今回は実家のゴルフⅦの車検の代車としてやってきた、VWポロのブルーGTについて取り上げる。
この1週間程度あった訳だが、乗り出すとこれが結構ファンなものであり、気付けば450km程度走行していた。
ちなみに、今回の個体は2016年式で走行距離が2万kmであった。
■概要
2009年に登場したVWポロの5代目モデル(6R型)になる。
このポロというクルマ、フォルクスワーゲンのラインナップではuP!の兄貴分となり、ゴルフの弟分という立場にある。
日本国内では2018年3月まで販売されていた訳だが、まだ登場時にはMQBプラットフォームは登場していない為、現車はPQ25プラットフォームを採用している。
基本的には1200ccのエンジンを搭載しているポロだが、その中でも1400ccのエンジンを搭載した上級モデルが今回のブルーGTとなる。
意外なコトは、日本向けにデリバリーされたポロの通常グレードは南アフリカで生産、このブルーGTとGTIはスペインで生産されており、純粋なドイツ車ではないということだ。
今回は最強版として1800ccのエンジンを搭載したGTIに関しての詳細は省かせて頂き、早速ブルーGTについてレポートを行うとする。
■スタイル、サイズ
全長×全幅×全高=3995×1685×1445(mm)
なによりこのサイズ、全長は4mを切る為にカーフェリーの料金は安価に済み、全幅は取り回しが容易い5ナンバーサイズ、全高は余裕でタワーパーキングに収まるサイズというコトで、偶然ながら日本国内をオールマイティに生活するには極めて実用的なサイズとも言える。
スタイルは無味無臭というか、極めて質実剛健であり、GTというグレード名を掲げている割にはかなり大人しく見えるものである。
しかしながら、前後共に塊感の高いフォルムである為、ドコかしらにしっかりした印象を与える。
確かに極めて質実剛健でマジメでオーソドックスなデザインではあるのだが、一瞬でポロだと訴えてくる程の飛び抜けた主張が無く、個性には欠けてしまう。
コレと言って特徴は無いが、基本にとにかく忠実。
最もそれこそがポロが指し示すアイディンティティなのかもしれない。
■インテリア、装備
さて、そんなポロだが前述の印象は室内についても同様。
インパネも特にウネウネとした曲線を描くものでもなく、非常にシンプルながら機能的。
外観同様のやや堅苦しい印象を与えるものだ。
そして、前席を見ると、レザレットと呼ばれる合成皮革に、アルカンタラのコンビシートとなっている。
座ってみると、しっかりしたものではあるのだが、ゴルフⅦと比較すると当然かもしれないが、シートのボリュームはやや落ちたものとなり、ゴルフで感じたゆったりした印象ではなくなってしまう。
ゴルフがずっと座っていても苦にならないシートに対し、このシートは3時間も連続で座っているとやや疲れてしまうシートではある。
しかし、国産の同クラスと比較するとポロの方が抜群に良い。
運転席に座り、まず目に飛び込んでくるステアリングにはパドルシフトや各種オーディオのコントロール、クルーズコントロールの操作が出来るスイッチが装備されている。
握りの太さは適度で、肌触りも良いものである。
更にステアリングスポークの下の部分には、ブルーGT専用のエンブレムがある。
メーターは視認性も良く、視認性も十分なものとなっている。
スピードとタコのメーター間には、サブディスプレイが設けられているのだが、サブディスプレイに表示されている文字はゴルフⅦの日本語表記とは異なり、全て英語であった。
やはり直感的に分かりやすいのは日本語表記のものだろう。
さて、運転席から視線を右にやると、目に見えるドアトリム。
グレーの表皮にはソフトパッド入りのレザレットがおごられ、その周囲のトリムもソフトパッドで覆われている。
そしてアームレストの頂点にはドアミラーコントロールスイッチが備えられている。
ミラー調整時にはL又はRにダイヤルを回し、このダイヤルを十字キーのように倒す訳だが、どうもコレが直感的に操作のしにくいものであった。
今度はインパネを右側から見て行こうと思う。
まず、一番右にあるのはヘッドライトスイッチ。
しかしながら、300万円近くするクルマでオートライトが装備されていないのには幾らドイツで比較的廉価な車種とは言えど少々残念である。
しかも日本車のようなコンビネーションスイッチとは異なり、右手をわざわざ伸ばして操作しないといけないこのレバータイプを私は未だに好きになれないし、合理的だとも思えない。
