国産初のジェット旅客機「スペースジェット」(旧MRJ)の開発が遅れている。型式証明の取得がなかなかできず、試験に必要な試験機の製造も遅れているのだ。三菱航空機はいま何を行っているのか。【毎日新聞経済プレミア・平野純一】
◇カギを握る「試験10号機」
スペースジェットを開発する三菱航空機は12月20日、開発の進捗(しんちょく)を説明する会見を開いた。ANAグループへの1号機納入はこれまで5回延期され、現在の納期の2020年半ばもあと半年余りに迫る。これを守れるかが危ぶまれる中、水谷久和・三菱航空機社長は「依然として厳しい状況であることには変わりない」と述べ、予定通りに1号機を納入できるかギリギリの協議を行っていることを明らかにした。
スペースジェットは航空当局からの安全性のお墨付きをもらう「型式証明」をまだ取得できていない。カギとなるのは、新設計の試験機(試験10号機)の完成だ。三菱航空機は17年、型式証明取得の際の安全性をより高めるため、それまで機体前方の1カ所に設置していた飛行制御機器を前方と後方の2カ所に分散配置して設計し直すことを決めた。10号機はその新設計による試験機だ。この決定により、18年半ばの納期は2年延期され、現在表明している20年半ばとなった。
これまで試験機で、基本的な機体の強度に始まり、暑さや寒さに耐えられるか、ブレーキ、騒音など、さまざまな試験を行ってきた。飛行時間もすでに3500時間で、一般に型式証明取得に必要とされる2500時間を超えている。だが、設計を見直した分、新しい試験機で行うテストもかなり残る。三菱航空機としては、一日も早く新しい試験機を飛ばしたいところだ。しかし、その新試験機がなかなか出てこない。10月31日に親会社・三菱重工業の泉沢清次社長は「年明けには飛ばしたい」と述べていたが、12月20日の会見で水谷社長は「スケジュール全体を見直している中で試験10号機をいつ出せるかについても言える状況にはない」とし、むしろ後退してしまった。
関係者によると、新試験機は現在、分散配置した制御機器が正常に動くか「ファンクション(機能)テスト」を繰り返している。この確認作業の進捗がカギになりそうだ。正常と確認できれば、飛行試験の拠点となっているアメリカ西海岸のワシントン州モーゼスレークの空港に送り、型式証明取得に向けた最終テストの段階に入る。
◇「民間航空機をつくれる国はわずか」
スペースジェットは、まだMRJと呼ばれていた15年11月に試験機が初飛行し、その後計4機をアメリカに送って飛行試験を行っている。ただ、会見に同席したアレックス・ベラミー最高開発責任者は「これまでの試験機はいわば“プロトタイプ(試作品)”で、型式証明を取るのにふさわしい機体ではなかった。新設計の試験機は飛行制御機器の分散をはじめ、17年以降に行った数々の改良により、型式証明を取りにいける機体になった」と述べた。
ベラミー氏によると、17~19年に約900項目にのぼる改良や設計変更を行ったという。主翼、水平尾翼、垂直尾翼の可動翼のコントロール装置改良、着氷防止装置の改良、エアコンダクトの配置変更、機体中央部下の形状の再設計……などなどだ。航空機の開発は、飛行試験を重ねるなかで改良を加えていくもので、確かにスペースジェットは進化しているが、納期があと半年余りに迫るなか、まだ型式証明が取れていないようでは、スケジュール的に非常に厳しいことは間違いない。だが、会見では「いつまでに型式証明が取れる見通しなのか」との質問に、水谷社長は「試験は当局が行うもので、いつごろ取得できるかということは、我々から言えるものではない」と答えるにとどめた。
また、スペースジェットに関する会見では、ほぼ毎回指摘される開発の遅れについて、ベラミー最高開発責任者は「民間航空機をつくれる国は世界に多くないし、つくれる企業も多くない。いま日本と三菱航空機は、そのわずかな国と企業になろうとしている。批判があるのはわかっているが、われわれは結果を出していくしかない」と述べ、理解を求めた。
YS11を作って50年、やっと次の旅客機を作れる機会が来たが、50年と言う空白期間が作り出した溝は技術的にあまりにも深かったというところだろう。技術には継続が何よりも大事だということだ。しかし、ここで止めてしまったら日本はもう二度と旅客機を作れない国になってしまう。関連企業の多いすそ野の広い航空機産業は明日の日本には絶対に必要な産業だ。万難を排してもがんばれ、三菱重工、‥(^。^)y-.。o○。
Posted at 2019/12/30 13:02:32 | |
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