戦艦「大和」には当時の最新技術であったレーダーが多数装備されていた。その役割とメカニズムをわかりやすく解説。一般論として、太平洋戦争中の日本は、電子技術でアメリカ、イギリスに遅れをとっていたとされる。たしかに使用される真空管などの部品の品質や精度、また、技術面でも遅れていたのは事実だ。だが、実務をともなわない理論面では十分に世界水準にあった。そのため、日本海軍でも「電波探信儀(でんぱたんしんぎ)」と呼ばれたレーダーが開発されており、すでに開戦直前の時点で実用の域に達していた。そして当然ながら、日本海軍が世界に誇る最新鋭巨大戦艦「大和」に、それが積まれていないわけはなかった。
最初に積まれたのは2号1型電波探信儀で、大和が装備したのは1942年夏であった。当初は実用試験を兼ねた仮の装備とされ、使用目的は捜索兼対水上射撃照準だったが、海面が起こす反射を強く拾ってしまうため、主に対空捜索監視に用いられた。航空機は、編隊なら100km前後、単機なら70km前後の距離で探知できたため、十分に実用できるものだった。ところが主砲の砲撃の衝撃で故障してしまうなどの初期トラブルが頻発。その解決に加えて、他にもいろいろと改良が施された。その結果、対水上射撃照準もできるようになり、35000m前後で戦艦サイズの船を探知でき、15000m前後なら主砲弾による水柱も映るため、実戦での使用が可能となった。
2号2型電波探信儀は1843年夏に積まれたもので、主に対水上捜索用だった。戦艦サイズの船なら35000m前後、駆逐艦サイズの船なら15000m前後で探知でき、15000m前後で水柱も映る性能だったため、これも実戦で使用することができた。その後、2号2型改3が積まれると、より精度が上がって光学測距儀を上回る精度を示したので、両者を併用した主砲射撃が行えた。
1号3型電波探信儀は1944年初期に積まれたもので、対空監視用だった。2基が装備され、編隊なら100 km前後、単機なら50 km前後で、3km前後の測距誤差で探知できた。
このように、大和は何種類ものレーダーを積んでおり、実戦でも、襲来する敵航空機の発見などに効果を発揮している。つまり「日本海軍にはレーダーはなかった」という「風聞」は、技術面での遅れを極端に表現したものといえよう。とはいえ、やはりアメリカやイギリスには、性能面でも運用面でも追い付いていないという現実はあったのだが。(白石 光)
日本海軍にもレーダーはあった。主に使われたのは大型艦用の対空捜索レーダーである二式二号電波探信儀一型、小型艦用の対空捜索レーダーである三式一号電波探信儀三型、水上捜索用の仮称二号電波探信儀二型でほかにも航空機用、陸上用、試作レーダーが存在した。日本のレーダーは大出力マグネトロンが製造できなかったこと、真空管の品質が悪く作動不安定だったこと、極超短波レーダーを実用化できなかったことから探知精度に問題があったことなどが言われているが、航空観測や光学照準と組み合わせるとそれなりに実用のレベルには達していたようだ。米軍のレーダーについて高性能と言われるが、スリガオ海峡海戦では米艦隊のレーダー射撃の命中率が1%以下で戦艦山城、扶桑を沈めたのは魚雷艇や駆逐艦の魚雷攻撃だったそうだ。ただ技術的な問題もさることながらレーダーに関する海軍の認識が問題で研究開発に遅れを取ったと言うのが実情のようだ。「電波など出したら敵に発見される」とか「あんな花魁の簪のようなものを戦艦につけられるか」などと言う意見が多かったとか。ただ早期から開発を行ったとしても技術的に遅れていた日本には英米を凌駕するようなレーダーは作れなかっただろうし、仮にできたとしても国家総力戦では国力の劣る日本が英米を打ち負かすと言うことはなかっただろう。実戦ではいろいろ問題があった日本のレーダーだが、戦後南氷洋に捕鯨船団が出漁する際、GHQの担当官が乗船するのが義務とされていたが、レーダーも持たない船団に乗船することをGHQの監督官が拒否、占領下の日本にレーダーの開発をさせるわけにもいかず、そこで米軍が押収していた仮称二号電波探信儀二型が注目され、これを装備したが、「精度が悪くて役に立たないのでは、・・。」という前評判に反して予想外の大活躍で1950年(昭和25年)の第五次南氷洋捕鯨まで使用されたそうだ。この間、二二号電探の保守点検と部品供給を行ったのは旧帝国軍時代の開発者や製作担当者だったそうだ。このレーダーはミッドウエイ海戦の際に試験的に戦艦日向に装備されていたそうだが、天候が悪い中、艦隊の各艦の位置探査に大活躍をしたそうだ。そんなわけで日本のレーダーもそうそう粗悪でもなかったようだが、コードやコンセントなどの製造レベルも低くそうした周辺技術の低さもレーダーの性能に影響したようだ。それでも射撃レーダーとして相応の性能もあり、また戦後に捕鯨船団で使用されて思いの外の大活躍をしたことで良しとしておくべきだろう、・・(^。^)y-.。o○。
Posted at 2022/07/06 17:56:34 | |
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