2020年1月から駆逐艦竹の製作を始め、その後、駆逐艦桑、第9号輸送艦、第159号輸送艦、夜間戦闘機月光、そして第140号輸送艦をいずれもジオラマとして完成させました。
その間、約3年8ヶ月。
これがその6作品です。
テーマとして第7次多号作戦を採用したのは、手始めは小型艦がよいだろうと考えたこと、久方ぶりのウォーターラインシリーズ製作を再開するにあたり、小中学生の頃の作品と今の自分を単純比較したいという思いがあったこと、93式酸素魚雷により最後に敵艦を撃沈した作戦であることでした。
製作の過程では図面や写真、各種文献などを出来る限り精査し、それでも不明な点は極力合理的に推測したつもりです。
またジオラマでは「戦争の悲惨さ」や「生きるための戦い」をテーマとし、戦記に書かれたことなどを参考に、艦の傾斜角や輸送する物資の種類などを再現しました。
ここで改めて6作品を振り返ってみたいと思います。
まず駆逐艦竹。
ハセガワの旧キット・松を使用。
右回頭中に魚雷を発射した瞬間です。
学研本と実艦写真を軸にして徹底考証を行い、自身初のエッチングパーツも使いました。水柱はLEDが点滅します。
次に駆逐艦桑。
ヤマシタホビーの竹を使用。
竹製作の実績を活用しつつ、エンガノ岬沖海戦の実艦写真も参考にして考証精度を高めました。また揺らめくLEDで火災を、脱脂綿で黒煙を作り、艦上には死亡した水兵も配置することで、沈没直前の断末魔を表現しました。
プロモデラーのチョートクさんやオオゴシさんにテーマ性を激賞されたのは良い思い出です。
第9号輸送艦です。
タミヤのキットを使用。
戦争という破壊行為の中で、輸送という生産的な行為をテーマにした作品です。
戦闘でなく輸送を主目的とする補助艦は初めて作りましたが、知らない装備品を調べながら作るのは発見なども多くて楽しかったです。
この辺りからTwitterを使い始め、フォロワーさんから様々な資料やご意見を頂けるようになり、更に深めることが出来ました。
第159号輸送艦。
タミヤのキットを使用。
僅か7分で撃沈された桑の乗組員をカッターで救助したというエピソードを再現しました。主役は輸送艦ではなくカッターです。
第9号同様に地味な作品ですが、あまり研究されていない二等輸送艦に深く切り込んだという点で価値のある作品だと思っています。
なお後マストは前に直立した主柱、その後ろに2本の支柱というのが正しいと思われます。
夜間戦闘機月光のビネット。
タカラトミーの「ガチャプラモ」を使用。駆逐艦クーパーはスクラッチです。
休憩がてら短期間で製作しました。
月光は第7次多号作戦時に制空権を取って米駆逐艦を空襲し、その成果もあって竹が魚雷を当てることが出来たようです。キットは1/300スケールで、月光特有の斜め銃などを再現しました。
1/3000米駆逐艦製作はその設計思想を日本艦と比較することが出来て楽しかったです。
そして最後に140号輸送艦。
二等輸送艦と言えば揚陸場面ですが、あえて戦車等ではなく海軍と陸軍の士官が出会う場面とし、輸送する側と受け取る側の心情の表現を試みています。
僅か5隻の小さな小さな艦隊ですが、輸送という戦略目的を完遂しつつ、敵艦撃沈という戦術的勝利も収めるという、この時期の日本軍としては珍しい大勝利と言えるでしょう。
しかし兵器は勇ましいとかカッコいいというだけでなく、人殺しの道具でもあります。
今回の製作テーマ「戦争の悲惨さ」「生きるための戦い」は今後も続けていきたいと考えます。
そしてこのブログを次の言葉で締めくくりたいと思います。
もし平和が戦争の経験の後にしか来ないならば、平和は常にあまりに来かたが遅すぎる。
平和は常に死者の上に築かれるのか。
フランス哲学者アラン(エミール=オーギュスト・シャルティエ)
Posted at 2023/10/11 21:45:16 | |
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