待ちに待ったヤマシタホビーの新製品、駆逐艦竹をゲットしました。
何シテルでも書きましたが、プラモデルの新製品を予約して買うという経験は、実は生まれて初めて。竹は少し前に
セミスクラッチで作ったことがあるので、ヤマシタホビーがどのようにキット化するのか、大変楽しみにしていました。
では早速キットレビューをしてみたいと思います。
パッケージはこちら。
竹といえばやはり第7次オルモック輸送における夜戦での活躍。
なのでパケ絵もその時の姿を描いています。(キットは新造時。)
前後の主砲や機銃がほとんど仰角をかけていないことから、敵艦との距離が近かったことを示しているあたり、史実を意識しており好感が持てます。
魚雷は4番連管から発射されているように見受けられますが、米駆逐艦クーパーを撃沈した魚雷は2番及び3番から発射されたもので、4番発射時には竹も被弾していたはずです。このあたりはパケ絵としての演出でしょうか。
次は組立説明書。
縦21cm×横18cmで3つ折り(6ページ)となっており、そのうち3ページが組立の説明で、1ページは塗装図とキット内容が書かれています。
組立説明はパーツの向きなども分かりやすく描かれており、パーツ取り付けの際の注意点なども適宜記載されているので、初心者でも迷うことなく組み立てることができそうです。
そしていよいよランナー。
まずは船体側面など。
最近流行りの左右張り合わせ式を採用することで舷側のモールドを精緻に再現しています。
舷側には舷窓(庇を含む)や外板の継ぎ目がモールドされており、艦尾付近にはプロペラガードも付いています。松型のアンカー格納位置はアンカーレセス式(橘型はベルマウス)なので、窪みが作られています。
前マストのヤード下には、信号ハリヤードを吊り下げる滑車までモールドされています。
H型の頭を持つ烹炊室煙突は継ぎ目までモールドされているという凝りようです。
ただ難点もいくつか。
まずは船体外板の継ぎ目表現はいずれも凸線で表現されていますが、「丁型線図説明図」によれば、4枚の板が上から凸凹凸凹の順に溶接(または鋲接)されています。せっかくならそのようにモールドされているとさらにリアルになったと思われます。
舷窓については、これを新造時の竹として見た場合、公試運転時の写真で確認できる位置と一部異なっています。
具体的には、船首楼甲板直下の4つのうち、前2つはより後方へ移す必要があります。また艦尾付近のものについても等間隔で6つ必要ですが、3つしか開いていません。ただ舷窓はパテ埋めやピンバイスorエッチングで簡単に修正できるので、さほど問題とならないでしょうし、松型各艦で舷窓の位置は異なるので製作する艦ごとに位置を修正していけばよいと思われます。
前マストはプラの性質上、若干太めなので、伸ばしランナーや金属線などに置き換えると精密感が大幅に上がると思います。また三本脚を相互につなぐ横桁は三角板として表現されているので、これも修正してあげるとよいでしょう。
次に甲板です。
船首楼甲板と上甲板を一体パーツとしてあり、甲板上には滑り止め鋲、リノリウム押さえ、昇降口、弾薬箱、単装機銃座、魚雷運搬軌条、爆雷投下軌条などが繊細なモールドで再現されており、特に第二煙突前に配置された3つのオスタップまで表現されているのには驚きました。これらは昔のWLキットを知る身からすると感動的ですらあります。
それぞれの配置場所を厳密に計測してはいませんが、ぱっと見たところ公式図面を正確にトレースしてあるように見受けられました。
単装機銃座が8つあることから、このキットは新造時であることが分かります。
滑り止め鋲は一つの長さが0.4mmくらいなのでオーバースケールではありますが、開度を測ったところきちんと100°となっていました。
