まだちゃんと1周を纏め切れていない状況ですが,
フロントのトーをゼロ→アウトに振った際の変化は感じ取れたので,記憶が新鮮なうちに纏めておきます.
まず,事の発端は駆動系を一新した
5月まで遡ります.ここで2速とLSDが変更となったのですが,これによって舵が最も大きくなる時(以降,大舵の時)に曲がらなくなりました.
駆動系を一新する前とLSDのフィーリングは全く変わってしまったので,今使っている2速のギヤ比と相性が悪いのだと思い,6月に
プロ(井尻薫さん)にチェックを依頼したのですが,「LSDの効きは凄く良い」とのコメントで,どうやら問題はここではないようです.
「困ったなぁ・・・」と思っていたら,この時,同時に「大舵の時に曲がらない感じがある」というコメントも頂き,トー角の変更(もっとアウト側に振る)をアドバイス頂きました.その後,
ショップで色んな人に話を聞くと,「EF8の足回りでアウト側に振るのはオススメしない」という見解が示されましたが,「何も変えないのは進歩がない・・・」という事で,一旦イン側に振ってトーゼロを試してみる事になりました.
7月に入り,
街乗りで感触を確認した結果では,何となくフロントがナーバスになった印象(舵の初期で反応が過敏)で,失敗したかな?と思いつつ,コース上でようやくテストが出来たのは
8月に入ってから.
試してみると,街乗り時と一緒でコーナー進入時はレスポンス良く曲がるのですが,コーナーの中間で大舵になった時はやっぱり曲がりませんでした(感触的には変わらない).
その後,
井尻さんがサーキットアドバイザーで来られた時に,再びトーの話をしたのですが,
「トーゼロにして感触が変わらなかったのならば,やはりトーアウトを試してみるべき」とアドバイスを頂きました.
これで揺らぎ始めたところに,
こもりん.さんのCR-Zの走行データと比較してみたら,CR-Xよりも100kg重く,タイヤが13mmも細いのに,大舵の時の旋回性能で負けているという事実が発覚し,これでようやく踏ん切りがついて,
トーアウト化に踏み切りました.
・・・という事で,またも前振りが長くなりましたが(笑),トー角変更後(±00'→OUT 20')の結果です.
まず,全体的な感触としては曲がる事は曲がるのですが,もう少し厳密に言うと「立ち上がりで,同じ舵角であってもクルマの向きがより変わる」というフィーリングでした.
コーナー進入時(Entry)の部分はトーアウト化によって,ステアリングレスポンスが悪化するはずですが,さほど気になりませんでした.これは元々CR-Xがショートホイールベースであるため,ブレーキング時はピーキーな特性である事に加え,フロントのバネレートを上げてステアリングレスポンスを高めるという
ジムカーナの手法を(結果的に)取り入れていた事もあって相殺されたためではないかと思われます.
そして,肝心の大舵の時(Middle)ですが,Middleの更に半分,ブレーキを残している領域(上図の点線部分)は特に変わっている印象は受けませんでした.一方,Middleの残り半分,アクセルを踏み始める領域(上図の実線部分)は,以前よりも確実に曲がるようになりました.
乗ってる時の感覚としては,「この位置からアクセルを開けていったら,外に膨らみつつステアリングが重くなるだろうなぁ~」というところで,「アレッ? 軽いままだぞ・・・」という感じです.まぁ,この軽いままになってる事に気づくのが遅れた結果,こういう事(↓)をやらかす羽目になったりもしましたが・・・.
(ちなみに,↑の中で「あ,ヤッベ」と言っているのはスピンした事に対してではなく,電源が落ちた事に対してです)
話を戻して,逆に言うと,それくらいステアリングの舵角は変わらないのにクルマの向きは変わるようになったので,コーナー出口(Exit)からの車速の伸びは良くなっています.トー角の変更前(トーゼロ時)とのタイム差を見てみると(↓),
ホームストレートエンド(1つ目の赤丸),2コーナー後の直線(2つ目の赤丸),バックストレッチ(3つ目の赤丸)と,各セクションで0.05秒前後のゲインが得られている事が確認出来ます.
ちなみに上のデータを見ると,最終コーナーの立ち上がり~ホームストレートの区間(右端っこ)で0.05秒稼げていない事にも気づくと思われますが,これは舵角とクルマの向きを合わせ切れなかったためです.
最終複合のこの辺り(↓)で,
以前よりもクルマの向きが変わるようになったたため,その分,手前のコーナーでのポジションを修正して,もっと外側からアプローチしないといけなかったのですが,上手く合わせ切れず,インに寄り過ぎてアクセルを戻す羽目になってしまいました・・・.
トー角変更前後でラインを比較してみると,トーゼロ(青)に対してトーアウト(赤)の方が,途中からイン側に切れ込んでいる様子が分かると思います(↓).
また,これと似たような現象は,実は1~2コーナーの中間部分(この辺り↓)でも起きています.
ここは1コーナーを抜けた後,ステアリングを戻して操舵抵抗を減らしつつ,車速を伸ばしていきたい部分なのですが,途中から曲がらなくなって舵角を再び増えてしまいました.その結果,操舵抵抗も再び増えて失速しているような感触でした.
ロガーデータで確認してみると(↓),
トーゼロ時(青)に比べて,トーアウト時(緑)の方が早くアクセルを全開に出来ているのに(左側の赤丸),途中(右側の赤丸)で波形が入れ替わっており,やはり失速していました.これも先述の最終コーナーと一緒で,曲がり過ぎるが故にイン側へ寄り過ぎた結果と思われます.
いずれもドライバー側のミス(合わせ切れていない)と言えばそうなのですが,ステアリングが重たくなる方向ならばともかく,ステアリングが軽くなる方向の即時アジャストはホント難しいです・・・.
以上,トーアウトの効果でした.
トーアウト化でドライビングが難しくなったのは,走り込んで身体に感触を覚えさせれば良いだけなので大した問題ではないとして,全体的に見れば,
トーアウト化は成功!
と言えると思います.実際タイムを0.05秒削れた訳ですし,ドライバーが慣れてくれば,もうあと0.1秒くらいは削れる気がします.
こういう話をすると,「最初から素直にプロのアドバイスに従っていれば,こんな遠回りをしなかったのに~」と意地悪な事を言う方もいらしゃいますが(苦笑),シーズン中ならばともかく,今は絶対的なタイムを狙う時期でもないので,今回の過程で「トーをイン側に振るとどうなるか? アウト側に振るとどうなるか?」を身体で感じ取って学んだ事の方が,今後に繋がって有益だったと思っています.
まぁ,そんな話はともかく,複数回に渡ってアドバイス送って頂いた井尻さん,本当に有難う御座いました!