わが国への武力攻撃が万が一にも発生して陸上戦闘に発展した場合、現場における指揮通信の要として期待されるのが「82式指揮通信車」だ。陸上自衛隊の装輪装甲車として初めての国産車両でもあり、多少の弾ならはじき飛ばす頑丈さは折り紙付き。観閲式で車両が行進する際は部隊旗を掲げながら先頭を進んでくることも珍しくなく、なじみ深い人も多いだろう。さらにはゴジラシリーズをはじめとした映画や漫画などにもたびたび登場する“人気者”で、35年の長きにわたって第一線で活躍し続けている。
82式指揮通信車は全長5・72メートル、全幅2・48メートルで8人乗り。分厚い装甲に覆われた外見からはうかがい知れないが、後部には左右に向かい合う形で座席が並ぶほかに指揮・通信室があり、地図などを広げられる折りたたみ式のテーブルや通信機器などが装備されている。窓や冷暖房はないという。
ぶ厚い装甲を有するために耐弾能力は大きく、戦車砲の直撃は別としても多少の被弾であればびくともしない。重量は13・6トンで、新型主力輸送機「C2」にも搭載できる。
82式指揮通信車は全国の師団司令部のほか、自走砲を扱う特科中隊にも配備されている。さまざまな場所に移動する自走砲の部隊では、特定の場所に指揮所を設けることが難しいからだ。むろん、その時々の拠点では82式指揮通信車の周辺にも通信機材を置いて任務を果たすことになる。
陸自として初めての国産の装輪装甲車として培われた知見はその後、87式偵察警戒車や化学防護車、96式装輪装甲車などに生かされている。
一方、車体の天井には円形のハッチがあり、そこから身を乗り出した隊員が観閲式のときには部隊旗を掲げるほか、搭載した重機関銃などを操る。映画「ランボー」に登場するような重機関銃の口径は12・7ミリで、ヘリコプターを撃ち落とすことも可能だ。
運転席のフロントガラスはそんなに大きくないが、危険な時には鉄板を閉めて、その隙間からのぞきながら運転することも。乗車経験のある陸自関係者は「そうなると、運転はかなり大変だ」と苦笑いする。
装輪ということもあって最高速度は時速100キロに達し、高速道路を走行することも可能。ただ、前述のように運転席からの視界はそんなに良くないので、先の陸自関係者は「実戦ではなく演習であれば、走行車線をそんなに速くはないスピードで走るのが普通ですね」と話す。運転操作はマニュアル式で、運転をするには特別な教習課程をこなす必要がある。
このような82式指揮通信車だが、実は映画やテレビ、アニメや漫画といった作品での登場が多い。「シン・ゴジラ」(庵野秀明総監督/樋口真嗣監督)などのゴジラシリーズをはじめ、自衛隊が登場するシーンの数々に出演している。その理由について陸自関係者は「指揮通信車といわれるだけに指揮官が乗っているシーンで攻撃命令を下したりする際に必要なのではないか」と推し量る。
思わぬところで自衛隊の“顔”となっている82式指揮通信車は登場から35年が経過するが、今後も当分の間は部隊の先頭を走り続けることだろう。
この装甲車が長きにわたって生き残っているのは性能が良いからではなく後継車両が出てこないからだろう。装備が古い。スペースが足りない。走行性能が低いなどの話はずい分前から出ているようだ。装甲も前面で対12.7ミリ、それ以外は7.62ミリと弾片程度だろうが前線に出ていくわけではないからそれで十分だろう。一時期、普通科の装甲化もこれで賄おうと言う話があったらしいが、1個分隊を収容できないと言う反対でつぶれたらしい。その後、軽装甲機動車で普通科の装甲化率を上げたことを思えばある意味先見の明があった意見だったのかもしれない。87式偵察警戒車とともに更新の時期だろうけど87式など未だに調達しているのでまだまだ先なのかもしれない。
Posted at 2017/04/13 15:02:53 | |
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