
最近、とかく話題に上る「尖閣諸島問題」。日本は「尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らかであり、現に我が国はこれを有効に支配しています。したがって、尖閣諸島をめぐって解決しなければならない領有権の問題はそもそも存在しません。」としていますが、中国そして台湾も自国の領土であると主張しており、外交問題となっています。
日本の政府やメディアは口をそろえて「尖閣に領土問題は存在しない」、「中国の主張はまったくのでたらめで、根も葉もない言いがかり」として、「間違った歴史教育に中国国民はだまされている。」としています。また「民衆の反日デモを中国政府が容認、あるいは黙認していているのは、中国政府に対する不満が暴発するのを防ぐ『ガス抜き』であるともしています。戦後生まれの私にはこういう領土問題がどうして発生するのかよくわかりません。日本のメディアが過熱気味に、国民のナショナリズム扇動ともとれる政府の弱腰批判報道ばかりなのが意外に思えます。
一番違和感を覚えたのは8月15日の終戦の日。毎年TVで反戦ドラマが流れ、いつもならメディアも反戦と平和に染まるこの日が「尖閣」と「竹島」問題に終始していて、「国民は政府の毅然とした対応を望んでいる」とする反中、反韓報道に染まった日です。私のまわりでも「自衛隊を派遣するべき」とか、「中韓国製品は不買運動をするべきだ」などというのばかりです。
どちらかというと私もかなり保守的なほうだと思いますが、今回のような急激な国民の右傾化にはちょっと戸惑ってしまいます。少し前にメディアが「政権交代」報道一色になり「一度民主にやらせてみよう」という風が吹いたのと似てる・・・?というと怒られてしまうでしょうか。しかしこういった扇動報道により戦争に突入することになった歴史もある日本の国民性ですから、私は同じような過ちは繰り返してはならないと思います。
大本営発表の偏向メディアに踊らされないためには対立する国家双方の解釈のどこに違いが生じているのか、まずはそこを自分で調べてそれから人前で語るようにしたいものです。戦前と違い今はネットで海外の文献や報道も自由に閲覧できる時代ですからグローバルで俯瞰的な視野感を持つことができます。ネットも日本語サイトはかなり偏っているので、海外のwebサイトも見る必要があります。
前置きが長くなりましたが、尖閣問題とは何か。
●そもそも尖閣諸島はどこの領土だったか?
1895年1月に日本は領土化することを閣議決定。当時は日清戦争のさなかであった。
尖閣諸島は戦争によって奪われた清の領土の一つであるというのが中国の主張
日本は「10年前から調査したが無人島だった」という主張。しかし明の時代には尖閣諸島は琉球王国の領土であったことも認めている。当時の琉球王国は明の属国下にあった。
日本の立場は属国であったという証拠はないと主張している。
●戦後、尖閣の領土権はどこに?
一番の根拠としているのは1943年の「カイロ宣言」で「日本の、強欲と暴力により獲得された全領土剥奪」を連合国が声明し、1945年の「ポツダム宣言」で日本はこれを受諾したという事実。
これを受けて1946年2月マッカーサーは日本の行政区域を、北緯30度以北の本州、九州、四国、北海道と付近の島に限ると宣言し、それ以南の沖縄は日本に属さないとした。
1946年11月米国は国連に琉球の信託統治を求め、国連は1947年4月にこれを承認。つまり、国連憲章によれば、琉球は戦後敵国と分離された地域であり、日本の琉球占有権は国際法に基づき剥奪されている。
1951年サンフランシスコ平和条約第3条で、南西諸島(尖閣が含まれる)をアメリカの信託統治制度の下におくことが明記され、尖閣諸島もそれに含まれた。
当時、中国、台湾ともに国家として認められておらず、会議に参加していないことから、アメリカの信託統治には反対、当事国の含まない決議は無効としている。さらに中国はこの条約に尖閣諸島は含まれておらず、ポツダム宣言通りこの時点で尖閣は中国に返還されたと主張している。
つまり連合国の一つである中華民国が台湾島に移りその後国連も脱退していて、その時無かった中国が国連の常任理事国になっているという2つの中国問題が実はこの領土問題の最大の原因でしょう。これがなければポツダム宣言通り、琉球および尖閣を含む琉球諸島は信託統治もされずそのまま戦勝国・中華民国の領土、もしくは属国としての琉球王国として独立していたはずです。
●沖縄返還と尖閣問題
よく日本の報道に「尖閣近辺に地下資源の可能性があるというようになった1971年以降、中国は領土を主張しはじめた」とあります。しかしながら必ずしもそればかりではないような事実があります。それは同じ1971年は琉球が日本に返還された年であるということです。そしてこの沖縄返還協定が国際法上どうもいい加減で問題なのです。
