これまでおよそ10年間、トヨタはモータースポーツの領域で辛い経験をしてきた。2002年から7年間、F1では莫大な予算を費やしたのに、優勝は一回もできないまま撤退してしまった。また、ルマン24時間レースでは、2016年も2017年も最後の5分でのマシントラブルにより優勝を逃してしまうという悲劇が起きている。
でも、ここ7カ月間はまるで厄払いをしたかのように、トヨタは世界のステージで目を疑うような素晴らしい結果を記録している。まずは、念願のルマンに優勝した。さらに、ワールド・ラリー選手権でも優勝、世界一過酷なラリーと言われているダカール・ラリーでも初優勝を飾った。
アメリカでも、トヨタは勝利を味わった。NASCARキャンピング・ワールド・トラック選手権で優勝、USACナショナル・ミジェット選手権のタイトルも見事に獲得した。日本のスーパー・フォーミュラ選手権では、トヨタが2014年から4年連続でタイトルを獲得している。昨年は惜しくも勝利を逃したけどね。
こういう圧倒的な結果を残すと、海外、特にモータースポーツの本場と呼ばれるイギリスのメディアは騒ぎ出す。オートカー誌、オートスポーツ誌、さらにロイター通信などの有力メディアが「ついにトヨタがルマンで勝利」とか「トヨタが過酷なダカールラリーに初優勝!」などと大きく取り上げた。
また「IOL」という南アフリカの有力誌が「南ア組み立てハイラックスがダカール・ラリーに優勝!」と誇らかにトップページで伝えている。
一方、アメリカの名門カー&ドライバー誌は、トヨタのNASCARの勝利をビッグニュースとして報道し、同時に「2019年には新スープラが、カムリの代わりにNASCARに挑む」とかなり市場を盛り上げている。いうまでもなく、アメリカはスープラのメインマーケットだ。
でも、僕から見ると、その「盛り上がり」こそが重要な言葉だと思う。イギリス、南アフリカ、アメリカでは、トヨタの素晴らしいレース結果を大きく伝え、熱い盛り上がりを見せているのに対して、なぜか日本では全然盛り上がらない。
まずは、これほど多くの勝利を飾ることができた要因として、モータースポーツ好きな豊田章男社長の熱意とサポートは称賛されるべきだと思う。社長本人も、ドイツ・ニュルブルクリンク24時間レースに参戦したこともあれば、日本国内でラリー選手権にもエントリーしてきている。
しかし、それより重要なのは、「Gazoo Racing」というトヨタのレース部門だろう。ワールド・ラリー選手権やダカール・ラリーに優勝ができた主な理由は、日本のGazoo Racingが欧州の優秀なドライバーを招き、現地のモータースポーツ専門家と見事に組んで、彼らと共同開発でレースマシンを作っているからだ。
でも、トヨタがそういう歴史的な勝利を飾っても、あれだけ優勝しても、なぜ国内では盛り上がらないのか。モータースポーツに詳しい同僚と話してみたところ、
「トヨタはそういうレースに優勝しても、世界的に宣伝ができる作戦は立てないからだと言えるでしょう。例えば、三菱は1985年から12回も優勝していますし、優勝したら、世界のプレスが取り上げてくれる作戦を立ててきています。それの効果は大きいです。でも、トヨタはそういうことはしていない。だから、不思議にトヨタがあれだけ短い間で優勝しても、一般人の間では盛り上がらないと思います」という。
それは確かに言えるだろう。でも、もう一つ理由があるんじゃないかなと思う。僕的にはこんな風に解釈している。
トヨタという名門企業は、多くの日本人にとって、お父さん的な、というか、おじさん的な存在だと思う。日本最大の企業であり、最も販売台数も多く、もっとも利益を出す、強大な影響力がある企業だと思う。ある意味でトヨタは日本の経済を支えていると言って間違いない。
そういうお父さん的な存在が何かに優勝しても、国民は少し照れて、心の中では嬉しいのに、公の場ではそれほど盛り上げられない、という感じに見える。そんな気持ちが少しでも前向きに変わると、日本の一般人のモータースポーツに対する関心が回復するのではないだろうか?
トヨタは今年、WRC選手権やダカール・ラリーで優勝候補になると思うけど、個人的には、新スープラはアメリカの一番人気のNASCARでどれほど勝負できるか、そこに期待している。
いろいろ理由はあるんだろうけど要は日本では「モータースポーツ」と言うジャンルはサッカーや野球、ラグビー、テニス、陸上などと言った人間は直接体を使って競うスポーツと同レベルで認知されていないんじゃないだろうか。コーナリングの5Gという遠心力に耐えながら時速300キロで車を走らせるには並外れた体力と運動神経が必要なんだろうけどそのドライバーの努力はカットされて要は「金かけて作った車が走っているだけ」みたいに思っているんじゃないだろうか。日本人にとってスポーツは「汗と涙と努力と根性」で車を走らせるのはそれには該当しないということで人気がないんじゃないだろうか。でもねえ、トヨタのルマン挑戦などはまさしく「知恵と努力と汗と涙に気力と根性」だったんだけどねえ。あれは本当に長い長い苦闘のドラマだった。これからもがんばれ、トヨタ、・・(^。^)y-.。o○。
Posted at 2019/02/06 15:45:37 | |
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自動車 | 日記