時速500km、実用化に照準
ヘリコプターは垂直離着陸が可能で、空中停止(ホバリング)もできる飛行特性を生かして、人員輸送や救難救急、防災、報道など広く使われており、国土の狭い日本では固定翼の飛行機とほぼ同じ数(800機以上)が運用されている。しかし在来ヘリコプターの主流となる設計は機体上部の大きなメーンローター(回転翼)と機体の向きを維持する尾部のテールローターとの組み合わせであり、この設計では比較的高速な機体でも150ノット(時速278キロメートル)程度が限界である。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)では効率的(燃費消費が少ない)な高速ヘリコプターの開発と欧米の同種類の開発中の機体よりも高速な時速500キロメートルを目指して、主翼の両端に電動駆動の「アンチトルク」用プロペラを取り付けた独自概念の機体を提案している。アンチトルクとはメーンローターの回転の反作用で機体が逆回転するのを防ぐ力で、必要な最大パワーはメーンローターの約1割で済むため、軽量で小さなモーターとプロペラで十分である。高速前進飛行に必要な推進用プロペラは尾部に取り付け、在来のヘリコプターのテールローターと同じ駆動方式で実現可能である。
飛行に関しては、在来ヘリはメーンローターの回転面を前方に傾けて推進力を得るため、胴体も前のめりになり、前面抵抗面積が増えてしまうが、JAXAが提案している複合ヘリコプターはメーンローターを機体の姿勢維持に主に用いるため、機体の姿勢をほぼ水平に維持したまま、効率的な高速飛行が可能である。さらに、メーンローターの飛行条件も在来ヘリと大きく異なるため、メーンローターの飛行方向と逆に回転している後退側での逆流領域が大きくなっても、ローターの抵抗が低くなるように、最適なローター・ブレード形状を設計し、特許も取得している。また、ホバリング時は主翼に設けたフラップを下げて、ローターの吹き下ろし風が主翼に当たって生じる下向きの抵抗を極力下げている。
JAXAは2014年からこうした高速化に伴う技術課題の研究に取り組み、20年度からは効率的なメーンローターブレードの設計と実用化に向けた研究開発のターゲットを絞り込んで、航空機製造メーカーとも共同研究を進めている。将来的にはこれらのメーカーに技術移転を行い、実機開発に結び付くことを目指している。JAXAは宇宙開発以外に、航空機の先端技術研究も実施している。世界一高速なドクターヘリを開発し、日本全国土を既存の基地病院から15分以内で救急医療が届くようにしていきたい。(田辺安忠(JAXA航空技術部門航空システム研究ユニット主幹研究開発員))
ヘリの高速化は様々な試みがなされているが、未だに実用化したものはない。こうしたヘリが成功すれば画期的な機体になるだろう。オスプレイのようなエンジン自体を動かす機体は静止時の推力や安定性などに問題がありそうだが、これなら安定した垂直離着陸が出来そうである。ヘリはベトナム戦争時代に配備されたHU-1が現在も改良されて使用されているなどほとんど発達の終末点に達している。実際にこうした機体が実用化されるまでにはまだまだ時間がかかるだろうが、実用化できれば様々な用途に活用できるし、産業としても有望だろう。ぜひこうした新規技術の開発に力を入れて明日の産業の基盤としてほしい。がんばれ、JAXA、‥(^。^)y-.。o○。
Posted at 2020/09/09 18:42:30 | |
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