2021年07月17日
零戦の後継機で烈風という艦上戦闘機がある。紫電、紫電改、雷電などの局地戦闘機と違い、空母で運用する海軍の正統派戦闘機でエースとして君臨する立場となる戦闘機である。この戦闘機はエンジンの選定にかかる性能不足やエンジンの換装、地震や米軍の爆撃などによる工場の被害などで正式化はされたものの実戦配備に至らずに終戦となった戦闘機でこの戦闘機が2千機あれば戦局をひっくり返せると試験担当の海軍幹部が言ったとか言う幻の名機とも言われれば、登場時期を考えれば戦闘機としての性能不足は明らかでどうにもならない駄作とも言われる。
実際のところ1944年の後半期に登場した戦闘機としては速度、上昇力など確かに物足らない。この機体が1945年の早い時期に登場したとしても戦況をひっくり返すどころではなかっただろう。それは何が問題だったのかと考えるが、三菱側は海軍が推した誉エンジンの馬力不足を性能不足の理由にしている。確かに機体の規模からすると誉ではやや力不足だろう。しかし海軍の紫電改や陸軍の疾風は誉でそれなりの性能を出している。烈風はこの2機種よりも一回り大柄の機体だが、誉装備時の飛行性能が時速550キロ、6千メーターまでの上昇時間が10分とかあまりにもひどい。しかし機体もきれいに成形されていて空力など特に大きな問題があるようにも見えない。
では何が悪かったのか。それは翼面荷重だろう。烈風は海軍から翼面荷重130キログラム/㎡を指定され、翼面積が30.86平方メートルとなった。この翼面積は零戦・疾風が21平米、紫電改が24.5平米に比較すると異常に大きな値ではある。どのくらいかと言うと畳19畳分ほどにもなる。胴体左右に床の間付きの9畳間が1部屋ずつついているという状況である。当時の戦闘機の翼を見ると「うわ、でかいなあ」というほど大きい。それでも130キロは異常だ。零戦も52型で翼面荷重は148キロになっていた。他の機体はどうかと言うと紫電改が160キロから170キロ、疾風が185キロから190キロ、陸上戦闘機である疾風の翼面荷重が高いが、烈風も艦載機であることを考慮しても175キロ前後が妥当な数値と思う。米軍のP51、P47などは200キロ超、海軍機のコルセア、グラマンF6F戦闘機などは190キロほどだったことを考えても妥当な数値だろう。そうすると翼面積は27平米ほどとなり翼は2.5畳ほど小さくなる。
烈風も最終的に三菱のハ43に換装した後は機体重量が増加して翼面荷重は150キロほどになっていたそうだが、それでもまだ低すぎる。翼面積が27平米程度になると床の間付き9畳間が7.5畳間程度になる。翼面積が畳3枚分ほど減ることになる。そうすれば重量的にも軽くなり空力抵抗値も下がって速度も650キロほどは出るのではないだろうか。この辺は計算したわけでもないし、実機を飛ばすこともできないので何とも言えないが、間違いなく速度性能や上昇力は向上したはずである。ただその分運動性は低下しただろうが、くるくる回れる飛行機が空戦に強いわけでもない。
海軍の艦上戦闘機は零戦が第一線を守り通してきたが、終盤はエンジンの馬力不足で米軍の新型戦闘機に対抗しきれなくなっていた。まあそれは戦闘機の性能だけの問題でもないが、・・。零戦は軽戦闘機としてはよくできた戦闘機だったが、52型でそれまでの格闘戦重視の軽戦闘機から一撃離脱の重戦闘機へと変貌していた。それだから航続距離が短くなるだのなんだの言わずにここでエンジンを三菱の金星に換装しておけばよかった。性能強化のためのエンジンはあったのだから、・・。そうすれば米軍機とももう少し有利に戦えただろう。そして19年後半に翼面積を縮小した烈風にバトンタッチしていけばそれが最善の道だっただろう。
ではそうすれば戦局が変わったかと言えばそんなことはない。翼面積を切り詰めて最高速度が650キロ以上になった烈風が2千機あろうが3千機あろうが、日本は負けた。まあいいところ個々の戦闘の局面でもう少しボロ負けせずに頑張れたんじゃないかと言う程度だろう。太平洋戦争は兵器を大量に戦場に投入できた国が勝つ戦争だった。国内に資源を持たず、工業力も微弱な日本が世界一の工業大国で資源もある米国に勝てる戦争ではなかった。だから最もいい方法は米国にはケンカを売らないで一歩引いてケンカにならない程度の関係を保っておくことだっただろう。米国に比べて全般的に先端技術が遅れていた日本で米国の戦闘機を性能的に凌駕する機体を作ることは難しかっただろう。それでも工夫すれば何とか対抗できる戦闘機は作れただろう。ただ日に日に傾いていく戦況に焦りを感じてこれを逆転するような機体を作ろうなどと考えたことが烈風と言う戦闘機の悲劇だったのかもしれない、‥(^。^)y-.。o○。
Posted at 2021/07/18 00:20:00 | |
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