で猪口を満たすと高瀬はそれを口の中に放り込んだ。


「さて、ところで智恵さん、敵の対空砲火を見たことはないだろうが、それはものすごいものだよ。土砂
降りの赤い雨が下から吹き上げてくるような、それこそこんな中をどうして敵の弾に当たらずに突破したらいいのか途方にくれてしまうような、そんな物凄さなんだ。さて、そういう時はどうしたらいいと思う。良い知恵はあるかい。」

 
尋ねられた小桜は顔を曇らせた。そんな中で我々が戦わなければならないことへの不安とそうした状況を知らされてそれに何と答えたらいいのか、その答えに窮して顔を曇らせたのだった。


「そんなに不安そうな顔をしなくても大丈夫だよ。答えは簡単さ。飛行機を百八十度ひっくり返して番傘でも差せば良いんだ。花火の中を番傘差して歩いているようでなかなか乙なものだよ。智恵さんのような和服美人でもいれば尚更乙なものだ。」

 
あの敵の撃ち上げる息も詰まるような対空砲火を何度も体験していてどうしてそんな無邪気なことが言えるのかとあきれてしまうようなことを口にしては高瀬はころころとした笑い声を上げて一人で笑った。

 
当たる弾の見分け方、墜落しない飛行機の作り方、負けない戦争の仕方、高瀬の話は止め処がなかった。

 
そうして散々喋り散らした挙句に畳の上に大の字に寝転がって「ああ、平和の匂いがする。いい匂いだ。戦争が終わったら頭が捩れるほど考えてやる。この戦争が一体どういう意味があったのか、我々はどうすべきだったのか、人間とは、生とは、神とは何なのかを。」と大声で叫ぶと涼しげな寝息を立てて眠ってしまった。


「疲れているんでしょうね、高瀬中尉。そしてあなたも。」


卓の上の物を音を立てないように気を配りながら片付けていた小桜がそっと高瀬に視線を落とした。


「どうしよう。起こして大家のところに行かせるか。」


「今ここに床を取ります。ここで寝かせてあげましょう。大家さんに訳を話して蒲団を借りてきましょう。」


「ああ、それがいい。ここを片付けてくれ。蒲団は俺が借りてこよう。」

 
私は立ち上がって表に駆け出した。そして老提督が笑いながら出してくれた蒲団を抱えて戻ってくると座敷はもうきれいに片付いていた。


「さあ、高瀬中尉を寝かせて上げましょう。」

 
小桜に促されて私は甲高い寝息を立てている高瀬の脇に腕を差し込んで小桜と一緒に持ち上げた。きれいに整えられた蒲団の上に横たえられた高瀬は左右に数回体を動かした後、まるで時間が止まってしまったかのように動かなくなった。後には相変わらず甲高い寝息だけが規則正しく続いて高瀬が確かに生きていることを知らせ続けていた。

 
後になって思えば高瀬が硝煙と血の匂いが立ち込める戦場から離れて番屋のようなあばら家であっても、まがいなりにも平和な家庭を味わったのはこれが最後になってしまった。私は小桜の勺で高瀬の寝顔を見つめながら猪口をゆっくりと傾けた。


「明日は早いのでしょう。お休みになりますか。」


小桜が小さい声で尋ねた。


「ああ、そうだな。」


生返事をしながら私は煙草を取り出して火を点けた。


「高瀬はあんなにふざけて戦争を語ったが、実情はひどいものだよ。毎日、空虚な美辞麗句に送られて爆弾を固縛した戦闘機や攻撃機が特攻に出撃して行く。その先に待っているのは空を埋め尽くすような数の敵の戦闘機と噴き上げる豪雨のような対空砲火だ。敵艦までたどり着けるのは百機出てもほんの数機だ。

 
最近は弾が飛んできても怖くなくなった。人間の死があまりにもありふれていてそれが当たり前のように思うのか、自分だけは死なないと思っているのか、自分にもよくは分からない。あの時のように敵の弾は自分の命の脇を紙一重のところでかすめていく。

 
それがいつかは自分の命を貫いて砕く時が来る。今のこの状況では誰にとっても死は不可避だ。そんな日常の中で死ぬのが怖くなくなったのは、返って生きることよりも、どうやって死ぬか、それを考える方が簡単に思うようになったからかもしれない。」

