2022年10月26日
帝国海軍はマリアナ沖海戦で空母機動部隊が壊滅して再建中ではあったが、米軍の進撃に母艦航空隊の再建が間に合わず再建途中で米軍のフィリピン進攻を迎える。フィリピンを失えば東南アジアの石油や資源を輸送するルートが完全に途切れて敗戦は必至であることから連合艦隊の全力を挙げて進攻米軍の撃破を試みた。それは残存空母機動部隊を囮にして水上艦部隊をレイテ湾に突入させるという「殴り込み作戦」と称する前代未聞のものだった。
しかし空母機動部隊の航空兵力はほとんど戦力とは言えないようなもので陸上航空兵力もダバオ事件や台湾沖航空戦で消耗してしまっていて突入艦隊のエアカバーは皆無という状態だった。そして1944(昭和19)年10月24日から翌25日にかけて帝国海軍は残存艦船、空母を除けばまだまだ有力な水上艦艇は大部分残っていた、をかき集めてレイテ湾に向かわせてフィリピン・レイテ湾に集結していたアメリカ輸送船団を残存水上艦艇をすり潰しても構わないという決意で撃滅しようとした。
帝国海軍は第一遊撃部隊を主力に囮の小沢機動部隊、西村艦隊、志摩艦隊の4部隊に分かれてレイテ湾を目指した。この海戦には日米20万の将兵と280隻の艦船が参加した史上最大の海戦と言われている。囮の小沢機動部隊は米機動部隊をレイテ島付近から北方へと釣り上げるために目立った機動をしてエンガノ岬沖海戦で保有空母4隻を撃沈されたが、米機動部隊を北方につり出すことに成功した。
第一遊撃部隊はシブヤン海で米軍機の激しい空襲を受けて戦艦武蔵を失い、大和以下残存艦艇も多かれ少なかれ損傷を受けた。米軍の空襲のあまりの激しさに一時退避のために反転したりもしたが、それでもレイテ湾を目指して進撃を続けた。西村艦隊はスリガオ海峡で米艦隊の待ち伏せを受けて戦艦山城、扶桑を始め、戦力のほとんどを失い、後続の志摩艦隊も西村艦隊の壊滅を知って反転回避した。戦艦大和など数十隻の艦艇を有する第一遊撃部隊は米軍艦載機の波状攻撃で損害を受けるも進撃を続け、レイテ湾口で米軍の護衛空母部隊と遭遇、これと交戦して護衛空母1隻、護衛駆逐艦2隻を撃沈するが、米軍艦載機の反撃で重巡部隊などに大きな損害を受ける。
第一遊撃部隊は米軍機動部隊を正規空母と誤認、2時間ほどの追撃戦で正規空母4隻を撃沈したと認定し、追撃を中止して艦隊をまとめてレイテ湾を目指す。そしてレイテ湾口間近まで進撃したが、北方に米機動部隊を発見したとの電報を受信してこれと決戦を挑むとして反転してしまう。そしてレイテ沖海戦は終了する。しかし米軍空母機動部隊は存在せず、電報の発信先も不明でこの反転は謎の反転として歴史に謎を残し、様々な議論を呼ぶことになる。
もしも第一遊撃部隊が反転しなければレイテ湾に到達できたかという問題は様々言われるが、湾口を守っていた米戦艦部隊は西村艦隊との交戦で弾丸を撃ち尽くして残弾がほとんどなかったとか、米空母部隊は小沢艦隊につり出されて付近にいなかったとか、そこに戦艦大和を中心とした第一遊撃部隊が突入すれば米軍の上陸船団を撃滅できたとか様々言われるが、米軍戦艦部隊は残弾は十分あったと言うし、レイテ湾付近には米軍護衛空母部隊があって練度などは正規の艦載機部隊には及ばないが、数百機の戦力を有していたので第一遊撃部隊がレイテ湾に突入しても米軍戦艦部隊と護衛空母部隊の迎撃を受けて激戦の結果、壊滅していただろうと言うのが、最近の有力説のようだ。
ただ最初の作戦目的が水上艦艇をすべてすり潰しても米軍上陸部隊を撃破すると言うのが作戦の骨子だったのだからそれはそれでよかったのかもしれない。帝国海軍は精緻な作戦計画を立てて戦力を分散するが、初めから全滅を賭して作戦をするなら囮部隊の小沢機動部隊、そして突入部隊は第一遊撃部隊に西村、志摩両艦隊を合体させて2部隊でよかったように思う。艦隊を集中していたら勝てたかと言えばそんなことはない。やはり負けただろう。ただ大戦力の方が分散するよりも各個撃破されにくいのは確かだ。
そして「謎の反転」だが、第一遊撃部隊の司令官の栗田中将は「逃げの栗田」と言って海軍内部ではあまり評判が良くなかったらしい。反転は諸事情不明の中で激烈な航空攻撃を受け、被害を出したが、最後には米機動部隊と遭遇戦を戦い、正規空母4隻など相当数を撃沈破したと認めたので状況不明な中全滅を賭してレイテ湾に突入しても十分な戦果を挙げられるかどうかも分からいない中で米空母4隻撃沈を作戦の戦果として反転帰投しても言い訳ができると踏んだのではないだろうか。「北方に米軍機動部隊あり」は偽電だろう。