魚雷運搬軌条は平面系が艦首に向かって「人」のような形になっていますが、私が竹を作った際もここでは悩みました。というのも公式図面では「人」型になっているものの、竹の甲板敷物図では「Y」型になっているのです。私は甲板敷物図を信用しましたが、竹以外を制作する際も含めてここをどうするかは製作者の判断に委ねられる部分だと思います。
また鉄甲板とリノリウム甲板の境目も同敷物図とは異なる位置とされています。私が調べた限りだと同敷物図以外に竹の甲板境目位置が分かる資料は見当たりませんでしたが、ヤマシタホビーさんは何らかの根拠を見つけたのかもしれません。
艦底、艦橋等です。
艦底は橘型にも対応できるよう、艦尾付近のみ別パーツとされています。
また艦橋と後部構造物は左右及び天井のパーツに分けられているため、左右接着時に合わせ目が生じます。
艦橋内部には観測機器や海図台もモールドされており、側面には水密扉やラッタルなども表現されています。機銃台には弾薬箱も配置されていますし、煙突は蒸気捨管が一体成型され、別パーツ化された煙突頂部は雨除け格子のモールドもあります。後部マスト中段には速力信号灯も表現されていました。前後主砲の操作フラットは折り畳み部の切れ込みもあります。
↓の左は艦橋、右は主砲、吸気筒などのランナーです。
防空指揮所は私が作った時のように前後で段差ができています。
前後主砲のシールド前面向かって右側はわずかな凸が作られています。これは砲の旋回速度を上げるための装置の設置場所だそうで、ここまでこだわってキット化されたことは大変嬉しく感じました。主砲シールドについてはその他のディテールもかなり厳密に作られており、シールドそのものの厚み以外は修正点が見つからないほどクオリティが高いです。なお主砲砲身は仰角を上げて接着することも出来る作りになっています。
また探照灯管制機も極めて精緻なモールドとなっていますし、魚雷頭部積み込みダビットや舷灯までパーツ化されていて驚きました。舷灯は2セットあるので、1セットはストックできます。これは嬉しいですね。
電探は13号と22号がパーツ化されていますが、いずれも使用しないのでストックできます。
次は武装ランナーです。
同じものが2枚ずつ入っており、それぞれ赤矢印で示したものは余剰となります。
単装機銃は新造時なら8基しか使わないので、ランナー1枚分まるごと余剰となりますが、オルモック輸送時で製作する場合は13号電探1基と単装機銃4基を追加することになります。
ただ機銃に関しては防弾板がないことも含めてナノドレッドほどのディテール表現ではないので、気になる人はアフターパーツへ交換することとなるでしょう。
最後のランナーは短艇、魚雷、爆雷等のパーツです。
魚雷発射管はシールドが別パーツとなっており、スライド金型により前後左右上面とも繊細なモールドで作られています。発射管本体及びシールドは主砲シールド同様、修正点が見当たりません。
錨やリールも極小サイズながら素晴らしいモールドです。
爆雷は投射機・装填台ともK砲6セット及びY砲2セットが入っているので、梅、桃、桑、杉(いずれもマリアナ後に4基装備)などを作る際にはK砲パーツが活用できます。
このランナーは先ほどの武装パーツとともに大戦後期の駆逐艦などに使用するものなので、セットでディテールアップパーツシリーズとして別売されるかもしれませんね。
以上がランナーチェックですが、総じてクオリティが非常に高く感じられ、機銃とマストを別パーツなどに交換し、舷窓の位置を修正してあげれば、手軽に竹の雄姿を再現することができる素晴らしいキットだと思います。
これまで1/700松型駆逐艦のキットはタミヤがベストとされていましたが、世代交代が起こったと言っても差し支えないでしょう。
ヤマシタホビーさんは私の期待を遥かに超える素晴らしいキットを作られました。松型駆逐艦ファンとしては大変うれしいです。
本来ならここで仮組をするべきですが、現在は龍田改二製作に没頭しているので、今回はここまで。
ちなみにこのキットは第7次オルモック輸送時の「桑」として建造予定です。
いつになるか分かりませんが(爆)