プライベート皆無な艦内生活
2018年12月21日、防衛省は海上自衛隊の潜水艦の乗組員に、女性自衛官を起用できるよう配置制限を解除しました。そして2019年9月には、その潜水艦に女性自衛官が“お試し”で乗艦していることもニュースになりました。ここでふと疑問が。なぜいままで女性は潜水艦に乗艦できなかったのか、ということです。実はそれには、潜水艦特有の過酷な生活が原因の一端になっていたといわれています。潜水艦というのは長期間に渡り、多くの乗組員が協力しあって生活しなければいけません。そして艦内は、乗組員の人数に対してあまりに狭すぎます。個室を持っているのは艦長だけです。ほかは各所の設置されたベッドで寝ますが、実はそのベッドも、昔は人数分ありませんでした。
しかもこれは、第2次世界大戦時の潜水艦の話ではありません。自衛隊が1979(昭和54)年まで運用していた、はやしお型という潜水艦でもそうでした。スペース確保のため、乗組員の3分の1が常に起きていて当直勤務についているという判断から、ベッド数はその分を減らした最低限にしていたそうです。このようなことは自衛隊に限った話ではなく、つい最近まで、大型でスペース確保が容易な原子力潜水艦をのぞけば世界共通のことでした。なお、当番の終わった乗組員は、別の人がさっきまで使っていた手近なベッドにもぐりこみます。すると前に寝ていた人のぬくもりが残っているので、「ホット・ベッド」と呼ばれていました。
しかし、ベッドがあるだけまだ恵まれているのが潜水艦という乗り物です。第1次世界大戦から第2次世界大戦期のドイツ潜水艦、いわゆる「Uボート」は、ほかの国の艦より小型なものが多く、魚雷発射管室の空いたスペースにハンモックを吊るすなど、条件はより過酷だったそうです。
食事は軍隊内で一番豪華! だけど…
潜水艦での食事は、万国共通に軍隊内で一番豪華といわれています。なぜかといえば、「せめてご飯だけでもちゃんとしたものを食べさせなきゃ」という精いっぱいの配慮からです。プライベート空間は皆無、そのなかでハードワークをこなす乗組員のストレスはかなりのもの。仮に休憩中でもほかの艦船とは違い、ほとんど艦上体育もできないため、読書くらいしかすることがありません。ちなみに旧日本海軍の潜水艦では潜航中は酸素の消費も抑えるために基本的に寝ることくらしかできなかったそう。こうなると、食べることくらいでしかストレス解消できないという訳です。
物を落とすだけで命取りに
潜水艦に一番求められているものは、見つかることなく敵の領域に入りこむ隠密性です。見つかった時点で終わりです。潜水艦を探そうとする相手は、海中ではレーダーがきかないので、ソナーという音響を頼りに探索します。敵地で、普段の海中とは違う音を少しでも立ててしまった場合、海水を伝わった音を拾われ、艦が発見される危険性はかなり上がります。現在は無反響タイルの採用などで隠密性はさらに高まっていますが、それでも潜水艦の乗組員は生活音などの物音を立てないように徹底されています。物を落としただけでも注意されるほどです。
かつての最大の問題はトイレ
いまでは問題なくなっていますが、第2次世界大戦中の各国の潜水艦では、トイレの問題もかなり深刻でした。潜航中にトイレが使用できないタイプの潜水艦もあり、その場合はフタ付きのバケツで用を足すこともあったそうです。旧日本海軍の場合はその面では恵まれており、潜航中でも使用できたそうですが、排泄物を一時貯めておくタンクに高圧空気を注入して海中に排出する方法をとっていたため、トイレ内の圧力が低いとタンクから逆流することがあり、その際は艦内が大変なことになったそうです。
しかし、艦内に汚水があふれるくらいならばまだマシな方なのが、昔の潜水艦の過酷さ。ドイツのU-1206という潜水艦は1945(昭和20)年4月14日に、乗組員がトイレ操作を誤ったことで潜航不能に陥りました。同艦のトイレ排水機構はとても複雑で、バルブを開閉する正確な順を教わる必要があったそう。しかもちょっとでも操作を間違えると、すさまじい勢いで逆流する仕様になっていたとか。その逆流した汚水により、艦内には浸水が発生。潜航時に動力として使う蓄電池が汚水に触れてショートし、猛毒の塩素ガスが発生するという最悪の事態になり、緊急浮上しました。この浮上した場所が悪く、イギリス軍の哨戒機にすぐ見つかり自沈処分することに。乗組員はイギリス海軍の捕虜になったそうです。
2019年現在、海上自衛隊が所有する潜水艦は、冷暖房完備でシャワーなどの設備も充実しており、昔とは比べものならないほど快適になっています。前記した女性自衛官の体験乗船では、そのために仮設のドアなどをつける処置もしたそうです。近い将来、女性乗組員も誕生するかもしれませんね。しかし、依然として潜水艦乗りになるためには、心理適正検査でストレス耐性が強いと判定されなければいけないそうで、選ばれし者しか働けない現場であることは事実のようです。(斎藤雅道(ライター/編集者))
海上自衛隊の深刻な人員不足解消の有力な施策の一つが女性隊員の登用だそうでこれは海自だけでなく3自衛隊共通の施策でもあるようだ。大きな船ならいいが、潜水艦などのスペースが限られた船になるとなかなかプライバシーの確保に難しいものがあるだろう。昔の海軍では魚雷の上で寝たり、食い物も生鮮食品などはあっという間になくなってしまって後は缶詰ばかりで缶の匂いが鼻について食えなくなるなんてこともあったようだが、今はそんなこともないだろう。それでも決して全く閉鎖された狭い空間の中で男女が一緒に勤務するとなると難しいものがあるだろう。それでも艦船など居住区があるものはいいが、陸自など実際に戦争になったらどうなるんだろう。野戦で敵に包囲されてしまったら男だ女だ言ってられなくなるだろう。また男女の区分と言っても居住区が別だと「敵襲ですから起きてください」なんて悠長なことも言ってられないだろう。そういう悲惨なことが起こらないよう祈りたいが、平時はいいとしても有事の男女混合と言うのはなかなか難しそうだ、・・(^。^)y-.。o○
Posted at 2019/12/19 11:24:47 | |
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