■自民、今春にも提言取りまとめ
北朝鮮による核・弾道ミサイルの脅威が高まっていることを受け、敵基地攻撃能力の保有を検討する動きが進んでいる。自民党は今春にも提言をまとめる方針で、安倍晋三首相も保有に含みを残している。だが、敵基地攻撃能力の導入が決まっても「どんなに早くても態勢構築に5年はかかる」(元航空自衛隊幹部)のが実情だ。攻撃目標に関する情報収集や米国の理解など課題も多く、一刻の猶予も許されない。(小野晋史、杉本康士)
「国民の生命と財産を守るためには何をすべきか。さまざまな検討を行っていくべきだ」
安倍首相は2日の参院予算委員会で、敵基地攻撃能力についてこう述べた。浮かんでは消えてきた議論だが、厳しさを増す戦略環境が停滞していた国内議論を後押ししつつある。自民党の安全保障調査会は次期中期防衛力整備計画に向けた提言を今国会中にまとめる方針で、攻撃能力保有も重要な柱として位置づけられる見通しだ。
政府・自民党内で想定されるのは、イージス艦から発射される巡航ミサイル「トマホーク」や、F35戦闘機などによる空対地攻撃だ。巡航ミサイルであれば戦闘機パイロットを危険にさらすことなく攻撃でき、戦闘機であれば誤情報に基づく攻撃をギリギリで回避する柔軟性が確保できる。
攻撃能力により日本の国土に危険が及ぶ可能性を低下させられるほか、抑止効果も期待できる。能力保有に積極的な政府関係者は「憲法9条で許されるのはミサイル基地などの策源地を攻撃することだけだが、敵国の指導者は『自分も狙われるのではないか』と疑心暗鬼になる。独裁国家に対しては効果的なカードだ」と指摘する。
攻撃能力保有は、コストの面でも魅力的に映る。北朝鮮は昨年だけでも23発の弾道ミサイルを発射しており、今年2月12日にも新型弾道ミサイルを発射した。増え続ける北のミサイルに高価な迎撃ミサイルで対応しようとすれば防衛予算を圧迫する。攻撃能力の抑止効果でミサイル発射を思いとどまらせることに成功すれば、比較的安上がりになるというわけだ。
危機が差し迫った中での先制攻撃は国際法上も認められている。だが、極端な平和主義の影響が強い日本では、自衛隊が「第一撃」を行うことに政治的リスクが伴う。実際の運用について、防衛省幹部は「最初の攻撃をミサイル防衛(MD)でしのいだ上で、敵基地攻撃を行うことになるのではないか」と話す。
攻撃目標の位置を特定するための正確な情報収集も課題だ。情報収集衛星や無人偵察機の活用、日米韓の情報協力など情報収集態勢の確立が欠かせない。
保有を決めてからも運用研究や装備の調達、施設整備などに数百億円以上の費用と5~10年程度の時間を要するとみられる。米国内には、日本が戦略的に「自立」することに対する警戒も根強く、攻撃能力保有に至る過程ではトランプ米政権の理解も必要となる。
策源地攻撃能力などとややこしいことを言わないで核弾頭と弾道弾を保有して、「やれるものならやってみろ。お前の国も消えるぞ」と言うのがあらゆる局面で最も効果的で手っ取り早いように思うが、今の日本では不可能だからなあ。遠距離攻撃能力を持つか、MDを充実させるかの二者択一になるだろう。さてどっちがいいのかねえ。
Posted at 2017/03/03 13:15:16 | |
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