帝国海軍には敵の艦船撃滅を主任務とし、輸送船などは手柄にならないと言う不文律があったようだから虎の子の戦艦部隊と輸送船が差し違えるなどと言うのは潔しとはしなかったし、命惜しさもあったんだろうけど激烈極まる空襲を受け続けたことを考えれば命が惜しくなっても仕方がないだろう。それは門外漢がとやかく言えることではない。仮に第一遊撃部隊が全艦突入してレイテ湾の輸送船を撃滅して上陸した米軍に艦砲射撃を加えて大損害を与えたとしてもそれは単に局地的な勝利であり米軍のフィリピン進攻に若干の遅れを生じさせるだけで結果は同じ事だっただろう。それで戦局が変わるなどと言うことはあり得ないことだっただろう。
それにマリアナ沖海戦で負けた後から「殴り込み」などというヤクザまがいの作戦が大手を振ってまかり通ることを苦々しく思っていた海軍幹部も相当数いたようだ。貧すれば鈍すると言うが、航空攻撃に裸の水上部隊は対抗し得ないと言うことが明らかな状況で全くエアカバーもなしに大規模水上艦隊を敵の真っただ中に突っ込ませるなどと言うこと自体負け戦と言うことだろう。
太平洋戦争はガダルカナル島争奪をめぐるソロモンの戦闘が終了した時点で日本の負けは明らかだった。その後の戦闘は米軍にとっては「残敵掃討戦」ともいうべき戦いだった。本来ならマリアナ沖海戦で負けてグアム・サイパンを取られたところで講和すべきだったんだろうが、戦争は始めるよりもやめる方がはるかにエネルギーを必要とすることの典型的な例だろう。
レイテ沖海戦は仮に日本側が勝利を収めたとしてもそれは局地的な勝利であり、戦争の流れを変えるようなものではなかっただろう。戦後負け惜しみのように「もしも突入していれば、‥」と言うが、突入していても双方に被害が出ただけで戦争の流れは何も変わらなかっただろう。国家総力戦は戦闘地域にどれだけの戦力を投入できるかで勝敗が決まるものでレイテ戦の時には日米の戦力は天と地ほども開いてしまっていて何をしても日本に勝ちはなかっただろう。70年前に太平洋で血で血を洗う様な激戦を繰り広げた日米は今ではお互いになくてはならない盟友となっている。戦死した日米将兵の冥福を祈る。
Posted at 2022/10/26 22:59:45 | |
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2022年10月26日

ニジニ・タギル、ロシア、10月26日(AP)― ウクライナで軍事作戦が続く中、ロシアの兵器枯渇を疑わせる西側の報道に対して、ロシア政府高官は10月24日、当局が兵器生産を強化する措置を講じたと述べた。
プーチン大統領が議長を務めるロシア安全保障会議のドミトリー・メドベージェフ副議長は同じ日、ウラル山脈の都市ニジニ・タギルにある国内トップの戦車工場を訪れ、工場側と増産方法について協議したと、自身の公式テレグラムチャンネルに投稿した。
メドベージェフ氏はその中で、海外の観測筋が「ロシアは間もなく兵器の備蓄を使い果たす」と予測していることに触れ、そうした予測は外れることに決まっていると付け加えた。その上で、「戦車や大砲から精密ミサイルやドローンまで、武器や装備の生産は数倍になっている」と述べた。
敵側から「お前の国は兵器が枯渇しているだろう。生産も経済制裁で思うに任せずこれまでため込んだ備蓄も底をつくだろう」と言われて「はい、その通りです」という国はないだろう。日本だって海上封鎖と戦略爆撃で資源は尽きて生産設備は壊滅状態だったが、それでも「もう兵器は作れません。壊滅です」とは言わなかった。兵器の生産もものによるんだろうけど精密誘導兵器などはもう底をついているだろう。いいところベトナム戦争レベルだろうか。朝鮮戦争かな。いずれにしてももうロシアに勝ち目はないのだからさっさと軍隊を引けばいいのだが、なかなかそうもいかないんだろう。困ったものではある、・・(>_<)。
Posted at 2022/10/26 18:42:29 | |
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