次に、インパネ中央から上段にエアコンレジスター、各種操作スイッチが並ぶ。
しかし、コイツは結構なクセモノだ。理由は後述させて頂く。
この操作スイッチの下には、各種情報を表示するコンポジションメディアがある。
画面サイズはゴルフⅦと較べると一回り小さいのだが、情報表示される内容はほぼ同等である。
今回の個体にはナビゲーションシステムが非装備だった為、あくまでこのモニターは車両情報表示にのみ活用される。
その下にはエアコンコントロールパネルが備えられる。
エアコンに関しては、当日の気温が36度と高いコトも要因としてあるのかもしれないが、効きに関しては今一つだと思ったのが正直なところだ。
ダイヤル式で直感的に操作出来る辺りは使用性に優れている。
そして最下段にはカップホルダーと、USBやAUXと言った外部入力端子がある。
そのまま視線を後方側へ移すと角度調整式のアームレストがある。
コイツはゴルフの無段階調整式とは異なりラチェット式の為、操作時にやや大きめのガチャ音が目立ち高級感には欠けるが、特段使用性に難が無い為、妥当な性能と言える。
このアームレストの下部にハンドブレーキレバーが備えられる。
アームレストが上部に位置するが、使用性に特段の不満は無かった。
一気に場所は飛ぶが、サンバイザーは照明付きの物で証明は一般的な電球。
2年オチながらも球切れしている辺り、日本車じゃ中々遭遇しない事象である。
助手席グローブボックスを開けると、エアバッグのカットオフスイッチにタイヤ空気圧セットボタンがある。
ゴルフⅦもだが、グローブボックス内部のダイヤルを回すコトにより、クールボックスとして活用が可能である。
最も、未だに試したコトは無い為、効果は未知数だが。
さて、このグローブボックス。なんと下部の蓋を開けてからオーディオのCD交換を行わなければならないという非常に使い勝手の悪い物であった。
毎回CDを入れ替える為に、グローブボックス内に置いた車検証を取り出さなければならず、どうにかならないものかと思った。
思うのだが、フォルクスワーゲンはことAV機器の使用性についてはどうも今一歩の所が多々見受けられる。
このアメニティの部分で多数のユーザーが躊躇したのではなかろうか。
そうなるとフォルクスワーゲンはたったこの装備の為に沢山のユーザーを食いっぱぐれているのかもしれない。
このグローブボックスの蓋の裏にはサングラスポケットが装備されているものの、傷つき防止の措置もされておらず気持ち程度の物だとも言える。
ちなみにこのポロ、バックカメラは装備されていたが、このように後方視界は昨今のクルマよりかなり視認性が良い為、カメラ等全然見ずに目視でバックが楽々と行えた。
次に後部座席の話題になるが、ドアトリムは一見フロントドアと同様に見せかけて、グレーの部分はレザレットでは無く、只の樹脂であった。
前後席の質感をこのように割り切っている辺り、合理的なのだろうが、少々寂しいものがあった。
リアシートに関しては、お借りした数日間で数人が乗った感想はシートバックが立ち過ぎているということだった。
コレに付け加えると、シートバックは確かにやや立ち気味だがシートクッション前端が高すぎる為、姿勢に無理が生じてやや疲れやすいものであった。
足元の広さは申し分ないが、これらのシートの造りにより折角の居住性の良さをスポイルしている。
最も、日本車のこのクラスのものに比べるとまだマジな方ではある。
特に感心したのはリア中央席のベルトアンカーがシートだけで完成しているということだ。
多くの国産車はルーフ側にアンカーを設ける為、身長によっては首にベルトが掛かる危険な構造の車種も少なくとも存在する。
ポロのようにシート側にアンカーを設ければシート剛性が重要になる為、大幅にコストが掛かる。
地味な1つかもしれないが、乗員の安全を考慮すると、マジメな造りを感じる箇所でもある。
Rr側のルームランプはダイヤル式になっており、プッシュボタン式では無い所が独特である。
そしてセンターコンソール後部にリア側のカップホルダーがある。
単純に輪っかを一つ降ろすだけという合理的なものではあるが、飲料缶の底面がフロアカーペットに当たる上、飲み物がこぼれた場合はもれなくカーペットがシミになってしまう。
このようなアメニティ部分の造りは日本車に軍配があると言えよう。