国連憲章第78条では、信託統治は加盟国には適用しないと規定している。琉球および尖閣諸島が信託統治を受けたという事実は、それらが日本の領土ではないことを証明している。同第79条、第83条、第85条では、信託統治の管轄権や関係条約の変更には安保理もしくは総会の承認が必要であると規定している。つまり、国連憲章を無視した日米間の沖縄返還協定は国際法違反であり、無効である。
とまぁ、こんな主張なんだそうです。
つまり国連でアメリカに託すと決めたことを、アメリカがが国連を通さず、領土主権を主張する中国と台湾を無視して、日本と秘密裏に領土のやりとりをしたのはおかしいってことのようです。安保条約とお金を条件にしたため返還後も基地は置いたままだし、どうもアメリカは自国の都合の良いようにしたってことでそのとばっちりが日本に及んでいるわけです。
あとは米国が中国に配慮して、沖縄返還協定に尖閣諸島を明記していないということもあります。ということは尖閣は協定制定時にはすでに紛争地域であったんです。最終的に議事録内にて米国は日本の尖閣の施政権は認めますが、日本領土としての「主権」は認めませんでした。
問題の解決には大戦の連合国アメリカが国際的な責任において「沖縄返還協定により沖縄も尖閣も日本に返還した」とポツダム宣言に関係した中国、台湾、英国、ロシアに表明し了解を求め、今からでも国連で正式な承認をとる必要があるわけです。
●日中共同声明に隠された落とし穴
ところがもっと日本にとってやっかいなことには「サンフランシスコ条約も沖縄返還協定にも尖閣諸島は含まれてない」と中国は主張していることです。さらに決定的な失策は田中角栄元首相の日中国交正常化の際、『日中共同声明』で「ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する。」としまったことです。
『ポツダム宣言』第8項の規定とは、「カイロ宣言の条項は履行されるべき。又日本国の主権は本州、北海道、九州及び四国ならびに吾等(中、英、米)の決定する諸小島に限られなければならない。」というものです。これでは反論のしようもありません。また領土問題は2国間で解決することにもなっているので、こうなるともう米国も国連も口出しすることはできないわけです。これも1972年のことですからね。中国が尖閣や琉球の領土について主張しだすのも無理のないことなのです。
日本の反論としては「カイロ宣言は正式なものではない」、「ポツダム宣言には領土についての記載はない」としていますが、共同声明の解釈が双方違う時点で共同声明とは言えません。
調べれば調べるほど、日本にとって都合の悪い話が出てきます。竹島は国際司法裁判所に提訴という話はあっても、尖閣諸島についてはあまり政府が名前を出して言わないのは、戦後にこんな政治外交をやっていたからなんですね。明治の政治家は国際法に基づいて尖閣を領土化したというのは紛れのない事実。しかし今の日本はそればかり主張していて、中日共同声明40年を迎えた今年、国民や中国にどう説明するのでしょうか。
色々調べてみて私も色々勉強になりました。
●日本は今後どう対応すべきか
まぁしかしいつまでも歴史をほじくり返していては前には進めません。これはもう領土問題はそもそも存在しないと念仏のように唱え、突っぱねるしかないように思います。まともに裁判したら負けて損するだけですね。
先般、大阪市の橋下市長が「竹島は日韓の共同管理で」と発言し話題になっています。
それよりこれらの地域は硫黄島のように無人島のまま、軍や自衛隊の管理化に置くほうが現実的でしょう。例えば竹島は日米韓の共同軍事演習用の拠点とし、尖閣諸島も日米の軍で共同使用するというわけです。本来の仮想敵国がどこなのか忘れてはいけません。また最近メディアの袋叩きに遭っているオスプレイの演習に使うのにはもってこいの場所ではないでしょうか?中国だけでなく北朝鮮、ロシア、そして今後インドの核なども大きな脅威となってくるでしょうから、今ここで日韓が歴史にとらわれギクシャクしている余裕はないはずです。
竹島について韓国に譲歩するのは反論もあるかと思いますが、アメリカを軸とした日米韓の戦略的互恵関係による未来志向の関係を持ち、対馬海峡を安全化に置くことはアジアの安定にも大きく貢献するのは間違いありません。
まぁアメリカからの「年次改革要望書」とかで強要されないと、日本政府は動けないでしょうけどね・・・。
下記の公式ページも参考にしました。
日本外務省「尖閣諸島に関するQ&A」サイト
中国外務省「釣魚島問題」のサイト