 
煙草を深く吸い込むと灰皿の中でもみ消した。小桜が座卓の上の皿や小鉢を重ねて立ち上がった。私は座卓の脚を畳むと部屋の隅に立てかけて、空いた場所に蒲団を敷くとその上に仰向けに寝転がった。横からは相変わらず規則正しい高瀬の寝息が聞こえた。

 
しばらくすると小桜が座敷に上がってきた。そしてそっと小さな明かりを消すと蒲団の脇に座った。私は閉じていた目を開けると小桜を見上げた。


「失礼します。」

 
小さな声で言うと小桜は私の横に体を横たえた。私は手を伸ばして小桜の体を抱き寄せた。小桜の体の柔らかさ、暖かさが荒んで乾いた私の心を潤すように染み込んで私を満たしてくれた。小桜の匂いを含んだ空気を両方の肺にゆっくりと深く吸い込むと私の心や体を固く縛り付けていた緊張感が消えていった。それを何度も繰り返しているうちに私は安らかな眠りに落ちて行った。


「死なないでとは言いません。でも死ぬことだけを考えるなんてそんなことはしないでください。」


小桜の声が聞こえた。


「あなたも、そして高瀬さんも。」


「うん。」


私は半ば夢の中から小桜に答えた。



Posted at 2017/03/01 17:54:07 | コメント(0) | トラックバック(0) | 小説2 | 日記
2017年03月01日 イイね!

大型二輪に乗ろう(真っ赤なフルフェイスに真っ赤なつなぎを着てCBR1000RRに乗ろう)




今日は四輪・二輪共に卒業検定の日、四輪は繁忙期にしては少ないが、二輪は平日では多い5人もいる。その中に大型二輪の検定を受ける女性がいたので、「免許取ったら何に乗るの」と聞いたら「CBR1000RRのフルパワー仕様」と言う。おお、格好いい。でも「そんなもの走らせるところがないだろう」と言うと「富士スピードウエイなどのサーキットに行く」と言う。おお、ますます格好いい。四輪ではもうすでに富士スピードウエイは走行経験があると言う。で、今乗っているバイクはホンダNSR250だそうだ。


女性のライダーさんは結構いるんだろうけどあまり見かけたことがない。ツーリングに出かければ相棒はCB1300スーパーボルドールで、別に女性ライダーを探しにツーリングに出かけるわけではないので出会おうが出会わなかろうがどうでもいいのだが、これまで記憶にある限りでは高速のサービスエリアなどで1,2回見かけた程度で遭遇率としては非常に低い。そんなことを言うと「どこに行ってもよく話しかけられる」そうだ。まあ、男と言うのはしょうもない生き物ではある。


真っ赤なフルフェイスに真っ赤なつなぎを着てヘルメットから髪をなびかせてCBR1000RRで走ればその後を2,30台のバイクがついてくると言ったら笑っていた。男の単騎長距離は結構出会うが、女性はグループが多いのかもしれない。でもグループもおっさんばかりで女性はあまり見かけない。


女性で大型希望者はHDの883とかXLが多いのだが、CBR1000RRは初めてだ。ショップで見るがなかなか格好いい。国内仕様は123馬力とパワーを絞っているが、フルパワーだと179馬力ほどになるようだ。ホンダはCBR1000RRはスーパースポーツではなくてレーサーレプリカだと言っているようだが、何が違うんだろう。


市販車より競技車両が先に造られるのがレーサーレプリカ、競技車両より市販車が先に造られるのがSSだそうだ。卵が先か鶏が先か、・・違うか。まあ、どっちも軽量大馬力で運動性良好のかっ跳びマシンと言うところか。以前、隼に乗っていたおっさんが、「タンクに腹がつっかえる。首と背中が痛た~い」とか嘆いていた。隼はメガスポーツと言うらしいが、この手のバイク、格好いいとは思うが、この先乗ることはないだろう。

Posted at 2017/03/01 15:19:56 | コメント(0) | トラックバック(0) | バイク | 日記
2017年03月01日 イイね!