ここも注目できるポイントだが、サイドメンバー(特に下部)はスポット溶接痕を隠す為にサイドシルカバーを設ける国産車と違い、剛性の高い鋼板を一体成型プレスで大きく使用している為、見栄えもとても良い、実際に叩いてみても鉄板の硬さが分かる位の違いがある。
次にバックドアだが、エンブレム部分が取っ手になっているのは、フォルクスワーゲンお得意の手法だ。
見栄えも良いし、特別感もありコレは中々に良い。
ラゲージはこのクラスとしては広大でかなりの荷物が搭載出来る。
大人2人の旅行の荷物等も楽々に搭載可能なキャパシティを持つ。
バックドアトリムは両手で閉めれるように長い窪みが設けられている。
外観にポイントを移す。
ヘッドライトは当然の如くバイキセノンヘッドランプなのだが、スモールライトにLED球が使用されている。
光り方もキレイでスポーティなキャラに一役かっている。
そしてヘッドライトウォッシャーも装備されているが、正直寒冷地で無い限りでは不必要かと思われる。
コレには驚いたのだが、給油口にキャップの置き位置が無いのは昨今のクルマとして考慮するとさすがに使い勝手が悪いとしか言いようがない。
それとリアのアンテナは固定式で折り畳みが出来ない。これも日本での使い勝手ではイマイチ良いとは言えない。
そしてアンテナは全幅中央部分なので、背の低い女性には外しにくいと思う。
■動力性能
VWポロブルーGTに搭載されるエンジンは以下の通りである。
CZE…直列4気筒1400ccDOHCターボ、150馬力、25.5kg-m。
1200kgの車重と相まってそのパワーたるや一昔前の2.5リッター級の性能がある。
低速域から高速域までストレス無く回って行く辺り、とても1400ccとは思えないのだ。
但し、スロットルのレスポンスが悪く、踏み込みに対しワンテンポ遅れて立ち上がるので、もたつきを感じられた。
このエンジンでのトピックはアクティブシリンダーマネージメント(ACT)が装備されている。
コイツは走行状況によって2気筒to4気筒が切り替わるのだが、切り替わりは殆ど感じられない。
但し、2気筒に入る時間はごく僅かで、その恩恵を受けるコトが少なかったのは残念である。
コレに組み合わされるミッションが7速のDCT。
1200ccの6速と比較し、ハイギヤードになっているので、日本の街中で7速に入るコトはほぼ無い。
自動車専用道路で70キロを超えて初めて7速に入るレベルだ。
後は制御にやや難があり、出足から2速までは変速タイムラグあり、そしてとにかく出足でのギクシャク感が大きいので、ドライバビリティに欠けるコトであった。
足回りはフロントがストラット、リアがトレーリングアーム。
コレに17インチのアルミホイールが装備され、ダンロップのSPスポーツマックスが装着される。
足回りは適度に固められているが、スポーツとはまでは行かずGTという名にふさわしい適度なしなやかさを持っている。
しかしながら、この17インチホイールは明らかにミスマッチだ。
バネ下がとても重くなり、低速域ではとにかくピッチを拾い上げる。
さらにタイヤの扁平がそれを助長するので余計乗り心地は悪くなる。
しかしながら215幅もあるのに路面の轍に足を取られても車体の進行方向は素直に狙ったラインを走っていたのは、サスセッティングの妙と言える。
尚、450km程度走った上での走行燃費は下道でリッター15キロ程度、高速で19キロ。
申し分ないものと言える。
コレでファンな走りも出来るので中々のものである。
■総括
こうして2009年より長らく販売されていたポロだが、2018年にとうとう新型にモデルチェンジされたのは前述の通りだ。
この現行、AW型より歴代ポロ初の3ナンバーボディとなった。
デビュー前は果たしてワイド化されてポロのユーザーは離れていくのではないだろうかと思っていたのだが、先日ショールームで実車を目にして思ったのは、今回の先代に比べ居住空間に適度な余裕が生まれ、我が家のようにゴルフではややワイドに感じ、かと言って今回のポロではやや狭く感じた方達には実に絶妙なパッケージングだと思った。
新型は新型で人気が出るだろうという確信に変わった訳だが、先代は先代でマジメさが際立っており、コレはコレでいいなと思わせるものがある。
コンパクトで且つGTI程の本気度は要らないが適度なパワーが欲しい方にはコイツは楽しいに違いない。
但し、より味を出すなら16インチにサイズダウンして楽しむことをオススメしたくなる1台である。
このようにポロを返却し、楽しい代車生活は終了だと思ったのだが。