小野寺五典防衛大臣が新たな弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」とともに導入する方針を公表した長距離巡航ミサイル「スタンドオフ・ミサイル」。F-35、F-15戦闘機などへの搭載を想定しているもので、政府は離島を奪われた際の奪還作戦に使用することを想定している。
小野寺防衛大臣は8日に防衛省で行った記者会見で「自衛隊員の安全を確保しつつ、わが国を有効に防衛するため、相手の脅威圏外から対処できるスタンドオフミサイルとしてF-35Aに搭載するJSM等を導入することとし、本日、防衛省として追加的に予算要求を行う予定」と強調。「あくまでわが国防衛のために導入するものであり、いわゆる『敵基地攻撃』を目的としたものではありません。いわゆる『敵基地攻撃能力』については、日米の役割分担の中で、米国に依存しており、今後とも、日米間の基本的な役割分担を変更することは考えておりません。また、このようなミサイルは、あくまでわが国防衛のために導入するものであり、専守防衛に反するものでありません」と話した。
今回導入が検討されている3種類のミサイルのうち、「JASSM」はおよそ900kmの射程があるとされ、わが国本土から北朝鮮の平壌にも届く計算だ。このことから、敵基地攻撃能力の保有につながるとの見方もあり、立憲民主党の枝野代表は8日、「専守防衛の範囲内で最も効果的な防衛をするという観点を踏まえた時に、その説明はにわかに納得できるものではない。もし本当にこのまま進まれるのであれば、通常国会において相当大きな争点になる」と指摘している。
「どうもメディアの方は混同しておられるのではないか。今回のスタンドオフ・ミサイルは北朝鮮の基地を目標にするものではなく、相手よりも射程の長いミサイルを持つことで、我が国の領土への上陸・侵略を抑止するというのが第一義だ」。今年8月から小野寺防衛大臣の政策参与も務める拓殖大学総長の森本敏・元防衛大臣はそう指摘する。
森本氏は「誤解を訂正したい」と前置きし、「相手よりも長い射程のミサイルを持つことによって、我が方に近寄ってきて攻撃しようとする艦艇や上陸しようとする部隊を航空機から直接攻撃できるのが『スタンドオフ』という意味だ。母機である航空機は発射したらUターンして戻ってこられるので、相手と接近することもなく、危険が少ない。相手の攻撃から我が方のイージス艦を守ることもできる。だから、抑止の力も非常に高くなる」とも指摘、「大臣は一言も『巡航ミサイル』とは言っていない」と、いわゆる敵基地を攻撃する巡航ミサイルとは異なる性格のものだと訴えた。
さらに、敵基地攻撃能力の保有につながるのではないか、“専守防衛“に反するのではないか、といった意見に対しては「一つは、目標がどこにあるのかを正確に識別し探知する能力を持つ衛星があること。もう一つは、相手がジャミング(電波妨害)やサイバー攻撃をしようとした時にそれを無力化できる電子戦の能力があること。最後に、ピンポイントで目標を攻撃できる能力があること。この三つが組み合わさったものが敵基地攻撃能力だ。しかし、今の日本は一つ目と三つ目を米国に依存している。米国が情報を日本に提供してくれるからこそ、弾道ミサイル防衛ができる。安倍総理も繰り返しおっしゃっているが、現時点で我が国が敵基地攻撃能力を持つという考えもその計画もない」と説明。
その上で「排他的経済水域の範囲内については国家の主権・領有権は無いが、中国は排他的経済水域の中も自国の主権を主張できると常に言っている。もし中国が尖閣を領土になってしまえば、沖縄本島周辺までもが中国の領域ということになり、在日米軍はおろか自衛隊も脅威を受ける。戦略的な意味から、絶対に譲ってはいけない」として、尖閣諸島の領有権問題の観点からも、抑止力としてのスタンドオフ・ミサイルの意義を強調した。
また、導入が検討されているものと同程度の性能を持つミサイルは、諸外国では10年ほど前から保有されてきたものだという。
「各国の装備が急速に近代化されているのに対し、これまで日本だけがミサイルの射程が短かった。我が方だけが攻撃され、我が方のミサイルは届かないということになれば、周りの脅威に対応できない。それでは駄目なので、対応できる射程を持つスタンドオフ・ミサイルを持とうということがかねてから検討されてきた。なぜこのタイミングかと言えば、ただ日本では生産していないので、ノルウェー政府、米国政府との様々な調整が必要だった。今回、“日本に売ってもよい“というはっきりとした了解が取られた段階になったので公表することして、追加予算を計上したということだ。また、ノルウェーのミサイルの母機=プラットフォームになるF-35そのものが来年からの導入だからだ。持って、訓練をして、それが有効だということがきちっと見積もれないと、買うという決断にならない」。
講談社の瀬尾傑氏はメディア側の視点から「この話が急に出てきた印象がある。今のタイミングで出てきた背景には北の脅威に対する国民の危機感があり、理解されるだろうという判断をされたのかもしれないが、現実的な選択として必要性があるのであれば、もっと国民にリアルな議論をさせるように、情報をどんどん与えることが政府の姿勢としては必要なのではないか」と指摘した。
森本氏の解説を聞いた経済評論家の上念司氏は「こういう話をすると、すぐに“戦争になる!徴兵制が!“という人もいるが、見ての通り高度なプロフェッショナル、エンジニアリングの世界だ。徴兵された人がこんなミサイルを撃てるはずがない。そういう議論をちゃんと地上波でやってほしい」と主張。ウーマンラッシュアワーの村本大輔は「こんな重要なニュースがあるのに、なぜお相撲さんの話ばかりしているのか」と疑問を呈すると、森本氏は「私はメディアの専門家ではないが、やはり国民感情に訴えるものがあり、画面を見てわかりやすい問題だ。こういう専門性の高い話題は難しい」と苦笑混じりにコメントしていた。
現代の兵器は非常に高価で複雑だからそれを扱う兵員も長期にわたり訓練をしないと一人前にはならない。鉄兜をかぶせて小銃を持たせれば兵隊さんの出来上がりと言う時代とは訳が違う。だからできるだけ兵器や兵員を損耗しない方法で戦うことが求められる。短期決戦、瞬間で勝負が決まる近代戦では補充などあり得ない。だからこそ敵の弾が届かないところから相手を叩ける長距離兵器が求められる。手の出しようもない、しかもどこから撃ってくるか分からないところからミサイルが飛んでくると思えば侵略にも二の足を踏むかもしれない。それが抑止力となる。敵の領土内を確実に破壊するなら弾道弾と核弾頭、これに勝るものはない。北のバカ大将がその開発に血道を上げて生き残りを図るのもそこに理由がある。ただ、いずれにしても兵器は道具、使いようで攻撃的にも防御的にもなる。マスコミはいい加減なことばかり書くが、お上は近代戦と武器と言うものをしっかりと説明すべきだろう。お相撲さんのけんかはもうどうでもいい。あ、そう言えば太平洋戦争でも相手の手が届かないところから敵を撃破しようとした海軍の提督がいたなあ。小沢治三郎さんがマリアナ沖海戦でアウトレンジ戦法を使ったが、いかんせん、兵員の練度と兵器の性能、そして数で撃破されてしまった。だからねえ、兵器を持つなら相手よりもすぐれたものを持たないといけない。特に量で来るお隣さんには質で対抗しないといけないんだからいいものを装備しよう、・・(^。^)y-.。o○。
Posted at 2017/12/13 15:23:39 | |
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