偉い人からの感謝状と言うやつは、・・。




海上自衛隊トップの村川豊海上幕僚長は28日の記者会見で、海自が森友学園(大阪市淀川区)の籠池泰典理事長に過去3回、感謝状を贈っていたことを明らかにした。稲田朋美防衛相が昨年10月に籠池氏へ感謝状を贈呈したのは、こうした経緯があったからで、稲田防衛相の就任前の同7月に海上幕僚監部が、防衛官僚が中心の内局に推薦し、事務次官がその後に決裁したという。


海自によると、籠池氏が園長を務める大阪市内の幼稚園は遅くとも1999年から、護衛艦が入港する際に園児の鼓笛隊が演奏で歓迎したり、東アフリカのソマリア沖アデン湾に海賊対処活動で派遣された護衛艦の乗員に顔や動物などを描いて激励する絵本や貼り絵を贈ったりしていた。

 
海自は2003年に阪神基地隊司令、09年に呉地方総監、14年に海幕長がそれぞれ感謝状を贈った。村川海幕長は「園児の方から(激励に)来たのでは」と述べ、海自が依頼したのではないとの見方を示した。

 
また防衛省によると、陸上自衛隊第3師団長も09年に感謝状を贈っていた。贈呈理由の詳細は不明という。




感謝状なんてものは現場からの上申で余程問題がなければ機械的に出されていくものだから、「なんで出した」と言われても分からんだろう。ランクアップも貢献度が上がると地方総監、海幕長、防衛大臣とステップアップするが、上申意見に従って事務方が処理していくので出したとされる本人は記憶もしていないんじゃないだろうか。感謝状とはその程度のものではある。

Posted at 2017/03/01 13:29:58 | コメント(0) | トラックバック(0) | 政治 | 日記
2017年03月01日 イイね!

滑り出したら止まらない民進党、・・(^_-)-☆。




民進党は28日の参院予算委員会で、衆院での論戦と同様、学校法人「森友学園」の問題に照準を定めて政府側に波状攻撃を仕掛けた。ただ、土地売買をめぐる疑惑の本筋追及はどこへやら。学園の教育方針の異様さや政権との関係を印象づけようと躍起になったが、インパクトを与えたのはお約束の“至芸”だけだったようで…。(松本学)

 
「国民の最大の関心事はやはり森友学園だ」。トップバッターで質問に立った民進党の小川敏夫氏は、事前に通告していた雇用や物価に関する質問はそっちのけで、森友学園問題から話を切り出した。しかし、学園の教育方針に共鳴するかを安倍晋三首相に尋ねたところで、首相の反撃を招いてしまった。

 
「民主党政権の平成24年に(学園が運営する幼稚園の教諭に)文部科学大臣賞を出した。民進党の大西健介氏が言うには、『政権ぐるみ』になるんですね」。大西氏が前日の衆院予算委員会で放った「ブーメラン」を引き合いに反論された小川氏は、ターゲットを稲田朋美防衛相に移し、過去に稲田氏が森友学園の籠池泰典理事長を表彰したとして経緯の説明を求めた。

 
稲田氏は、海上幕僚監部の推薦に基づき感謝状を贈ったことを認めたが、続く言葉で「なお、平成21年10月にも呉地方総監から感謝状が贈呈されています」。なんと、旧民主党の鳩山由紀夫政権時代にも感謝状が贈られていたことが明かされ、国会論戦で2日連続のブーメランを被弾。東京地検出身で「国会の鬼検事」の異名をとる小川氏も、さすがにバツが悪かったのか、「オホン…。少し話題を変えますが…」と話をそらすほかなかった。

 
続いて質問した民進党の小川勝也氏は、学園による「安倍晋三記念小学校」名目の寄付金集めに触れ、繰り返し「謝罪」を迫った。

 
小川氏「釈明の言葉をお願いしたい」

 
首相「名前を寄せることはお断りしている」

 
小川氏「謝らなきゃおかしいと思う」

 
首相「『安倍晋三記念小学校』を引き受けていたら当然責任があるが、お断りしているんですから」

 
小川氏「総理にだまされた、と思っている人もいるかもしれない」

 
「だました」の主語を学園から首相にすり替えてのイメージ操作を狙ったようだが、これは単なる“暴投”に終わってしまった。




元検事さんなら自分が質問する事項の裏をきちんと取ればいいだろうに、・・。やるべきことをやらんからこうして天下に恥をさらすことになる。この問題の最大のポイントは減額価格をどうして国が決めたのかと言う点でそこを追及していけば裏があるなら何かが出てくるはずだろう。民進党の滑りまくりには笑わせていただくが、それはそれとして、あの価格をどうして決めたのかそれはきちんと説明すべきだろうなあ。

Posted at 2017/03/01 13:28:38 | コメント(0) | トラックバック(0) | 政治 | 日記

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ntkd29です。CB1300スーパーボルドールに乗って11年、スーパーボルドールも2代目になりました。CB1300スーパーボルドール、切っても切れない相棒にな...
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