我が国固有の領土である尖閣諸島に対して、中国の挑戦は激しくなるばかりだ。中国公船による「接続水域」での航行は4月14日から一日も途切れておらず(7月19日現在で97日連続)、さらに7月2日から3日にかけては約30時間にわたって領海侵入した。いずれも尖閣諸島の所有権の日本政府への移転(2012年)以来で最長を記録している。中国としてはコロナ禍にかからず海洋進出に変わりはないと内外に示したいのだろうが、日本だけでなく米国も苛立ちを深めている。
ポンペオ米国務長官は7月8日の記者会見で、ヒマラヤ山脈、ベトナムの排他的水域、尖閣を列挙して中国を批判した。これは米国がインド太平洋における中国の攻勢、すなわち中印国境紛争、南シナ海、東シナ海を一体的に捉えていることを意味している。本年6月、ガルワン渓谷での中印両軍の激突では、インド軍兵士20人が死亡したが、死者が出たのは実に45年ぶりのことであり事態は深刻だ。今月に入ってからの南シナ海に関する米国の動きからは、国務省と国防総省の緊密な連携が窺える。国務長官声明で、南シナ海に関する中国の主張を完全に違法(completely unlawful)と断じただけでなく、二度にわたって空母ニミッツ、ロナルド・レーガンが南シナ海で演習を実施しており、米国の忍耐が臨界点に近づいていることを示しているといえよう。
日米安保と尖閣
では日本が採るべき方策とは何か。米国との関係において考えるべき点、そして日本自身の策をそれぞれ具体的に挙げてみたい。尖閣諸島を守る抑止力の重要な柱が、日米安保条約第5条の同島への適用だ。同条によって米国は、日本の施政下にある領域(the territories under the administration of Japan)に対して防衛義務を負っている。加えて米国は尖閣諸島に日本の施政権が及んでいると認識していることから、同島には安保条約5条が適用されるというわけだ。よって日本が尖閣において施政権を行使し続けることは、領土保全の観点からはもとより、日米安保条約の適用を確保する意味においても重要である。そして米国は本年11月に大統領選挙を迎える。現職のトランプ大統領は2017年2月、ホワイトハウスで開催された安倍晋三総理との日米首脳会談ののちに発出された共同声明で、同条の尖閣への適用を明言している。
トランプは選挙戦で日米安保について懐疑的な態度を示していただけに、新政権発足から一か月も経たないタイミングで日米安保、とりわけ安保条約と尖閣との関係を明快に確認することができたのは、安倍政権にとって大きな収穫だったといえよう。トンランプ再選の場合は、ボルトン前大統領補佐官の回顧録’The Room Where It Happened’でも触れられているこの4年間で培われた首脳間の個人的信頼関係が生きてくることになるだろう。
自国の防衛力を高めることも重要
では大統領選挙においてバイデン民主党候補が勝利したらどうなるのか。バイデンと尖閣という組み合わせ思い出されるのが、 2013年11月、中国が東シナ海において「防空識別区(ADIZ)」を一方的に設定した一件だろう。その範囲には尖閣上空も含まれていたことから日本として容認できるものではなく、直後の同年12月に訪日したバイデンは懸念を表明した安倍と足並みを揃えた。バイデンが副大統領として仕えたオバマ大統領は、2014年4月に国賓として日本を訪問した際に尖閣への5条適用を明言しているが、今秋大統領選挙でもしバイデン当選となれば、オバマ政権のラインを引き継ぎつつ尖閣への安保条約適用を改めて表明するように、日本政府は働き掛ける必要があるだろう。そうすれば米国において政権を担うのが共和党であろうが民主党であろうが、尖閣への米国の立場は一貫していることが改めて明確となり、中国を強く牽制することができる。尖閣有事において米国が介入しないかもしれないという幻想を中国に抱かせないためにも。
とはいってもすべての国にとって自国の領土を自分の手で守ることは、国家の使命の根幹をなす。これは日本においても、また尖閣においても例外ではない。大前提としてまずは日本自身による備えを強固にしなければならないということだ。重要なのが南西諸島における防衛力の強化だ。かつて冷戦期には主要な脅威としてソ連が想定されていたことから、北方への備えがメインの課題だった。だが近年、中国が透明性を欠いたまま広範かつ急速に軍事力を増強させていることで状況は一変している。
こうした情勢の変化を踏まえ、2016年に日本最西端である与那国島に、 2019年には宮古島に陸上自衛隊が初めて配備され、沖縄本島より西側の防衛力が格段に向上した。2018年には日本版海兵隊ともいわれる水陸機動団が新編され、本年2月には沖縄で初めて米海兵隊との共同訓練が実施された。以上のような努力によって南西諸島における防衛力の空白は穴埋めされつつあるが、河野太郎防衛大臣が本年1月の会見で述べたように、尖閣に対する中国の挑発が今後も続くのであれば、南西諸島における防衛力強化に一層取り組まざるをえないといえよう。(村上 政俊(同志社大学ロースクール嘱託講師))
米国は中国の尖閣諸島に対する行動に切れているわけではなく、中国のなりふり構わない主権の拡張に切れているんだろう。ただ米国としても「言うことを聞かないなら力づくで思い知らせてやる」と言うわけにはいかないだろうから政治や経済、あるいは同盟国との連携によって対中圧力をかけて行くしかないだろう。中国にしてもあちこちで周辺国と領土や主権に関する摩擦を起こしているのでどこか一か所でも手を抜いたらすべてが崩壊する。それでは困るだろうからすべての局面で強気に出ざるを得ないだろう。中国が欲しいのは先島諸島さらには琉球諸島で尖閣諸島だけを取っても政治的なアピール以外にあまり意味はない。ただ取られたときに米国が取り返してくれるわけではなく日本が自力で取り返さないといけない。それ以前に中国が手を出すのをためらうような防衛態勢を整えるべきだろう。軍事力の本質はその存在によって戦争を未然に防止することだそうだ。戦わない軍隊と言うのは矛盾しているようにも聞こえるが、軍事力の本質はその存在を以って戦争を抑止すること、日本もその意を酌んで然るべき対応をすべきだろう、‥(^。^)y-.。o○。
Posted at 2020/07/23 12:30:55 | |
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