韓国製戦車をポーランドが大量購入
2022年は、2月に起きたロシアによるウクライナ侵攻で、再び戦車を中心とする陸戦兵器に注目が集まった年でもありました。当初は「ジャベリン」のような歩兵携行式の対戦車兵器や対地攻撃用ドローンなどが脚光を浴び、一時は「戦車不要論」のような論調も見受けられたものの、その後の研究などから、現実には従来と変わらず戦車は「陸戦の主力」であると見直されています。
こうしてウクライナ侵攻で“戦車が復権”した一方、2022年には様々な新戦車が登場し、これらもまた世界中から注目を集めました。そこで今年を象徴するような戦車を5車種チョイスし、どこがポイントなのか振り返ってみましょう。
K2「ブラックパンサー」:韓国
まずはMBT(主力戦車)ですが、ロシアのウクライナ侵攻で、一躍その名が知られるようになったのは韓国のK2「黒豹(ブラックパンサー)」ではないでしょうか。もっとも、本車の場合は実戦に投入されたわけではなく、手持ちのT-72戦車をウクライナに提供したポーランドが、西側兵器と互換性があるという観点から、大量導入を決めたことで注目を集めたのです。というのも、ポーランドはK2戦車を採用する前にアメリカ製M1「エイブラムス」戦車の導入も決めているからです。韓国はアメリカとの強い同盟関係を維持しており、とうぜんながらK2はM1を念頭に置いて、高いインターオペラビリティ(相互運用性)を考慮して設計されています。そういったことも加味してポーランドはM1と共にK2を装備・運用することにしたのでしょう。なお、ポーランドは他にもドイツ製の「レオパルト2」戦車を運用していますが、K2とM1は「レオパルト2」と弾薬の互換性を有しているため、そういった点もメリットです。
ヨーロッパとアメリカ双方で新戦車が爆誕!
2022年はまったく新しい戦車がデビューした年でもあります。
KF51「パンター」:ドイツ
ドイツのラインメタル社は、6月にパリで開催された国際武器展示会「ユーロサトリ2022」において、KF51「パンター」を発表しました。本車の特徴は主砲に130mm滑腔砲を備え、防御力を強化しているにも関わらず、重量は既存のレオパルト2A6よりも軽い59tに抑えている点です。なお、乗員数は4名。従来の戦車と同じく車長、砲手、操縦手(運転手)のほかに、各種の無人兵器などの指揮・統制を任務とする人員1名を乗せられるとのこと。また、徘徊型自律兵器の運用も可能で、現状では最先端のMBTのひとつといえます。
EMBT:ドイツ+フランス
同じく「ユーロサトリ2022」で披露されたのが、ドイツの防衛企業KMW(クラウス・マッファイ・ヴェクマン)と、フランスの防衛企業ネクスターの合弁企業であるKMWネクスター・ディフェンス・システムズ(以下KMWネクスター)が開発した「EMBT」です。EMBT自体は2018年に開催された前回のユーロサトリで発表済みですが、そのとき披露されたのは、ドイツ製「レオパルト2」戦車の車体にフランス製「ルクレール」戦車の砲塔を組み合わせた技術実証車であり、あくまで “こういうことも可能”を見せるためのレベルでした。
しかし、今回披露されたEMBTは名称こそ変わらないものの、車体、砲塔ともに新デザインのものとなっており、特に砲塔については両サイドが大きくえぐられ、見た目のインパクトに驚きを覚える形状に改められていました。現状ではあくまでコンセプトモデルだそうですが、今後どのように発展進化するのか、はたまた試作だけで終わるのか、興味は尽きない戦闘車両のひとつです。
「エイブラムスX」:アメリカ
「ユーロサトリ2022」から4か月後の10月、ワシントンDCにおいて開催されたアメリカ陸軍協会主催の武器展示会「AUSA」に合わせて、ゼネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ(GDLS)が発表したのが、「エイブラムスX」です。
現代版軽戦車? 米軍が導入決めたMPF
「エイブラムスX」の特徴は、機動性と輸送性を向上させるために軽量化した点で、従来のM1A2「エイブラムス」と比べ約半分の燃料消費量で活動することが可能だそう。それに伴い、燃費向上を図るべくパワーパックをハイブリッド仕様に換装。この改修により、隠密斥候(サイレントウォッチ)能力の強化や、静粛機動(サイレントモビリティ)性も向上しています。搭載する砲塔は無人式で、これにより乗員は既存のM1「エイブラムス」の4名から3名へと減っているほか、全員が車体中央に並列で乗り込む形となっています。現時点ではまだコンセプトモデル(テクノロジー・デモンストレーター)に留まるものの、今までは肥大化する一方だったM1「エイブラムス」シリーズの新たな方向性として、注目すべき存在のひとつといえるでしょう。
MPF:アメリカ
「エイブラムスX」が発表される一方、今年アメリカ陸軍が新たに導入を決めたのが、MPF「グリフィン」です。MPFとは「Mobile Protected Firepower」の略で、機動防護火力車両と訳されるようですが、要は軽戦車の1種です。かつてのM551「シェリダン」空挺戦車の代替と、歩兵旅団戦闘チーム「Infantry Brigade Combat Team:IBCT」の火力支援のための車両で、105mm戦車砲を搭載し、空輸が可能で機動力に優れているのが特徴です。簡単にいえば第2次世界大戦中の対戦車自走砲または駆逐戦車の現代版ともいえるもので、「ヘビー級」というべきM1シリーズのMBTを並行して運用するアメリカだからこそ、逆に使いみちのある戦闘車両といえるでしょう。
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ウクライナの大地で戦車と戦車が激突した2022年。戦車の世界では、「重と軽」の両立が際立った年といえそうです。(白石 光(戦史研究家))
ロシアのキーウ侵攻でロシア軍戦車がウクライナの対戦車ミサイルに叩かれたのは森林地帯でウクライナ歩兵が身を隠せる環境であったこと、ロシア軍の戦車と歩兵との共闘がうまく行かず前面掃討が不徹底でウクライナ軍歩兵を掃討できていなかったこと、ロシア軍の補給がうまく行かずしばしば侵攻が停止したことなど特殊な事情があったようだ。通常であれば24キロも重量がある対戦車ミサイルを担いだ無防備の歩兵が戦車に接近してこれを破壊すると言うのはかなり難しいそうだ。財務省はウクライナの特殊事情を利用して戦車を廃止して安価な対戦車ミサイルに切り替えるよう防衛相に迫ったそうだが、本来は戦車は戦車で装備してそのうえで歩兵には対戦車ミサイルを持たせるのが常道だそうだ。戦車には戦闘ヘリだのミサイルだのといろいろ敵も出現するが、やはり戦車は陸戦の王者ではある。ポーランドが韓国の戦車を大量に購入したのは価格が安いことに加えて自国で生産することを認めさせたので不具合は適時修正するつもりなんだろう。陸自も戦車や重火砲を削減しているが、戦闘ヘリや偵察ヘリも削減されて2千人を海自と空自に転用するとか踏んだり蹴ったりではある。しかし戦車の代わりは戦車で他の何物も戦車の代わりにはなり得ない。防衛費を増やすのであれば戦車や野戦重砲など重火力もしっかり装備してほしいところではある。戦車を装備していれば侵攻側もそれに見合う分の戦車を海路で運んでこないといけない。それには大型の運搬船舶を必要とするが、戦車がなければ軽装備の部隊で足りる。戦車を装備することは抑止力にもつながる。戦車の装備数をもう一度しっかり見直すべきだろう、・・(^_-)-☆。
Posted at 2023/01/01 18:12:09 | |
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